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3月31日 夜

 夜が更けた。

 テントの中は、僕と広美の二人だけである。

「寝返り打って蹴飛ばしちゃったらごめんね」

 昼間と違い、広美の冗談も優しかった。

 狭いテントに二人きりで寝ているので、寝袋同士がくっ付いた状態だ。

 明かりがあれば、目の前に異性の顔が見えている状態でもある。

 しかし、風よけのためにテントの入り口を完全に塞いでいるので輪郭すら確認できない。

 生き物として知覚できるのは、息遣いと微かな香りだけだ。

 広美から女性の匂いがしていることに、初めて気が付いた。


 会話がない。

 ユウ君が泊まりにきた時は、電気を消しながら眠りに就くまで色んなことを話したものだ。

 しかし、相手が広美ではそうもいかなかった。

 広美も得意の毒舌がなければ、これといった話題がないといった感じだ。

 この日は全員五時起きなので、眠りが早い人ならそのまま夜明けまで眠り続けられるだろう。

 でも、僕はまったく眠れそうになかった。

 生唾を飲む音も聞かれてしまうので、規則正しい呼吸を心掛けるだけで精一杯だ。


「おやすみ」

「あっ、おやすみ」


 無言になってから何十分も経ったと思っていたが、三分も経過していなかったのだろうか?

 それすらも 分からなかったので、返事に戸惑ってしまった。

 異性として意識したことがない、といったら嘘になる。

 いつもより異性を感じているのも確かだ。

 返事をした後、広美は僕に背中を向けたようだ。

 真っ暗なので見えてはいないが、聴覚が敏感になっているので、それくらいは分かる。

 僕もいつもは横を向いて眠るのだが、この時は顔をどちらを向けるべきか悩んでしまった。

 僕が背中を向けられる分には構わない。

 しかし、僕が広美に背中を向けるのは冷たく感じられる。

 かといって、広美の方を向けば気持ち悪がられるだろう。

 結局は仰向けのままでいるしかなかった。

 広美の深い寝息を耳にしながら、いつまでもそんなくだらないことを考えるのだった。



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