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ぼーいずどんとだい  作者: ゲロブス
第八章 苦い過去!!!
55/60

似合いの2人

翌朝。能天気な小鳥の囀りによって、流は暖かい毛布の中で目を覚ました。首を傾けて枕元のデジタル時計を確認すると、薄暗い部屋の中で、9:45の文字が光っていた。

「………」

彼は再び毛布にくるまると、固く瞼を閉じた。しかし、数分もしないうちに目を開けると、何かを決心した様子で重い腰を上げた。

「クソ、仕方ないな…!」




「あっ!流君こっちこっち〜!」

流が待ち合わせ場所の公園に辿り着くと、既に衣子は入口の車止めの上に腰掛けていた。流は息を切らしながら彼女に歩み寄った。

「なんか疲れてない?」

「…さあな、気のせいだろ」

「ねーねー流君、どっか行きたいとこある?」

流はしばらく考え込むと、遠慮がちに言った。

「…せっかく来たんだ、公園でも散歩しないか?金もかから…運動にもなるしな」

「………そだね〜」




その後、2人はだだっ広い公園の、赤茶色のアスファルトで舗装された遊歩道を延々と歩き続けた。彼等の他には、広場の芝生の上で社交ダンスの練習をしてる爺さん以外、誰もいなかった。




社交ダンスジジイが去った頃、衣子が言った。

「そう言えば、流君の待ち受け画面ってアレ?蝶男?」

「ん?ああ…そうさ。この前言った恩人ってのは、実は彼のことでね」

流は在りし日を偲ぶように、遠い目をしながら語った。

「小さい頃は彼のようになりたいと本気で思っていたよ。まあ無理な話だけどな。今となっちゃかつての熱狂ぶりがウソのように、彼の話をするヤツなんてどこにもいないが、僕の中ではずっと…」

「見て!猫!!」

「話聞けよ」

衣子は茂みの中から現れた猫のそばに駆け寄ると、中腰で手を差し出した。

「超カワイ〜♥お手!」

猫はシャーッと歯をむき出しにして、彼女の手を引っ掻いた。

「痛っ……」

「おいおい、大丈…」

「…何すんの」

衣子は右足を振り上げると、猫の頭部をやすやすと踏み砕いた。

猫は身体をビクッと一瞬だけ痙攣させると、ピクリとも動かなくなった。

流れが目を点にしていると、彼に背を向けたまま衣子が言った。

「…あっ!私ったらまたやっちゃった!カッとなるといつもこうなんだよね〜!私猫に嫌われるタイプなのかな?今の…見なかったことにしてくれる?」

そう言って彼女は、いつものあどけない笑顔を彼に向けた。

「………」

流は衣子の反対の方向へと、反射的に走り出した。背後で「ふ〜ん」という声がした途端、彼は背中から腹にかけて、刺すような痛みを覚えた。視線を下に向けると、腹部から鎌のようなものが突き出ていた。その直後、耳元で彼女の声が聞こえた。いつもの甘えたような猫なで声とは違う、ドスの効いた声だった。

「せっかくタイプだから優しくしてあげたのに…たかだか猫一匹殺したくらいで逃げるなんて、マジありえないんだけど。私のこと嫌う奴はみ〜んな嫌い」

鎌が引き抜かれると、流は前のめりに地面へと倒れ込んだ。首を後ろへやると、そこにいたのは黒髪ロングの少女ではなく、カマキリのような姿をした怪人だった。

「変異者…!」

「せ〜か〜い。それじゃ頭だけ切り取ってしばらく部屋に飾っといたげる。別にいいよね?あんた疫病神なんでしょ?死ねばこれ以上人に迷惑かけずに済むんじゃない?」

流は吐血しながらも、這って逃げようとした。衣子はすかさず彼の背中を踏みつけて阻止した。

「やっぱ死ぬのは嫌なんだ〜。蝶男さん助けて〜って呼んでみれば?あっゴメンゴメン、もう死んでるんだっけ、アイツ」

その言葉に、流の中でドス黒い感情が湧き上がった。コイツを殺せるなら、悪魔にでも何にでも魂を売ってやる。そう思った。

その時、衣子の背後でかすかに物音がした。

「…誰?」

振り返ると、樹木の陰から陰毛ヘアーの男が青ざめた顔でこちらを伺っていた。

「はぁ…また来たの?」

「ギクッ…!く、来るな…!」

陰毛はポケットから小さなナイフを取り出すと、震える手でそれを衣子へと向けた。

「何それ?まさかそれで私をどうこうしようとしてたワケ?爆笑〜」

衣子は陰毛を嘲笑いながら、彼に一歩近づいた。

「ち…近づくな〜!それ以上近づくと自殺するぞ〜!!」

「勝手にすれば?」

「うっ…!?」

突然、陰毛がギョッと目を見開いた。

「………?」

不審に思った衣子が彼の視線の先を追うと、奇妙な人物を目撃した。そこにいたのは…。

「え…?蛾男?まさか流く…」

言い終わる前に、蛾男の姿がまるで煙のように、フッと消え去った。

「んっ!?」

「what!?」

2人が取り乱しながら周囲を見渡すと、蛾男はいつの間に陰毛の真後ろに佇んでいた。

「ふ…ふ〜ん、結構素早いじゃん。あれっ?」

突如として衣子の首がスポーンと吹っ飛ぶと、近くのくずかごの中へと見事、落下した

その様子に、陰毛は狂ったようにヘラヘラと笑い出した。

「ははは…!俺助かったのか?ヒャッホー!ざまあみろカマキリ女!おい、そこのヤツ!褒めてつかわす!!ありっ?」

数秒遅れて彼の首も吹っ飛ぶと、再びくずかごの中へと入っていった。



「…はッ!?」

ほどなくして、正気を取り戻した流は、目の前の光景に唖然とした。その容姿は既にただの少年へと戻っている。

「これは…僕が?」

次第に彼の脳内に薄っすらと記憶が蘇って来た。憧れのヒーローを殺した怨敵の姿に変身し、2人を惨殺した記憶が。流は乾いた笑みを浮かべると、小さく言った。

「また…生きのこっちまったか。そして、どうやら思い込みではなかったみたいだな」

彼に発現した能力、それは憎悪する相手の姿に変身出来る力だった。じゃじゃーん。

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