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末弟セイバの場合
思い出すのは、寂しげに遠くを見つめていた瞳。
俺はそれを見ると無性に苛立って、いつも喧嘩をふっかけていたんだっけ。
ーー何でそんな顔するんだよ。俺たちは家族で、もっと近くにいるはずだろう?
でもあいつはその理由を決して語らなかった。親父が何を狂ったのかあいつを排
斥しようとしても、いともたやすく王籍を離脱する始末で。
ーー何でだよ、バカじゃねえのか。
俺だって王位に興味はないが、それでも『家族』の証を手放されたように感じた。
一つしか離れていないはずなのに、あいつはいつだって遠くて、俺は必死だった。
あいつが、スバーがいなくなったのは突然だった。
兄貴が王位に就いて、ようやく周囲の火種が片付いてきた頃。空が妖しい色合いで呻き始めると共に、何となく体調を崩すようになって。
眠る時間が長くなってきて、短くなった覚醒のなかで最期に聞いたのは。
「僕、これからも兄弟で家族でいてもいいのかな」
ーーやっぱりお前、バカだろ。…いいに決まってる。当たり前じゃねえか。
それは嬉しそうに微笑んだあいつを見て、まぶたが熱くなったのは、今や俺だけの秘密だ。