頼りになりたい2
「・・・少し、眠らせてください
昨日からほとんど眠っていないので・・・」
ひとしきり笑った後、そんな自分を恥じるように
一つ咳払いをして花音は
そう言って、コロンとその場に寝転がった。
愛恵に背を向けて眠る状態の花音に愛恵は、
生唾を飲み込み、決心してそっと背後から近づく
「・・・・・カオン・・・ちゃん・・・
子守唄歌ってあげようか?・・・一緒に寝ようか?」
「・・・だから・・・『カオン』ですよ。
私は、年下ですけど赤ん坊では無いのでお断りです。」
背中を向けたままそう言う花音に愛恵は項垂れる。
「・・・・一緒に寝て欲しいのですか?・・・不安で恐いんですか?」
ふと気付いたようにそう言って振り向いた花音に
愛恵は情けない気持ちでいっぱいになる。
「・・・・私に出来る事は無いの?・・・カオンちゃ・・・カオン・・・ばかり気遣って
何も出来ないのが辛いよ・・・甘えて欲しいし頼って欲しいよ
そりゃ・・・頼りにならないと思うのだろうけど・・・
私のこと置いていったりしたし。」
びっくりしたように身体全体で振り向いて飛び起きた花音に、
いけないと思うのに涙が滲んで地面に零れ落ちる。
「カオンちゃん・・・ごめん・・だけど・・カオンちゃん・・・。」
何か言葉にしたいのに、涙を止めたいのにぼろぼろと涙は零れるばかりで
言葉は嗚咽で出てこなくて
そっと近づいてきて気遣うように抱きしめてくれる花音の
小さな腕によけいに涙が止められなくなってしまった。
「・・・・大丈夫・・・大丈夫、貴方は役に立ってますよ
無力じゃ無いです。・・・・・私が・・・・私が貴方を
ちゃんと家族の所に・・・お兄ちゃんの所に返してあげますから・・・・・」
子どもの手で、優しく頭を撫ぜてくれる花音に少し落ち着きながら
「・・・・どう・・役に立ってるの?」
出てくる嗚咽を堪えながら愛恵がそう聞いてみると、
少し詰まってから、
「・・・・・・・か・・・観賞用?・・とか・・・愛玩用・・に・・ほのぼのして?」
とか花音が愛恵に答えて来たので
愛恵は少しムッして
「・・・・役に立ってないのと一緒の意味よね・・・」
と突っ込みを入れた。
「・・・・・とにかく・・・・・いつまでもそんな顔していないで、
本当に、もう大きいのにしょうがない人ですね貴方は、」
苦笑して愛恵を下から覗き込む花音に愛恵は、涙を浮かべた瞳のまま
ムッした表情を続けていたが
「・・・・やっぱり、カオンちゃんの瞳って綺麗ね、
そんな目で見られたらもう良いやって気になっちゃうね」
と微笑んだ。
花音は見る見るうちに真っ赤な顔になって
そっぽを向いてしまった。
「・・・・は・・・・・恥ずかしい人だ・・」