女の子同士?2
一つため息を付くと愛恵は、花音の方を振り向いて
そっぽを向いてしまったその横顔をしばらく見つめていたが
急にペコンと頭を下げて謝った。
「ごめん!花音ちゃん私もいくら薄暗い中に黒い物体が乱入してきて
びっくりしたからって・・・しかも、分からない言葉を話しかけられて
腕を掴まれたからって・・・本当にごめんね・・・お風呂邪魔しようとしたりとか
花音ちゃんを倒そうとした訳じゃないの」
怒ってる?・・・怒ってるよね?
と伺い見る姿は子どものようで花音は、ため息をついた。
「・・・・もう、良いです。・・・今更過ぎた事ですし・・・
だから出てってくれませんか?今すぐに」
「うん・・・じゃあ・・・誰か呼んで来るねお風呂倒しちゃったし」
女の子同士なのにさっさと出て行けと言わんばかりの
言い方にやっぱり花音は怒っているのだろうか?
とおずおずと提案すると、
「・・・いえ、自分で何とかしますから呼ばなくて良いです。
貴女も先に眠って下さい。」
少し慌てた様子で花音がそう言ってくる。
うん、分かった
と愛恵がその場から出てゆくと、
入り口で誰かの声が聞こえた。
『・・・・済みません!入っても良いですか?』
「誰ですか?」
と問いかけると声の相手は、
『私の名前はケルレン・・・先ほど長兄が失礼したようですが』
と英語みたいなエーティル語らしい言語でそう言った。
「・・・・ケルレン?・・・兄弟?」
そのあたりだけ聞き取れてオズオズとテントの中に導き入れて
驚いた、
「フールンさん?」
その人物はフールンによく似ていた。
『長兄チーフォンが、黙って入っていって急に話し掛けて驚かせて、
さらに風呂場に侵入したらしいですね?・・・・申し訳ありません』
エーティル語のその言葉の端々で先ほどの事をこの人が
謝りに来たんだと分かって
『気にしないで下さい』
と返しておいた。
そして、風呂場の片付けをしようとしてくれるのを
思い切り首を振って辞退した。
なんでも、これから、先ほどの青年チーフォンと
二人で旅に出ようと思っているのだが、
フールンに許可を貰うのと、
挨拶をしに来たという事だったらしい。
愛恵は、あまり気にしないで下さいということを伝えて
ケルレンは、申し訳なさそうな顔をしながら
何度もペコペコと頭を下げながら去っていった。
再び静けさがその場を支配して、愛恵は、ぼんやりと
天井を見上げた。
「あんまりよく見てなかったけど結構チーフォンさんって
お兄ちゃんに似てたな・・・チーフォンさんもお兄さんみたいだけど・・」
ああ、お兄ちゃんと懐かしく・・と言うほど離れては居ないけれど
愛恵は、思い出した。
優しくお姉ちゃんと私を見守ってくれたお兄ちゃん、
愛恵にとっては誰よりも格好良いヒーローだった。
「私が昔、事故にあった時も助けてくれた。」
愛恵は、自分の胸を押さえその時自分に分けてくれた
兄の健一の血はまだ身体の中に流れているのだろうか?
だとしたら絆はまだ切れていない気がするのにと感傷的なことを考えた。