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鏡のカノジョへ贈る  作者: 藤崎403


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6/6

かがみさんという変人

かがみさんは変な人です。

初めて会ってから2週間ほどの観察結果。

少なくとも高校は卒業していそうなのに、朝の通学路で。僕の通う学校の廊下で。放課後の通学路で。

ふらっと出てくる。完全に神出鬼没…

「ね!ね!あそこの体育館で卓球ができるらしいよ。やってみない?」

少し癖のある髪をくりくりと揺らして現れたのは、よく晴れた下校時の通学路。

「キミ、今はひとり?なら下校時の遊びといこうじゃないか」

「僕は運動はちょっと…」

唐突に始まる卓球大会。そして。

「くっ、まこちゃんは卓球が上手いね…」

「いえ、体育はいつも2なんですけど。5段階評価で」

ある時はオーブンを背負ってお昼に現れた。

「まこちゃん、今からクッキー焼かない?材料もあるよ。電源だけちょうだい!」

「それ、何キロあるんですか?」

教室のコンセントを使ってオーブンを余熱しつつ、生地をこねる。

クッキーは美味しかった。美味しかったのだけど。

「これなんですか?豚?」

「犬だが?」

どう見ても豚だが犬らしい。大きすぎる鼻、大きすぎる耳のクッキー。

「こらあ!お前ら何してる!!!」

かがみさんが再びオーブンを背負って窓から去るのと、担任の先生が教室に入ってくるのはほぼ同時だった。

関係者として僕が職員室に呼び出された。なんで?

でも、なんだか……なんだか……

楽しい…の?


「最近、あなたはいつも疲れてるみたい。大丈夫?」

腕の中でミラさんが尋ねる。

「大丈夫だよ。ミラさん。大丈夫。ミラさんの顔を見たら全部吹き飛んじゃった」

もう一度ギュッとミラさんを抱きしめる。ついでに匂いを嗅ぐ。

不思議な匂い。安心する。

「ミラさんは……」

僕自身が何を言おうとしていたのか、わからなくなる。

ミラさんの胸に包まれて、ここは天国かもしれない。

「ずいぶん甘えんぼさんだね。よしよし。」

しばし流れる心地よい声、心地よいぬくもりと手。

「ねえねえ!今日もお話しよ。外の世界には雪が降ったり、雨が降ったりするんでしょう?空から水が降ってくるなんて不思議だね」鏡の世界では、晴れしかない。朝昼夜の移り変わりはあるが雲がない。必然的に、雨や雪は無い。

温度もほぼ一定で温かい。

鏡の世界は動きが無い。

「雨なんて、そんなにいいものじゃないよ。服が濡れて風邪をひいたり、僕の髪も変になっちゃう」

残念なことに僕は癖っ毛だ。湿気は大敵。どうあっても思い通りにならない髪のせいで、肩の少し上あたりまでしか伸ばせられない。

「それでも見て見たいな。雪って言うのも。冷たいのよね?それで世界も冷たくなって。それって素敵ね」

ミラさんの見上げた空はやはり青色。

澄み切った青空。

「ミラさんが見たいなら、僕も好きになりたいなあ」

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