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ぼーいずどんとだい  作者: ゲロブス
第十章 ファンガール???
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壁に耳あり障子に目あり

昨夜の戦いから一夜明け、水野流は青白い耳にいつものイヤホンを装着しながら、スクールバッグを肩に背負い、通学路をひとり、歩いていた。

何かに勘付いたのか、彼はふと立ち止まったかと思うと、おもむろにイヤホンを外し、ため息をつきながら右腕を変異させると、背後に肘打ちをかました。

その途端、後ろからギャッ、という悲鳴が聞こえた。

振り返ると、鋭いクチバシと爪を持った、巨大なカラスのような姿をした変異者が、地面に倒れて悶絶していた。

上体を起こすと、そいつはヒステリックに叫んだ。

「ちょっと何者よアンタ!?」

「それはこっちのセリフだ。そのリアクションから察するに、ただの腹を空かせた野良変異者かな」

「フン!これでもくらいな!!」

カラス女は流めがけて、翼についた硬質な羽根を、クナイのようにいくつか飛ばして攻撃した。

流はそれを白刃取りのように、右手の指で難なく防いだ。

「ゾォ〜〜!バ、バケモノ…!」

カラス女は分が悪いと判断したのか、高々と飛翔すると、口汚い捨て台詞を吐いて逃げ去った。

「覚えてなさいよ〜!あとで絶対アンタの頭蓋骨に穴空けて、中の脳ミソ全部ついばんであげるからねェ!このゲリグソ野郎ォ〜!」

「品のない奴だな…」

流は呟くと、自身の右腕をじっと眺めた。

「気の所為か…動きがよくなったか?まあいい」

当然気の所為ではないわけだが、彼はそう言い残すと、右手の状態を戻し、再び歩き出した。



その一部始終を、茂みの中から見物している者がいた。

そいつはほくそ笑みながら、心底嬉しそうに言った。

「遂に見つけた…かもぉ♪」




その日、流は帰りのホームルームが終わるやいなや、由香里が声をかけてくる前に光速で教室を飛び出すと、一番乗りで階段を駆け降りた。踊り場に差し掛かったところで、背後から突然呼び止められた。

「…ねぇ」

振り向くと、三つ編みでツインテールの、見知らぬ少女が階段の上から見下ろしていた。

「ちょっと話聞いてくれる?すぐ済むからぁ」




名も知らぬ少女に案内され、屋上に到着するやいなや、流は彼女に冷たい口調で言った。

「それで話ってのは何だ?手短に済ませてくれよ」

「君、蛾男でしょ?」

「なんだ、そんなことか………………え?」

彼は目を丸くさせて、少女に詰め寄った。

「今…なんて言った?」

「だから〜、蛾男なんでしょぉ?」

流は一呼吸置くと、極めて冷静に、ポーカーフェイスで呟いた。

「…何の話だかな?君どうかしてるんじゃないか?」

少女は髪を指に巻きつけながら、ニヤリと笑った。

「とぼけても無駄だよぉ、変身してるとこ見たしぃ」

「何!?どこでっ!?」

「あっ!引っかかったぁ〜♪」

「う゛っ!?」

少女は流の顔をまじまじと見つめながら、勝ち誇った表情で言った。

「まだ半信半疑だったけど…やっぱりそうだったんだぁ〜。ふうん、結構素顔もカッコいいじゃん。安心してよ、誰にも言わないから。私の願いを聞いてくれればねぇ」

「願い…?」

「うん、私と付き合ってほしいんだぁ♪」

「…はぁ?」

彼女の言葉に、流は思わず拍子抜けした。

「私、君のファンなんだよねぇ〜蛾男君」

「………」

マズい状況になったな…。今朝あの変異者と戦ってるところを見られたのか?

それに…あのクズ野郎のファンだと?コイツ一体何者だ?何か狙いがあるのか?それともただのイカレ女か?

流が訝しんでいると、少女は袖口を捲り上げ、誇らしげに腕を見せて来た。

「ほら見て、蛾男のタトゥー。超イカすでしょぉ?」

おそらく後者か…。

「あとここにも…」

そう言って少女はスカートをたくし上げようとした。

「見せんでいい、そんなもん」

流は慌てて彼女を制止すると、冷ややかな笑みを浮かべて言った。

「…フン、僕が蛾男だって?笑えない冗談だな。とても付き合いきれないね、それじゃ」

「あ!待ってよ、蛾男くぅん」

「違うと言ってるだろ」

流が少女を残して一階まで階段を駆け下りると、あろうことか由香里と鉢合わせした。

「あっ流さん!!探しましたよ〜!男子トイレにもいないんですもん!」

流はガックリと肩を落として呟いた。

「結局こうなる運命か…」





2人が校門を出て去って行くのを屋上から見下ろしながら、少女は不敵な笑みを浮かべて言った。

「へぇ〜、ああいう子がタイプなんだぁ♪」


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