女の子同士?4
愛恵の傍にはお兄ちゃんが居た。
自慢のお兄ちゃん、大好きなお兄ちゃん、
愛恵の少しボーとした性格で失敗した時も、
お姉ちゃんの着せ替えごっこがいい加減に嫌になって逃げ出した時も
お母さんに怒られて泣いている時も
優しい笑顔で包み込んでくれた。
愛恵の、初恋の人だ。
お父さんとお母さんとお兄ちゃんとお姉ちゃんと、
一緒に食卓で夕食を食べていた。
私の失敗をお母さんが、「もう少ししっかりしなきゃね」
と言って、お父さんが「まあまあ、そんな所が可愛い所じゃないか」
と言ってくれて、お姉ちゃんが、「そんなことより新しい服着てみてよ」
と私の肩を抱いて、
お兄ちゃんが優しく微笑んで、私の頭を撫ぜてくれていた。
目覚めると真っ暗だった。
身体を起こして、私の部屋ってこんなに暗かったっけ?
と考えて愛恵は、ボーっと寝ぼけた頭で周りを見回して
何だか、部屋が模様替えしているけどまあ、良いや
と思って再び寝なおそうとして、随分離れた所で眠っている
花音に気が付いた。
「花音ちゃん?」
布団を着たままズルズルと寄って行って覗き込むと
花音は、眠りながらすすり泣いていた。
「・・・う・・う・・・誰?・・・誰なの?・・・
嫌、お父様!?・・・お父様?・・・・何故・・そんなの知らない。
私は、貴方なんて知らない・・・。」
「花音ちゃん、花音ちゃん!」
何だか嫌な夢を見ているみたいな花音を起こさなければ
と愛恵は、花音を揺り起こそうとするけれど
後から後から涙を零しながらまだ、夢に囚われている。
「花音ちゃん・・・起きて・・」
花音の頭の下で枕が涙で濡れていた。
「私は、人間のはず・・・血は繋がって無くても
お父さんとお母さんの子どもです。
帰りたい・・・帰りたい・・・。」
深く深く眠りに落ちながら見る花音の夢はとても哀しい夢のようで
幼く丸い頬にそっと触れた愛恵の掌も濡らして嗚咽を漏らし
花音が泣いていた。
泣き過ぎた花音の頬が、そして身体が熱い
「花音ちゃん・・・花音ちゃん。」
愛恵は、見ているうちに胸が詰まって
堪らなくなって花音の頭を抱きしめた。
ずっとクールでついつい頼ってしまった花音、
しかし、花音は、まだ小学生なんだ、花音の方が私よりもっと
不安で家族の所に帰りたいんだ。
「ごめんね・・・ごめんね、花音ちゃん。」
この子を守ろう、家族の元に帰れる方法を見つけよう
まず、此処で生き抜く方法も言葉だって覚えて
花音のお母さんの代わりになってみせようと愛恵は、決意した。
花音の丸いピンクの頬を濡らしている涙を拭う。
(傍に居るよずっと・・・・一緒に居るから花音ちゃん)
自分の着ていた布団を花音の上に被せて、
背を向けている花音の後ろに入って愛恵は花音を抱きなおした。
一瞬恥ずかしさで戸惑ったけれど花音にこれ以上哀しくて恐い夢を
見て欲しくなくて、子守唄を歌う。
後ろから抱きしめた花音の身体からお風呂の時に借りた、
石鹸の匂いがした。
私も同じ匂いがしているはず、本当の家族みたいに
愛恵は花音を抱きしめながら眠りに付いた。