彼女の時間
ぽつぽつと雨が降り始めたのを視界の端にとらえる。
「雨って苦手なのよね」
無事にミニバンが走り去った後にポツリとかがみさんが呟いた。
「雨ですか?」
「うん。雨って嫌い」
さらさらと降る雨をいっぱいに体に受けるように両手を広げて空を仰いだ。
「どうしてですか?……その、かがみさん」
「雨っていつも邪魔ばかり。たくさんの楽しいを諦めるきっかけになるし。今だってそう」
かがみさんは、そこでくるりと芝居がかったように回った。受ける雨をもろともせず。
そしてニッコリ笑う。
「ね?まこちゃん。傘持ってる?そういうわけだから私、傘は持ち歩かない主義なんだ」
「そう……なんだね」
その時、雷鳴が頭の中でとどろいたような衝撃があった。
どんなに顔が似ていても、どんなに雰囲気が同じでも、かがみさんはミラさんじゃない。
やっぱり、やっぱりそうだ。そうなんだ。
最初は鏡の世界から出てきてくれたと思った。
別人だとわかっても、それでもやっぱりミラさんだと、どこかはミラさんだと思った。
あるはずと信じてミラさんの面影を探して、多少の違いは目をつむって。
そうすれば、鏡の世界でも、外の世界でも一緒だと思ったのに。
遠くから、再び車の音が、排気音とタイヤの音が聞こえる。
その音を聞きながら、私は目の前の女をじっと見る。
「~~~~」
女が何かを喋っている。
それを見ながら僕は、雨に濡れてクリアになった頭の中で時間を数えた。
いち、に、さん……
わたしは思いっきり、女を車道につき……




