若長3
華やかな衣装を着たこの子は何者なんだろう?
文化の違いがあっても、多分奥に座ると言うのは
主の立場では無いのだろうか?
族長の末の息子とかそういう立場なのかな?
とまた愛恵はひとまず微笑みを返しておいた。
「サェン ヤウジ イルスノー ビー ハンガイ オーガン」
「・・・『こんにちは』・・・『初めまして』・・・『ようこそ』・・・
『私』・・・『ハンガイ』・・・と言われているみたいですけど
後ちょっと分からないです。」
通訳してくれているらしい花音の言葉に、
歓迎されているらしい事は分かった。
「こ・・・こちらこそ・・初・・初めまして鈴木愛恵です。」
クッションから飛びのいて深々と頭を下げて挨拶をしてみる。
「サェン バェノー エネ スズキマナエ、ミニー ネル イチジョウカオン」
花音がスズキマナエのところで愛恵の方に掌を向けて、
イチジョウカオンのところで自分の胸元に手を当てた。
「スズキ・・・マナエ?・・・イチジョウ・・・カオン?」
男の子はそう言いながら確認するように愛恵と花音の方に掌を
向けると一つ頷いて笑みを深くした。
「・・・トウクニ・・・?・・・初め・・て・・・会う・・・ようこそ
ハンガイ、客、歓迎、料理、食べる、休む、ゆっくり」
たどたどしいながらも
いきなり愛恵にも分かる単語が出てきた。
花音も少し目を見開いている。
「パーティ<宴>、私、マリッジ<結婚>。
私、ハンガイ、リーダー<代表者>、・・・・・
テゥゲザー<一緒に>・パーティ<宴>」
男の子は少し考えるように他の言語を混ぜて
そう言って愛恵の手にお茶碗みたいなものを持たせると
自らそこに白い液体を入れた。
英語だったら私にも少しは分かると少し明るい気分になって
注いでくれたものに瞳を落とす。
何だか甘酒みたいなアルコールみたいな匂いがしているけれど
もしかしてお酒?と思って戸惑っていると
花音が見かねたように
「未成年はお酒飲めないんです・・・
ノー<駄目>・アルコール<お酒>・・ソーリー・・済みません」
と今度は、私にも分かる言葉で言ってくれた。
男の子は一瞬キョトンとした表情をしたがすぐにまた微笑を浮かべて
「ソーリー・・・済みません」
と愛恵に入れたお酒らしいものをそっとその手から取ると
グイッと一息で飲み干した。
そして、傍で控えていた女の人にその器を渡すと新しい器を受け取って
愛恵に渡した。
「馬、乳・・・酒、無い、乳」
どうやらお酒では無いただの馬のミルクに変えてくれたようで
その気遣いに感謝した。
「イチジョウカオン、乳、酒、無い、乳」
花音にも自分でミルクを入れてあげて
男の子はずいぶんと優しい子なようで
少し愛恵はホッとした。
「・・・・あの・・・・所で名前は・・
ネーム<名前>・・プリーズ<教えてください>?」
よくよくみると落ち着いた雰囲気の結構顔の整った
品のようなものを感じさせる少年にどこかもじもじしてしまいながら
愛恵は名前を聞いてみた。
深い意味は無く、結局、なんと呼べばいいのか分からなかったから
聞いたほうが良いかも知れないと思ったからだった。
「・・・名・・・?・・・オタル、ハンガイ、ウリャスタイ、・・・・フールン
私、名、フールン。・・・オタル、ハンガイ、代表?、長?、領主?リーダー、
フールン。」
栗色の髪、焦茶の瞳を持ったその少年は
そう言って手を前にする独特のポーズをとった。