若長4
愛恵は落ち込んでいた。
愛恵は意気消沈しながら次々注いでくれるのを良いことに
ミルクをゴクゴクと何杯も飲み干した。
シュウマイみたいな物もパクパク食べた。
少年、フールンと花音は、英語が通じると分かってから
英語でペラペラと流暢に会話しだした。
愛恵にも所々は分かるけれど、学校教育の上での知識なので
耳の聞き取りとなると難しかった。
英語が通常会話になってしまったようだ。
『へえ・・・・ここでは、この言語は英語と言わないのですか?
エーティル語?そう言うのですか。』
花音ちゃんが驚いたように英語(=エーティル語?)で
そう言うと、
『はい、エーティル皇国は、貿易の中心で
あらゆる国にエーティル人が貿易に来ている状態で、私達も
外国の言語を学ぶ場合エーティル語を勉強しますので・・
殆ど、どの地域で通じる言語です。』
にこにこ微笑んでフールンが答える。
『日本と言う国は知っていますか?・・・・
さっき、エーティル語以外の言語を話してくれてましたが?』
『ニホン?・・・さあ・・・聞いたことは無いですが、
トオクニの言葉で話されていたみたいなので
その言語で話してみたんですが?・・・・
トオクニはエーティルと同盟状態にある国で
技術力の高い国と聞いてます。』
花音とフールンの話を半分、分からないまま聞きながら
愛恵は、シュウマイみたいのを食べ過ぎて胸が苦しくなってきたので
真ん中の器に置いてあった木苺のような果物を手に取ってみた。
(結構美味しい)
満足気な表情で微笑んだ愛恵の目の前に
二つの手が差し出されていた。
その手に握られているのは、
片方の大人っぽくなりつつある手には、
先ほどの木苺風の物の果汁を絞ったジュースのような物
片方の小さな手には、
クレープのような生地にこれまた先ほどの木苺風の物を
ジャムにして挟んだ物だった。
手の先にはフールンと花音の顔があって、お互いに驚いたように
顔を見合わせていた。
「えっ?・・・どうしたの花音ちゃん、フールンく・・・フールンさん・・
いや・・フールン様?」
驚いて愛恵は二人の顔を見る。
「様、要らない、」
そう言って微笑みを浮かべるフールンに
「?」
愛恵は首を傾げる。
「・・・・フールン・・・さん・・・?」
恐る恐るそう言う愛恵にフールンは一瞬考えるような
素振りを見せてから頷いた。
「えっと・・・・気遣ってくれたんですよね?・・・
花音ちゃんも・・ありがとう・・・えっと・・・サンキューベリーマッチ」
フールンは笑みを深くして
花音ちゃんはクレープの様な物を持ったまま
頬をピンクに染めてそっぽを向いた。
『さて、・・・・では、ゆっくりして楽しんで下さい。
此処を自由に使ってもらったら結構です。』
フールンが席を立った。
何だか半分ほども訳の分からない状況で愛恵が
フールンの動きを目で追っていると
出口から出る寸前に安心させるようにニコッと愛恵に微笑んだ。
「・・・・花音ちゃん・・・・フールンさん行っちゃったね」
花音は愛恵のその言葉に口元だけ微笑んで一番先に
入れてくれたミルクのお酒のような物を飲んでいた。
「・・・あ!・・・・花音ちゃん、未成年はお酒禁止ですよ!」
花音の手から愛恵は、お酒を奪ったがすぐに奪い返されてしまった。
「・・・・これは、アイラグと言って、
お酒と言うほどのお酒では無いらしいですよ
子供も飲んでいる、寒いこの地方で身体を温める為に飲んでいる
酸っぱいカルピスみたいな物らしいですよ」
「そうなの?・・・・カルピス?」
頷いて花音は、愛恵にアイラグを入れて手渡してくれた。
恐る恐る飲んでみると、
すっぱいカルピスと考えると、そんな感じもした。
でも、アルコールも入ってますけどねと言う
花音の言葉は聞こえていなかった。
「・・・・鈴木愛恵さん、落ち着いて聞いてください。
先ほどフールンさんと話をしていて分かったんですが・・・」
ん?
と顔を上げて花音の顔を見てみると何故か花音は斜め具合を
見ながら瞳を合わせずに話を続ける。
「・・・・ここは、いわゆる《異世界》と言う物のようです。
似たような文化形態をたどった世界なので言語も似たような物が
あるようですから少しは助かりますが・・・」
愛恵は、パチクリと目を見開く。
「ここは、月の女神が見守る世界、
この国はその中で五大大国と呼ばれる一つ、《モルドル》、
まあ、私達の世界のモンゴルみたいな物ですね
ここは、《ハンガイ部族》族長のゲル・・・ゲルって家の事ですね、
あのフールンさんは、先日、分流の族長の娘を
第一夫人に迎えることによって《ハンガイ部族族長》に就任した
若長で、今は、その第一夫人との約一週間程の結婚式の儀式の途中らしいです。」
「え・・・え・・・?・・えええええええ!!!!」
愛恵は、あらゆる所に驚いた