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序 1 マキシマ=スノウ

はじめまして。勢いに任せて投稿してみることにしました。

正直、あらすじ通りに進められるか謎ですが(筆の進みが亀より遅いので)。

もし興味があったら是非読んでいってください。

プロローグ


  マキシマ=スノウ


 真っ白な世界で、私は唐突に理解した。あぁ、死んだんだな と。

 最後の記憶は、会社のデスクから立ち上がろうとした瞬間まで。大分身体もしんどかったし、状況から鑑みれば、多分だけど過労死だろう。

 最近、体の不調は日ごとに悪くなっていたし、休む間もないほど忙しい日が多かった。

 碌に病院へ行くこともできず、十分な休息を取ることもできず、過労を訴える体をずるずると引きずりながら家と職場を往復していた。どう考えてもブラック企業だったけど、上司がもみ消していたのか何なのか、私を含めた数人が訴えたけど裁判沙汰にはならなかった。

 若い身空で過労死とは。まあ、それも仕方ないと思うような生活をしていたわけだから仕方ない。文句を言おうにも、さっさと転職するなりして環境改善に努めなかった私の自業自得だ。



 ――それにしても。


「私…… どうすればいいんだろ?」


 誰もいないし何もない、この真っ白な世界。ただボーっとしていてもいいけど、ここまで何もないと少し不安な気持ちになる。

 さてどうしたものかと、腕を組み首を捻る。行く当てもないが、帰り方も解らない。ボーっとしてても仕方ないが、何か出来ることがあるわけでもない。

 ……詰んだ。


「まさに八方塞がり、か。せめて何かあったり誰かいたりしたら、もうちょっとどうにかなるのになぁ」

「いるのです、ここに」

「……は!?」


 誰もいないから声に出していた独り言に、いきなり誰かが応えた。

 ビックリして、勢いよく声が聞こえた方…… 真横に顔を向ける。


「……天使?」

「ちょっと違うけどそんなものなのです!」


 そこには、比喩でも何でもなく真っ白な女の子がいた。

 真っ白なワンピースにレースのカーディガン、白いサンダルを履いていて、真っ白な髪は肩に着くか着かないかぐらいのショートヘアで、白い薔薇を模したコサージュで作られたカチューシャが飾られていた。

 肌も雪のように白く、瞳の色まで白っぽい銀灰色。唯一色があると言えば、桜色に色づく唇ぐらいで、全体的に白一色。

 しかも可愛らしい顔立ちはとても整っていて、まさに美少女。十二、三歳ぐらいだろうか、まだ幼さの残る顔立ちは、成長すればかなりの美女になるだろうと予感させるほど。

 そんな美少女が突然現れたものだから、きっと自分は死んだんだろうという自覚も相俟ってつい口をついて出た呟きに、少女は否定とも肯定とも取れるような返しをしてニコッと笑いかけてきた。


「えっと、まずは初めまして! 私、異世界の上位神なのです!」

「はぁ。初めまして」


 突然の爆弾発言にツッコミを入れることもできず、間の抜けた返事しか出来なかったけど、女の子は気にすることなく話し出した。


「えっとですね、多分自覚しているとは思いますが、貴女は過労により死んでしまい、この「狭間」に来たのです」

「狭間?」

「はい。ここは世界の狭間。人間が住む世界と神々が住む世界の間に存在する隙間なのです」


 なかなかファンタジーな話だ。この状況でそれを否定したり出来ないし、しようとも思わないけど。


「それで、本来この「狭間」に来る人はほぼ居ないのです。死んでも魂が人間の世界より外には出ることはないのです」

「へぇ…… ん? なら、私はどうしてここに居るの?」

「それは私が呼んだからなのです!」


 まさかの衝撃発言。

 そんなテロップが脳内に流れ、え? 何このマンガ展開。と、ちょっと現実逃避気味に思う。いや、紛れもなく現実逃避か。

 たぶん遠い目をしているだろう私に、女の子はハイテンション気味に話を続ける。


「私は貴女のことが気に入ったのです! だから私は私の権限を使って、貴女に今度こそ幸せな人生を送ってもらうと決めたのです‼」

「へ?」


 唐突な宣言に、またも間の抜けた声が出たが、次の発言に色々と吹っ飛んだ。


「私の権限で、貴女を私たちが管理する世界に転生させて、そこで今度こそ幸せな人生を送ってもらうのです!」

「まって、職権濫用にならないのソレ!?」

「いいのです! だって私、貴女のことが気に入ったのですもの!」

「答えになってなくない!?」


 というかまず、私のどこに気に入られる要因があったんだ!? そこからして既に謎なんだけど!?


