パンティ争奪戦
蜘蛛男はハゲ男を見下ろしながら、近所迷惑を顧みずに大声で口上をまくし立てた。
「耳と鼻の穴かっぽじってよく聞けぇ!!俺はかの英雄…蝶男の意志を継ぐ者なり!!その名もスパイダー…」
「うるせぇ!喰らえ!」
ハゲ男はどこからか虫除けスプレーを取り出すと、蜘蛛男の顔面にふりかけた。
「ギャアアア!!目!目ぇぇぇ!!」
蜘蛛男はもがき苦しみながら、庭先に顔面から無様にも落下した。ハゲ男はその隙をついて立ち去ろうとした。しかし、そうは問屋が卸さない。
「あっ!待たんか貴様!この変異…変質者!!」
蜘蛛男がハゲ男目掛けて指を指すと、その指先から糸が放たれ、彼の足首にへばりついた。ハゲ男はたまらず地面に転倒した。蜘蛛男はそのまま彼を自分の元へと手繰り寄せた。
「もう逃げられんぞぉ〜!」
「ゆ…許してくれえ〜!つい出来心で…今回が初めてなんだよ〜!」
ハゲ男は地面でジタバタと暴れながら、泣き言を漏らした。
「嘘をつけ!!お前のあのこなれた動き、どう見ても初犯じゃないだろう!!本当は何回目だ!」
ハゲ男はバツが悪そうに黙り込むと、やがて重い口を開いた。
「ご…5回目です。多分…」
「多分てなんだ。正直に言ってみ?怒らないから。絶対怒らないから。ん?」
「12…15回目です…」
ハゲ男がそう白状すると、蜘蛛男は無言で頷いた。
「…なるほど、よく分かった。お前は『死刑』」
「ヒエ〜〜!勘弁してくださいよぉ〜!コレ(パンティー)あげますから〜!」
「黙れ愚か者!観念しろ!このド悪党が!!」
ハゲ男の絶叫が、夜の街に響き渡った。
永木道徳は、顔を糸で覆われて窒息死した男の死体を見下ろしながら、満足気に呟いた。
「ふう…。これでまた少し世界が平和になったな。そうだ、コイツを元の場所に戻さなくてはな。やれやれ…」
そう言ってハゲ男の死体から、パンティーを奪い返した途端、ガラガラと乱暴な音を立ててベランダの窓が開かれ、中から金属バットを持った、パンチパーマの初老の女性が現れた。
「何だい!?こんな夜遅くに人の家の庭で…ギャアアア!!変異者!?あっ!?それ私のパンティーじゃないか!!」
「エ゛ッッッ!?お、落ち着いてください!これには深いわけが…ぶべえっ」
女性は永木を金属バットで滅多打ちにしながら、彼に罵詈雑言を浴びせた。
「キイーーッ!言い訳するんじゃないよ!このクソ虫けら!最近ここら辺でよく下着が盗まれてたのはアンタの仕業だね!とっととおっ死にな!!」
「こ…殺される…!かくなる上は…とうっ!」
永木は隣家の瓦屋根に糸を発射すると、自身を一瞬にして屋根まで引き寄せて逃亡した。
「コラ!逃げんじゃないよパンティ泥棒!わっ!このハゲ誰!?」
まんまと女性から逃げおおせた永木は、屋根の上で息を荒げながらハンカチで顔の汗を拭っていた。
「ハァ…ヒーローも楽じゃないな…。ン?」
そこで永木はある違和感に気づいた。
「ゲッ!これよく見たらパンティじゃないか…!なんてこった、この俺が下着泥棒になっちまうとは…!」
「…張り切ってるようだね」
不意に、彼の背後で誰かの声が聞こえた。




