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二十八話

 結局、演奏会とやらの直前になっても赤ずきんは帰ってこなかった。

 魔女の証の三角帽をかぶり、ローブを羽織り、迎えに来てくれたアーノルドと共に城の大広間に向かう。三日ぐらいぶりか。なんだか久しぶりに会ったような気がする。


「赤ずきん殿がいない? そういえば、先ほど、街で一瞬見かけましたよ。女の子と一緒だったので声はかけなかったのですが」


 そして、私をどこか探るように、揶揄うように言う。


「貴女は、まるで過保護な母親のようだ」


 穏やかな馬の目から一転、野を駆け抜けようとする猛々しさが浮かぶ。しかし、すぐにそれは笑顔によって隠された。


「それはそれは。あんなおおきな子供のいる歳ではないんだけど」

「もちろん、態度のことですよ。ソルシエールさんはお若いし、おきれいです」


 字面だけだと、まるで口説き文句だ。

 よくもまあ、こんな鶏ガラにそんなことが言えるものだ。


「それはどうも」


 アーノルドもそれに気がついているのか、


「あ、すみません」


 そう言って頬を赤らめた。


「ただ、俺から見てソルシエールさんが赤ずきん殿に対する接し方が、そんな風に映ったもので」

「なら、そうなのかもしれない」

「否定しないのですね」

「肯定もしていない。アーノルドから見て、そうなのならば、それがアーノルドにとっての私たちの姿なんでしょう」

「はは、手厳しいなあ。さすが魔女さまだ」

「私ほど優しい魔女はいないと自負しているんだけど、残念」


 アーノルドに余裕ぶって返事するが、胸の中は依然としてもやもやしたままだ。

 何かに巻き込まれていやしないだろうか。いや、なにかにわざわざ巻き込まれにいくようなことはしていないだろうか。

 例の指輪は肌身離さず付けているようだから、問題は起きていないのだろうが、それでも心配だ。なにせ赤ずきんを国から連れて来たのは私なのだ。

 なにかあったら彼女の祖母に絞め殺されるのも私だ。寒気がする。

 無断で灰被り嬢宅に一泊したとき、赤ずきんが怒っていたのを思い出した。

 扉前で待機するガーディアンが、扉を開いて中に通してくれた。

 吹き抜けの螺旋階段を降りていく。

 すでに招待客たちが集まっているのか、着飾った人たちが大勢いる。そしてエーリッヒの言葉通りに立食式の食事が用意されているようだった。

 アーノルドが手を差し伸べてくれるが、あいにく動きにくいドレスを着てはいない。やろうと思えば横走りもできる。しないけど。慎んで断らせていただいた。

 大半の人間は私たちに興味を示していないが、中には私のローブを訝しげに見つめているものもいる。

 そんな中、部屋の隅っこにいる若い娘たちの塊が私を見た後、こそこそと何かを話しているのに気がついた。

 どうやらこの手の人間はどこにでもいるようだ。

 憂鬱なことである。


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