表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹の橋の向こうへ  作者: のえる
19/62

居なくなった花音ちゃん2

瞳を閉じてみたが、眠れなかった。


花音は何処に行ったのだろうかとか、


チーフォンとケルレンは大丈夫だったのだろうかとか、


花音は一人で狼とかに襲われたりとかしていないだろうかとか


泣いてないだろうかとか、迷子になってないだろうかとか


お腹を空かせて倒れてないかとか


誰かに誘拐されて苦しい目に遭ってるのではないか


どこかの道を踏み外して遭難してるのではないか


池に落ちて溺れているのではないか


考え出したらキリがなかった。




しばらく自分の思考に悶々と囚われていたが、ふと


何か聞こえた気がした。


毛布の中で耳を澄ませると、








『・・・フォン・・・で・・』


誰かの声が聞こえた。




『・・・・ごめんなさい、チーフォン兄上、私の為に』


少し離れた所で誰かがそう言っている。


チーフォン?・・・チーフォンさんの事?




『ケルレン、俺は、俺のしたいようにしただけだぜ』


ケルレンさんと、チーフォンさん?


二人とも目覚めたんだ。




愛恵は、ほっとした。




『しばらく旅に出れなくなったな・・・悪い、


一緒に旅に出ようと言ってたのに』


『・・・良いんだ・・・・それは。むしろ私は、もう少し長兄には


ハンガイ族を離れないで欲しい。』


『何でだ?』


言葉が分からないながら二人の真剣さと言うか、


仲のよさが感じ取れた。


聞こうと思ってないのに、勝手に愛恵の耳に二人の声が聞こえる。




『これから、ハンガイは大変な事になりそうだ、


族長を継いだばかりのフールンは、とてもしんどい事になる。』


ケルレンの声にチーフォンの声が答える。




『・・・継いだばかり、しかもフールンが継ぐのは


最大部族の一つオタル族もだ。・・・そんな中、随分の損害が出た。


援助の手とかも受け入れざるおえないな・・・


でも、俺は、お前の傍に居たいんだ』


『・・・・私は、フールンの傍で平静で居られる自信はないよ』


ん?・・・何だか雰囲気的に妙な感じが漂ってきた。




『・・・なあ・・・ケルレン、俺だけを見ろよ?・・・


俺の妻になれよ、今は、フールンを好きなままで良いから、


一族から少し離れて新居を造ろう、


フールンにも他の一族の奴らにも会わなくて良いから。


俺だけを見てたら良いから・・・・フールンよりも俺を好きにさせてやるから』


『なあ?・・何をまた!』


『お前が好きだ・・・お前を妻にしたい』


何だか声の方向から物音がしているのと


声の調子の熱心なのに愛恵は何か分からないながらも


何故か赤面した。




『・・・・ちょ・・・・ちょっと・・・長兄!!』


『・・・・お前だって、俺の事、好きなはずだ、俺以上の男は居ないぜ』


『・・長兄・・・。』


何だか沈黙が降りた。




『・・・・本当にうぬぼれ屋だな・・・・


でも、長兄も、フールンも最高の男だと思うよ


二人以上の男性ヒトを私は知らない・・・・二人以上に私を愛してくれる人を


私は、知らない。』


『好きだぜ、ケルレン、めちゃくちゃ・・・・お前が好きだ』


『・・・・ちょ・・うけい・・。』


愛恵は、これは不味い状況になってきているのだと気付いて来て


何処かに行こうかと思うけど、この雰囲気の中物音をコトリとも立てては


いけない気がして体が硬直する。




『・・・・ありがとう・・・・長兄・・・。』


『お前は俺を好きになった方が良いんだ。


俺は、ずっとお前を愛してゆける・・・・ずっと昔からお前だけを見ていたんだぜ』


『ちょうけ・・『チーフォンって言えよ』』


『ちょう『・・・チーフォンって言わないとキスするぞ』』


訳の分からないながら愛恵の方が恥ずかしくなってずんずん頬のあたりの


熱が上がってゆく。




『え!・・チーフォン!!』


『・・・・・』


『・・・!!・・嘘つき!』


『・・・だって、好きな女に名前呼ばれたらキスするしかないじゃないか』


『嘘つき嘘つき嘘つき!!・・・・大体そのちょう・・チーフォ・・


長兄のその笑顔自体が嘘なんだ!・・・・って!』


『だって、チーフォンって言わないとキスするってっただろ?』


何してるの?二人は今、一体何をしているの!?


愛恵は、切実に誰かに助けて欲しかったが、


きっとこの場にフールンが来てはいけないだろうと本能的に思った。




『・・・・俺が欲しいって言えよ、ケルレンそしたら俺をやるから!』


『!!・・・・チーフォンなんて図体のでかいもの私は要らない!


カケラも要らない!』


『俺が欲しいって言え、ケルレン』


『要らないって!・・・・第一なんで命令口調なんだ!


第一なんでそんな餌を前にした狼みたいな目つきしてるんだよ、


そんな顔して、威張って・・・・そんなチーフォンなんて要らないよ!』


『言ってくれ・・・・俺を欲しいって言って欲しいんだ。


俺は・・ケルレン、お前が欲しい、お前が・・・・お前に欲しいって言って欲しい』


『ほ・・・欲しいって・・///馬鹿!馬鹿ぁ!・・・いや、馬鹿じゃないけど


何言ってるんだよ!・・・////えっと・・・えっと・・・趣味悪いよ・・。


えっとえっとね、私は・・・その、


長兄・・・チーフォン・・嫌いじゃ・・・無いんだよ・・・


ずっと守ってくれて愛してくれてたよね・・・感謝してるし・・・す・・・好きだよ』








『・・・・何?・・・どうしたの?チーフォン痛いよ


うん、・・・分かってるよもう、分かったよチーフォンの気持ちは、・・・


うん、・・・・分かってるでしょチーフォンだって・・・私だって、昔からずっとずっと


フールンとチーフォンが好きだった。』


『ケルレン、お前が大好きだ好き過ぎて堪らない位・・・お前を愛してる・・


そんな言葉なんか恥ずかしいけど、愛してる、愛してる・・』


『・・・・も・・・物好き・・・本当に、物好きだな・・・・』


『俺は、お前が・・・お前のその瞳が好きだ、炎のような気が強い


俺の心を燃やしちまうみたいな魂が好きだ。


お前のこの手が好きだ、柔らかくない硬くなっちまった大切なものを


守ろうと剣を取るこの手が好きだ。


どこまでも駆けて行く力強いお前の足が好きだ。


守るために傷ついた背中が好きだ。


お前の全部、数え切れないお前が好きだ・・・・・


お前に否定されるのが恐いって思うんだぜ!?この俺が・・・・・・


頼むから俺をお前の物にしてくれ・・・・お前の全てを俺にくれ』


『・・・・・上げない!・・・・私は私のものだ!チーフォンは、チーフォンのものだ・・・・


上げないけど・・・・


だけど・・・・ね・・・・えっと・・・共有させて・・上げても良い・・


チーフォンが・・そこまで言うのなら・・・そこまで言うのだったら・・


私だって・・・よく分からないけど


・・好きだから・・・チーフォンが好きなことは確かだから・・・・・』




その後は静かになってしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