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ぼーいずどんとだい  作者: ゲロブス
第十一章 兄弟
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食えないヤツ

ある日の休日、水野流は街のショッピングモールの一角にある、ご贔屓にしてるカフェでブラックコーヒーを嗜みながら、久しぶりの休息を満喫していた。

しかし、それは束の間のひとときに終わった。

「アレ?もしかして流さん!?」

聞き覚えのある声に振り返ると、湯気が立ち昇るコーヒーカップを手にした、吉見由香里の姿があった。流は見なかったことにして、澄ました様子でコーヒーを一口、控えめに啜った。由香里は無遠慮に彼のテーブルの向かい側に座った。

「そんな『ゲッ!ウザいのに会っちまったな…。とりあえず一旦シカトしておくか…』みたいな顔しないでくださいよぉ〜!」

「…エスパーか?君」

由香里はヒヒッと笑いながら、コーヒーに大量の砂糖を入れてかき混ぜると、白目を向きながらズズズと音を立てて、ホットコーヒーを一気飲みした。

「あっ流さん、このあと予定あります?よければ私と一緒に店を冷やか…見回りに行きませんかぁ?」

「…そう言ってくるだろうと思ったよ。どうせ断ってもついてくるんだろ?君は」

流は諦観に満ちた顔でそう呟くと、コーヒーを飲み干した。




「…それで?まずはどこへ行くんだ?君が決めてくれよ」

「そーですね〜!ゲーセンとかどうですか?」

「やかましいところは嫌いだね」

「じゃあペットショップとか!」

「遠慮しておくよ、匂うからな」

「そんならCDショップとかどうですかぁ?」

「勘弁してくれ、最近の曲は聴いてると頭が痛くなって…」

「もォ〜!じゃあどこならいいんですか〜!?」

「そ、そうだな…」




その場しのぎに流が選んだのは映画館だった。理由は至極単純、映画を鑑賞してる間は無駄な会話をしなくて済むからである。

由香里は上映中の作品のリストを、まじまじと眺めながら言った。

「これとかどうですか?『鼻クソみたいな恋をした』!前に原作読んだことありますよ!」

「ほぉ…それで面白いのか?」

「あー最後主人公死にますよ」

「面白いかどうか聞いてるのであってネタバレは求めてないんだが」

「あ、すいません…!ちょっとトイレ行って来ますんで、流さん選んでてください!」

由香里が去った途端、流の耳元で誰かが囁いた。

「…今日は2人で映画デートぉ?」

「君は…!」

気が付くと、いつもの微笑を浮かべながら、荒井奈美が隣に立っていた。

「妬いちゃうなぁ、私」

「…おい、まさかとは思うが彼女に変なマネはするなよ」

流がそう釘を刺すと、奈美は眼を反らして言った。

「やだぁ、そんなことするわけないじゃん♪」

「まっっったく信用出来ん。デートだって?さっき鉢合わせして、仕方なく付き合わされてるだけだ」

「ふ〜ん、じゃあ君にとって私のがあの子より上ってコト?」

「何?別に上も下も無…」

奈美は突然、口元に手を当てると、周囲に呼びかけるように大声を発した。

「あ〜〜!!蛾男だ〜!!蛾男がいる〜!!」

「分かった分かった!!そういうことにしといてやる!!だから静かにしろ!」

奈美は満足気に微笑むと、手を小さく振って呟いた。

「…それじゃ精々楽しんできてねぇ♪」

「流さ〜ん、良さげなのありましたか〜?」

声に振り返ると、由香里がこちらへ小走りでやって来るのが見えた。

その一瞬の間に、奈美は忽然と姿を消していた。

「…食えないヤツだな」



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