タイムスリップ?2
ギャウン
ウウ・・グルル・・・
小さな紅葉の手に泣かされる狼と豹を見ながら
愛恵は、頭を押さえた。
「・・・何が・・・何だか・・・」
瞳の先には真剣な顔をした健一と、ケルレンと、
それから合流した人間姿のオラーンが居た。
『だから・・・・』
『・・・フールン君と・・一条が?・・』
『そう・・言ってた・・・』
始めこそ愛恵にも分かる言葉で話していたが、話に熱が入るに連れて
ペラペラと分からない言語で、喋り続ける3人(?)に
愛恵はもう付いていけなくて寝かされた花音の傍で膝を抱えて
獣達と幼いチールンをぼんやり見ていた。
(・・・でも・・・確かにチールンちゃんの顔って
誰かに似ている気がするな・・かわいいな・・。)
ほのぼのと見て和んでいると、不意に頭に手を置かれ、愛恵は、驚いて
その手の先に視線を送った。
「・・・だから、それは・・・・一先ずフールンの所に彼女達を
連れて行ってあげて。・・彼女達は、フールンのアンダ<盟友・・義兄妹>なんだから」
ケルレンだった。済まなそうに愛恵の頭を撫ぜると、ギュッと肩を抱き、
愛恵に分かる言葉でこう言って、話を終わらせた。
面影だけではなく、何かと気遣ってくれる所も、ケルレンは、
フールンに似ていると思った。
「・・・・マナエ・・・気をつけて行くんだよ、。
私に会った事は言っても良いけど・・、チールンの事とか、私の様子とか
言わないで、ただ、聞かれたら「元気だった」とだけ・・」
見送る体制になっているケルレンに愛恵は、驚いた。
ケルレン、フールン、チーフォンで兄弟(妹)だったのじゃなかったのだろうか?
「一緒に・・・帰らないんですか?」
恐る恐る聞いた愛恵に対して、ケルレンは苦笑いを返して手を振った。
「俺がこの国に来たのは、お前達が去っていって直ぐだった。
俺は、3,4ヶ月程かな・・フールンの部族で客人した後、
部族を出て行こうとしてるケルレンについて一緒に他の部族に移ったんだよ。
今の所1年と半過ぎ位ケルレンの所で客人やってる。」
「・・・・チーフォンさんは?・・・フールンさん、ケルレンさん、チーフォンさんは
一緒の兄妹じゃないの?」
花音を馬の前に抱えて、愛恵を後ろに乗せての健一の説明、
その後の、愛恵の質問に健一は、苦笑いを浮かべると、
「チーフォンは、フールンと一緒。・・・・チーフォン、フールンが兄弟で、
ケルレンはその従兄妹。・・・チールン、チーフォンの顔に似てただろ?
内緒にしたがってるみたいだけど、
ケルレンとチーフォンの息子がチールン。・・・
何だか複雑な関係があるみたいだ。」
複雑な関係が・・・・俯く愛恵に健一は一つ笑い声を立てると、
「ケルレン達の事お前も気にしていられないぞ、
お前や一条も色々これから大変だぞ・・・俺もな・・。」
そう言って、その後、
「・・・なあ・・・・愛恵、
お兄ちゃんと結婚しようかって言ったらどうする?」
ええええええ!!!!
愛恵の頭に衝撃が駆け抜けた。