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煙草の煙に誘われて。  作者: 梅屋さくら
第零章 プロローグ。
1/40

**Prologue……

 倉木くらき あまね、二十五歳。

 二年前に結婚まで考えていた恋人を不慮の事故によって亡くし、何事にも情熱がないような人間になった。

 今彼が興味を示すのは、小さいころからスタジアムへ行って観戦していた野球だけだ。


 遠くでせみが鳴いていて、そろそろ暑い夏がやって来ることを知らされる。

 彼は夏を嫌っている。

 なぜなら、彼女がアイスを食べたいと駄々をこねていたあの日々を思い出してしまうから。

 思い出してしまうと言っても、どの季節にも彼女との思い出は彼の心の中に深く残っている。

 結局、季節が移り変わるごとに憂鬱だと嘆く日々であった。


 周は煙草をくわえたままゴミを捨てに行く。

 ゴミ袋を投げ入れて家へと帰ろうとしたら、近くから赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。

 その声はかなり小さい赤ん坊のように聞こえた。

 なぜだか自分が呼ばれているような気がして……放っておけなかった。

 周りを見渡すと、周の視界にはダンボールが飛び込んできた。

 駆け寄って中を覗く。するとそこにはタオルでくるまれた赤ん坊がいた。


 ダンボールには、“拾ってください”との貼り紙。

 まるで捨て犬のような扱いにいきどおりを覚えつつ、思わず周の思っていたことは口に出ていた。


「どうしてこんなに小さな赤ちゃんが……?」


 無意識的に煙をふぅーと吐く。

 その煙は、この暑さに溶かされていくかのようにどこかへ消え去った。

 赤ん坊の身体に煙草の煙は毒だが、彼は赤ん坊の親に対する怒りが強すぎて赤ん坊自身のことを考えてあげられるほど冷静ではなかったようだ。

 怒ると周りが見えなくなる……それは周の最大の欠点である。


 まだ一歳にも満たないような赤ん坊の頬にそっと触れる。

 首がすわっておらず、ふにゃふにゃした赤ん坊に触るだけでその鼓動は速くなっていた。

 ぎこちない動きで赤ん坊を抱きかかえ、家へと向かった。

 家で名前や誕生日の手がかりとなるなにかを持っていないかと探してみるも、なにも見つからなかった。


 最近増加している児童虐待じどうぎゃくたいのニュースを観て、“許せない”とテレビ画面に向かって怒るような周だ。

 感情を失いかけている周が怒るということは、よっぽどの怒りを感じているという証拠である。

 両親から愛情を受けることなく捨てられたこの赤ん坊の肌を、この強い日差しに焼かせるわけにはいけない……その太陽よりも強い想いがあり、彼は自宅で保護してあげようと決めた。

 周りの人が自分をどう思うかを考えることもなく、また突っ走ってしまっていた。


 周がこの赤ん坊と出逢ったのは偶然か、それとも必然か。

 二人は出逢うべきだったのだろうか。

 これからこの赤ん坊が大きくなっていくのに比例してその疑問符も大きくなっていく、周はそういう予感が心のどこかでしていた。

本作は軽く読むというよりか、深くこの小説の世界に浸っていただきたい、そういう思いで書きます。


皆さまが煙草の煙漂う世界に浸れるよう一生懸命執筆していきますので、

どうか最後までよろしくお願いいたします。



**次回更新……5/28までには確実に更新する予定。お楽しみに!


~07/10 改稿完了

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