「それに、今回に限っては私の眷属候補という建前で世界神様にも許可をいただきましたのです! だから大丈夫なのです!」

「どう大丈夫なのかが全く解らない!」


 いや、二度目の人生という誘いはとっても魅力的なんですよ? でもさ、これっていいのか?ホントにいいのか!?


「貴女には私たちが管理する世界の一つで、まだ発展途上の世界に転生してもらうのです。「神霊族」というちょっと特殊な種族に転生するのですけど、基本は人間だった頃と変わらないのです。ただ、容姿は今とは全く違うものになってしまうのです。ごめんなさいなのです」

「なんか知らん間に話が決まっちゃってるし……」


 もういいや。わざわざ好意を無下にするのもどうかと思うし、こうなったら腹を括ってやろうじゃないか!

 最早投げやりな気分で思考を切り替えた。まぁ正直に言うと、二度目の人生を貰えるっていうのは凄く嬉しい。今度こそ幸せになりたいところだ。

 けど、まずはいくつか確認しておかないとな。


「転生した先で、やってはいけないことや、やるべきことってあるの?」

「ないのです。邪神誕生とか、魔神による世界滅亡の危機とかでも起こらない限り、好きに生きてくれて大丈夫なのです」

「じゃあ、ダラダラとスローライフを送ったりしててもいいの?」

「全然大丈夫なのです!」


 マジか。つまり仕事に追い立てられることはないって考えてもいいのか。素晴らしいな。


「あと、向こうに家や必要そうなもの全部用意しておくのです! それと注意なのですけど、神霊族になってしまうので、かなり規格外な力を持ってしまう上に不老長寿になるのです。あの世界には長命な種族もいっぱいいるですから大丈夫と思うのですけど、気を付けるのです」

「マジか。わかったよ、気を付ける」


 大き過ぎる力は時に諍いを生む。マンガや小説、ゲームなど、色んな物語でその様は描かれているし、現実でもよくあることだ。それは歴史が証明している。

 取り敢えず、まずは転生した先で色々と知ってからだな。と考えていると、女の子がまた話し出した。


「それと、これで最後なのですけど、転生するにあたって新しい「名前」を考えてほしいのです。勿論、今のままでも問題ないのです。どうしますです?」

「名前……」


 名前。名前かぁ。絶対変えたくないって訳じゃないけど、思い入れが深いかと聞かれると微妙なところだ。そりゃ二十何年使ってきた名前だから、愛着はあるけど。

 でも、どうせなら折角だし変えてみたいって気持ちもあるし……。

 うーん。なら、こうしようかな。


「……スノウ。マキシマ=スノウはどうだろう?」


 一応、スノウが名前でマキシマが苗字だ。

 名前は「スノウ・シャワー」という雪の結晶のようにも見える繊細な花姿の白薔薇から、苗字は「アルバ・マキシマ」という咲き始めはピンク、成長すると白になるという薔薇の名前から取った。

 スノウ・マキシマでも良かったといえば良かったんだけど、ちょっとぐらい日本人だった名残を残したかったから、名字を上に持ってきたのだ。それに、マキシマって私の今の名字そのまんまだし、スノウは日本語訳で雪のことだから、これも今の名前に近いんだよね。

 そう説明して、女の子に確認を取ったらすんなりOKを貰った。軽いなオイ。


「よし! それじゃあそろそろ貴女を送り出すのです!」


 女の子がそう言うが早いか、金色に輝く光が私を包んだ。


「それでは。ご縁があればまたいつか、なのです!」


 光が輝きを増したと思った瞬間、くらりと目が眩んだ。目を瞑ると同時に、一瞬の浮遊感が襲う。


 目を開けると、森の中で突っ立っていた。




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