リーゴ王国の四兄弟
もうすぐ建国記念祭かい、いやいや早いものだよ。
そうだ、お前は知っているかい?何って、リーゴ四兄弟の話だよ。
長男のロイヤル様は言わずと知れた国王陛下、初代陛下の面差しそのままに、あったかいお人柄でね。国民を家族として愛してくれた当時にすれば稀少な素晴らしい君主だった。
次男のアレックス様はロイヤル陛下を宰相閣下として支えた方さ。お母君に似てスラリとしていてね、厳しいお言葉の中に愛情のあふれたお方だったのさ。
それからセイバ様、あの方も若い頃はやんちゃだったようだけど、落ち着いてからは軍部のトップとして国を守り続けてくださった。今でも軍部では至高の頂点と言われているんだとか。
え? 一人足りないって?
そう、大事なのはここからさ。実はね、一人だけ、排斥された王子様がいたんだよ。
まだロイヤル様が即位する前の、初代王の時代さ。初代王は勇猛果敢でね、苦しむ人々を助けては導き歩き、ついに建国をも成し遂げたんだ。
それから王位に就かれ、奥様は王妃陛下に、お子様たちは王子殿下となって。
本当に仲の良くて、それは羨ましくなるようなご家族だったんだよ。国民全ての理想像といっても良かったね。
だけどおかしくなったのはいつだったのかね。王は突然お子様の一人を排斥し、それに反発した王妃陛下まで追放なさったのさ。
そのお子様が三男のスバー様。輝くような金髪に蒼い瞳の、それは美しい王子様だったそうだよ。
…思えば、その容姿が原因だったのかね。スバー様は王にも王妃にも似ていなかった。他のお子様たちはしっかり血を受け継いでいらっしゃったんだけどね。
スバー様の排斥を巡って、王は奥様だけでなく他のお子様からも激しく反発されたさ。でもそれが覆ることがなかったのは、スバー様本人が反発しなかったことが大きかったそうだよ。
そうしてスバー様が王家と距離を置いて間もなく、王は病に倒れ、やがて崩御されてね。ロイヤル様は父君を継ぐことを最後まで渋って、けど即位と引き換えにスバー様を連れ戻すことにしたんだよ。
王族に戻ることはしなかったけれど、宰相閣下の補佐やら戦線に出るやらと目覚ましい活躍をなさった。王国はみるみる発展し、繁栄を極めたよ。ロイヤル陛下をはじめ四兄弟を讃える声はひっきりなしさ。
ちょうどそんな頃にね、あの天災が起きた。太陽の光が妖しく陰って、異常気象が多発したもんだから、人々は恐怖に震えたよ。
…そのとき救いをくれたのも、あの四兄弟だった。彼らは国庫を解放して食糧を配り、軍部を動かして救済活動にも全力を注いだ。
スバー様のお姿が見られなくなったのは、先の見えない天災に人々が疲弊し始めた頃。お城から輝く光が昇ってゆくのを見たという人もいたそうだけど、真偽は定かじゃない。
それから呆気なく天災は終わったよ。喜ぶ国民たちの傍ら、陛下たちは何だか寂しげに見えた。スバー様について公式な発表は何もなされなかった。亡くなったのか失踪されたのか、とにかく全てが謎に包まれたままだったよ。
翌年の建国記念祭、ロイヤル様が語ったところによると。
『俺には三人の素晴らしい弟たちがいる。だから俺は国王として起つことが出来たし、この王国の今があると言ってもいい。
兄弟の絆はどんなに遠く離れても変わりなどしない。
太陽にも恥じぬ治世を必ずや成し遂げよう』
あたしにはその時、太陽がそりゃあ嬉しそうに、柔らかく微笑んだような気がしたんだよ。
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