アンダの誓い1
「カオンさん、こっち・・」
愛恵を連れてきてくれた人達に何か話をしていたフールンが
真剣な顔で、花音を呼んだ。
ため息を付いて花音は歩き出したフールンに付いて行こうとする。
慌てて一緒に行こうとする愛恵を花音が手振りと、首を振って止めるが
少し前に居るフールンが振り返って
『聞かれたくないことや、
心配を掛けたくない事もあるのでしょうが
マナエさんにもある程度話しておいた方が良い事も
あるのではないですか?』
と言った事で、花音は不満そうな顔をするものの
目に見えて怯んだ。
『それに、呼んでいる私が言う事では無いですけど、
出来るだけ傍に居て上げた方が良い。』
かなりな早口での言葉に愛恵は、何をいっているのか良く分からない
ながらも必死の顔で花音の服を握り締めた。
『それで?・・・・
何か話しておくことはありませんか?カオンさん』
新しいフールンのゲルらしい物に入ってすぐに
ゲルの中で駆け寄ってきた女の人や、男の人に何か言って
何処かに行かせてしまうと、フールンが、
もうまったく愛恵には分からない言葉でそう言った。
『・・・・何です?貴方が私に説教するとか
何か言うのでは無いのですか?』
怪訝な顔でしかし花音が滑らかな言語でそう返す。
『・・・・何か説教されると言う自覚があるということですか?貴方は・・』
フールンが苦笑して言葉を続けようとした所で
突然、奥から仕切っていた布を跳ね除けて
小さなあどけない少女がもじもじしながら入ってきた。
『・・・あ・・・あの・・・フールン兄様、お客様ですか?・・・・・
私・・・おもてなしした方が良いのでしょうか?』
葡萄茶の髪と瞳を持った小さな少女は、
長い髪を頭の横で高く二つに高く結い上げて
よそ行きにでも行くように煌びやかな文様が入った衣装に
身を包んでいた。
(フールンさんの妹さんかな?可愛いな)
と思って愛恵がほのぼの微笑んでいると、
フールンが
『セレンゲ、良いんだよ、今から少し大事な話をするから
誰も近づかないで欲しい、済まないね・・・
ここは私だけで大丈夫だから、ゆっくりセレンゲは休むと良い。』
柔らかく微笑んで、セレンゲの頭に持って行こうとした手を止めて、
迷った挙句軽く肩を叩いた。
セレンゲはちょっと残念そうな顔をしたけれど
間近なフールンの笑顔にポッと赤くなって俯き
コクコクと2回ほど頷いて去っていった。
その兄妹じゃないような様子に愛恵は思わず
(・・・・えっと・・・・ブラコンさん?)
と思うが、何となくそういえばフールンさんは先日結婚したって
言ってたようなと思うがまさかいくらなんでも遊牧民族の
族長の妻があんな幼妻じゃないだろうと思う。
『・・・失礼しました。私の妻です。』
とフールンは、愛恵にも分かるように、
ゆっくりと英語<みたいな>言語で言ってくれた。
「え!」
その言葉に、愛恵も驚き目を見張ったが、
すぐ横から花音の声が漏れたので思わず愛恵は、花音の方を見た。
『失礼・・・しました。』
思わず素で驚いてしまった自分を恥じるようにほんの少し
頬をピンクに染めると
愛恵にもフールンにも分かるように花音は、そう言った。
『話が中断しましたが、私に教えてくれませんか?事情を、
貴方には深い事情が、何かあるのでは無いのかと
思うのです。・・・・
私の勘では、今回の地震も自然の物ではないと思うのですが?』
『・・・・・』
『・・・フフヤガーン、ザラド、銀の王子、サラ
と言うのに心当たりありませんか?』
『・・・・・』
今度は、愛恵にも所々分かる言語でゆっくりと
話しかけるフールンにひたすら花音は無表情と無言で返した。
『・・・・心あたり・・・・あるのですね』
どうして?
愛恵は思った。
しかしやはり花音は、無表情と無言で、
フールンはため息を付くと、
『愛恵さんを連れて旅立とうと思って自分の意思で
帰ってきたのでしょう?・・・・分かりました。
花音さん、愛恵さん、私は、貴方達と
アンダ<盟友>の誓いをしましょう・・・・・
それが正解かは分からないけれど、おそらくそうしたほうが良いと
貴方達を深い繋がりを持つと私の勘が告げています。』




