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虹の橋の向こうへ  作者: のえる
47/62

夜の凶鳥2

『お兄ちゃんへ、


それから、フールンさんと、フールンさんの奥さんと


ケルレンさんと、チーフォンさん』


そう、書いて、愛恵は筆を止めた。




(何だか宛名が長かったかも知れない)


けれど気を取り直して貴重な紙にこれまた貴重なインクと


ペンを使って愛恵は、続きを書いた。


目の隅では若族長のフールンに言われて愛恵達の


世話に付いてくれている、そして、今、書いている紙と


インクとペンを用意してくれた女の人が何時になく


鬼気迫ったような顔をしている愛恵を


少し恐ろしそうに見ているのが映っていた。




『と、フールンさんの次兄とかいう人とかの


お世話になった方々へ、』


『チーフォンさん』の宛名の続きにふと思い出して


そう付け足すと、愛恵は、置手紙の続きを何かに取り付かれたように


書き出した。




『色々お世話になりました。


見知らぬ土地にたどり着いてから、それから、お兄ちゃんには、


お兄ちゃんになってくれてから、とても親切にしていただき


愛恵は、とても幸せでした。


今まで、ありがとうございました。




愛恵は、愛恵なりに、自分の意思でひとり立ちして生きてみる事にします。


愛恵なりにしたいと思ったことをしに旅立ちます。


探さないで下さい。


絶対に探さないで下さい。




恩知らずで済みません、生きて帰ってきたら必ず出来るだけ恩を返します。


ひとまず今は、愛恵は死んだと思ってください。


なので、何度も済みませんが絶対に探さないで下さいね。


何度もいうのは、本当は、探して欲しいのとは違います。




それでは、さようなら』


愛恵は、書き上げた手紙を読み返すとうんうんと頷いて


手紙の最後に


『愛恵』


と書いて手紙を締めくくった。


愛恵は、自分を蚊帳の外に置いて


子ども扱いする周り、(主に兄の健一)にも


結局なにも出来ない自分(主に兄の健一にさせてもらえない)


にもすっかりご立腹だった。




愛恵は、ズイッと女の人に手紙を渡すと、


思いつく限りの旅の荷物を持って、


ゲル<テント>から出て行った。




後には、自分はどうしたものかと考えている女の人と


その手の中の手紙が、残された。






健一は、知らなかった。


内気で、大人しい子程、


色々と心の中だけで思いつめて知らない間に


とんでもない方向に突っ走ってしまう事を。

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