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十五話

 ドアの外から聞こえるメイドの声。

 ひそひそと潜めるものだったそれが一瞬、大きくなる。

 ついで、駆け足の音が聞こえる。

 軽快なものがひとつと、それと比べるとどこか重いものがひとつ。

 赤ずきんか。後者は赤ずきんを追いかけているだれかのものだろう。城の中で走り回るのはよした方がいい、というのを忘れていた。

 案の定、足音は近づいてくる。ところが、途中で見失ったのか、諦めたのか、その音の方向が逸れる。そして、そのまま遠のいていく。


「どうだった?街は」


 ドアの開閉音に、ボンヤリと天井の異様なほど細く組み込まれた模様を眺めながら聞いた。


「たのしかった!」


 がさごそと音がした後、ぼすん、と赤ずきんがベッドに飛び込んでくる。


「広い街なんだね! お城のごはんもおいしいし。俺、ここにいつまでも住めるかも」

「一人でさみしくなかった?」

「いや、俺こどもじゃないからね。アーノルドさんもいたし」

「仲良くなったの」


 意外だ。


「ううん、べつに」


 赤ずきんは体を起こすと、にこにこと機嫌がよさそうに私を見た。


「色々みたんだけどね、こんなのしかなかった」


 ごめんね、と赤ずきんが謝り、私にソレを渡す。


「いいよ、楽しめたなら。…これは?」

「ネズミが嫌う音を出す機械だって。最近の流行りなんだってさ」


 小さな手のひら大のオルゴールだ。

 取っ手をまわすとなんだか不快なような、腹立たしいような音がする。


「へえ。おもしろいモノが流行っているんだね」

「そうそう、あとケーキをもらったよ」

「ケーキ?」

「うん、女の子から」

「ナンパ?」

「ちがうよう」


 赤ずきんが街での出来事を語る。

 窓際のテーブルに移動すると、赤ずきんがケーキを見せてくれた。


「へえ、ずいぶん良いものをもらったんだ」


 そんなお礼にほいほいあげるようなものだろうか。

 有名店の印が包み紙の表面に刻印されている。


「うん、いっしょに食べよう」


 赤ずきんが折りたたみナイフを取り出すと、包み紙をあけ、器用に切り分けて渡してくれた。


「ししょー、はい、これ」

「ん、ありがとう」


 シュトーレンを口に含む。

 甘い。

 なにか飲み物が欲しいが声を掛けるのも、用意をするのも面倒だった。

 なんでか、とてつもなく、ねむい。


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