若長2
しばらくして何だか料理が運ばれてきた。
酒らしい物も置いてある。
それでも食べて待ってて下さいと言う事だろうか?
この、花音に言わせると部族か、部族の集落かと言うらしいが、
に来た時にも思ったのだが、外が祭りの真っ只中なのかと思うほど
松明が燃やされ、賑やかだった。
「・・・・花音ちゃん、何だか賑やかじゃない?」
「私もよく分かりませんよ、所々しか言葉分かりませんでしたし、
族長の何か祝い事みたいですけど邪魔になるようですから
家に泊めてくださるだけで結構ですなんてどうやって言えば良いか分かりませんし」
やっぱりお祝いだったんだ、しかも部族(?)あげてのお祝いなんて
随分大きなお祝いなんだなと愛恵は思った。
「・・・・ねえ・・・・ところで花音ちゃん、どうして言葉喋れたの?
花音ちゃんの学校って私立の名門小学校だから学校で習うの?」
愛恵は不思議に思っていたことを花音に聞いてみた。
「・・・・学校は関係ありません、家で家庭教師から将来の為にと
色んな国の言語を学んでいただけですよ、完全に同じ言葉では無いようですが
似たような言語があったので何とか通じたみたいですね。」
サラッとそんなことを言っている花音ちゃんに愛恵は、
何だか花音ちゃん格好良いと思った。
「・・・・・花音ちゃん、気に触ったら申し訳ないけれど、
もしかして『一条』って」
「そうですよ、イチジョウグループの会長が父です。・・・
もっとも私は実の子ではありませんが」
哀しそうな花音の顔に愛恵は慌てて
「花音ちゃん!ごめん!ごめんなさい!
そんなことどうでも良い事だったよね!ごめんね!私も、えっと
聞いてないかな?お兄ちゃんから・・・・お兄ちゃんも元々施設から引き取った
お父さんの養子だったし、私も、お母さんの連れ子だからどっちもお父さんと
血が繋がってないの。」
兄から、世界的に展開している財閥、イチジョウグループの会長の養女が
学校に居ると聞いて何だか親近感を感じていたのだ。
「・・・・聞いたような気がしますけど関係ありませんよ」
花音ちゃんはどこまでもクールだった。
ひとまず少し見慣れたシュウマイのような団子のような料理に
手を出してみるといつも食べる料理とはちょっと違う味ではあるけれど
肉汁がたっぷり出てきてかなり美味しかった。
花音の方をそっと見てみると白い何かの乳のようなものを飲んでいた。
そっと入り口の方に控えてくれていた女の人が今度はニコニコ微笑みながら
ご飯(?)を入れてくれたので愛恵は、ひとまず微笑み返しながらペコリと頭を下げて
お礼をした。
やがて、ザワザワとした気配と人の声が聞こえて接待(?)をしてくれていた
女の人が入り口の布を捲り上げると男の子が入って来た。
まず、目に付いたのは、不思議な帽子に金糸で刺繍された紅の裾の長い衣装、
次に、視線が行ったのは、顔立ちが整っているのに右目部分を隠した白い布と前髪、
服の裾から見えている右手首にも白い布が巻いてあった。
男の子は、なぜか花音ちゃんを見て驚いた表情で何か呟いたが
すぐに首を振ると気を取り直して部屋(?)の奥へと進んで行く。
「サェン バェツガーノー タニルツィー 」
にっこりと微笑んでその男の子が言って奥に座るのを
愛恵は、ぼんやりと見ていた。