三話
全身を黒い服で統一して、深緑のローブ、それから三角帽を被れば、あっという間に魔女らしい魔女の出来上がりだ。
ホウキを脇に抱えて外に出る。
手をぽん、と叩くと、道路の脇にある風見鶏の掲げた木板に書かれた文句が変わる。『魔女の家。本日休業』。
「じゃあね」
「ええ、それ、ほんとに行かなきゃダメなの?」
ホウキにまたがり、浮かびかけた私に赤ずきんが不満そうに言う。その手はしっかりとローブの端をつかんでいる。
「まあ、たぶん。来いって言われたし」
行った場合の苦労と、行かなかった場合のリスクを考えると行った方が得だろう。
「じゃあ、次にどこか行く時はいっしょに連れて行って」
「どうして」
別に街をでるくらい、わけないだろう。日々、野に森に駆け回っているんだから。
「だって、師匠といっしょにいたいから」
おお、なんてかわいらしい理由。
容姿とあいまってまるで天使のようだ。
「だって、そっちの方が面白いことがいっぱい起きるもん」
というわけでもなかったようだ。
時々、彼の言い回しはまぎらわしい。
「わかった」
特に反対する理由もない。
次があるかは分からないのだし。
返事をした途端に、赤ずきんの顔に幸せそうな笑顔に戻る。
本当に。
無意識に男心を弄ぶ初心な乙女のようだ。小悪魔め。
名残惜しげに手を離すと、
「約束だよ」
と華を咲かせた。
ホウキに力をくわえ、屋根の高さまで浮かび上がる。
手を振る赤ずきんの頭上で大きく旋回した後、晴れ渡って雲一つない空へと向かって高度と速度を上げた。
「まったくのホウキ日和だな…」
憂鬱のため息がこぼれ落ちた。




