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序章

ヒーローには夢があった。


誰にも言えない、大きな大きな夢。


しかしそれは、滑稽で諧謔かいぎゃくな、叶うはずがない夢。


言葉に出そうとしてみるも、そんなことを言えば笑い者にされることは分かりきっていた。


だから。


ヒーローは静かに涙した。


誰にも見られないように、そっと独りで。


自分が恐れられなくなる、そんな日を思い描きながら。


こんな自分に、優しく手を差し伸べてくれる人がいることを望みながら。



「俺だって、正義のヒーローになりたかったんだ」


小さな世界のどこかで、彼はぽつりと呟いた。

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