彼女との違い
「なんにも。その…明日のテストのことを考えてたの」
「学生さんは大変だなあ」
大変、大変ケッコー。とかがみさんは変な歌を口ずさむ。
「ところで、かがみさんって何をしている人なんですか?」
「ひみつー。大人の女は不思議がいっぱいなんだよ」
そう言うかがみさんは僕の前を歩く。
車道と歩道の間の段差をやじろべえのようにフラフラ歩いているせいでどんな顔をしているかわからない。
「そこ、危なくないですか?歩道を歩きましょうよ」
「きみは意外にいい子ちゃんだよね。火遊びとかしないタイプって言われたことない?」
「初めて言われましたけど」
夏の日差しこそないけれど、じめじめとした湿度の曇り空。雨が降るか、降らないかのちょうど境界線の空。
なんだか僕の心の中を映しているみたいだ。
現実の世界にも、鏡の世界にも行けるけど、現状はグレーゾーン。
「なんだかひと雨来そうだねえ。賭けない?私は降らないに賭けるよ」
「むちゃくちゃですよね。その発言」
「降る…と思わせて降らない方に賭ける。それで勝つのが超かっこよくない?」
「まったく意味がわかりません」
青いミニバンがこちらに走ってくるのを見て、かがみさんはちょいとジャンプをして歩道に降り立った。
「私が勝ったら、鏡の世界に連れて行ってよ」
「それはイヤです」
かがみさんとミラさんを会わせると、何か良くないことが起きる気がする。まったく根拠がないけど。
「鏡の世界ってやつに行ってみたかったんになあ。…じゃあさ、鏡の世界に入るとこを見せてよ。オネガーイ!」
「それも嫌です」
鏡の世界に入るのは、誰にも見られてはいけない。それが僕のルールだ。
理由なんてなく、そういうルールなんだ。
自分ルール。そもそも僕意外に鏡の世界に入る人もいないし、鏡の世界関連のことは自分ルールが全てなんだけど。
「じゃあ、鏡の世界に連れて行かないなら、あのミニバンに轢かれちゃおうかな」
「は……??」
驚いて僕はかがみさんの顔を凝視した。
いつもの笑顔じゃなく無表情な目…
ぽつぽつと雨が降り始めた。




