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第3章 ハートブレイカーならぬ壺ブレイカーな男

美味しい晩ごはんを食べたおかげか、ぐっすり眠れた。朝はまだひんやりした季節だから、パジャマの上にローブを羽織って一階へ降りた。イケメンくんはまだ起きていないみたい。布団を頭までかぶって寝息を立てている


「...」スーピー スーピー


お家に朝から誰かがいるのは新鮮な感じだね。昨日はホーンラビットの討伐で結構疲れたでしょう。もう少し寝かせてあげよう。


私はキッチンへ向かって、カーテンを開けると軽快な朝日が窓から優しく差し込んできた。今日もいい天気になりそうね。


オーブンを温めて、ケトルで水を沸かす。昨日オーブンの余熱で発酵させたパンの生地を冷蔵庫から取り出し、熱々なオーブン・イン。その間、スライスしたベーコンをフライパンで焼いてふわとろなスクランブルエッグも作る。残念ながらこの国ではコーヒー豆が普及していない。代わりに自家製のたんぽぽコーヒーを入れたけど、これもこれで美味しいと思う。


すると、サラサラ金髪がアホ毛のような寝癖してるイケメンくんが布団から出てきた。とろんとした顔でぐるぐると見回していた。ひよこなイケメンくん、癒し。


「おはよう」


「!!!」ギク!


一々反応が楽しいな。


「ごめん、そんなに驚かせた?もうちょっと寝る?」


フルフルフル


「じゃあ、布団を畳んで、テーブルと椅子を元に戻してくれる? あとちょっとでパン、焼けると思う。」



コク!


いい返事だ!無言だけど!


テーブルにできた朝ごはんを運んで一緒に食べた。カリッ、ふわ〜〜とした食感とほんのりバターの香り。焼きたてパン最高!


「朝ごはん終わったら、ギルドへ行こうね。」


コクコク モグモグモグ


キラキラ目で美味しそうに食べているイケメンくん、眼福。拾ってよかった。


ーーー


あれから30分後。


壺の破片が大量に散らばった地面。その真ん中に立つ、うちの問題児イケメンを見て思った。


「何でこんなの拾ったんだろ私」


ーーー


家を出るまでは問題なかったのに。少し変わった男だけど、基本無害な印象だった。皿洗いを彼に任せて、支度をした後に一緒に家を出た。


すれ違った知り合いの人たちに無言だけど丁寧に人懐っこい笑顔と会釈もしてくれた。直ぐに近所のおばちゃん達にチヤホヤされるようになった。


そんなイケメンくんがまさかの壺破壊癖な人だとは、誰もが思わなかっただろう。


最初は、単なる事故だと思った。


パン屋の店長に新商品のミートフロスパンの話で盛り上がってた時にーー


パリーン!!!


高い音がした方向へ目を向けると、先ほどまで隣にいた爽やかイケメンくんが無表情のまま、パン屋の入り口に置いてあった壺の破片の前に立っていた。


「大丈夫?!っすみません、うちの子が」


「いやいや大丈夫だよミリアちゃん。それより、その坊ちゃん大丈夫か?怪我はない?」


イケメンくんに怪我がないことを確認して、パン屋の店長に謝った。幸い、壺は貴重なものではないそうでホッとした。


「何かあったの?手が滑った?」


「...」コク フリフリ


無表情なイケメンくんがちょっと怖いけど、直ぐに柔らかい目付きに戻って、ちょっと困った表情になった。手をあちこちに動かして何かを伝えようとしたけど、うーんごめん、意味さっぱりだわ。


その時点で気づけよ自分!と今振り返ったら思うけど、その彼の無邪気な顔に私は弱かった。


ーーー


その結果、今壺の露店が大惨事の現場となった。


不意打ちだとしても、マジで一瞬だった。スピードに自信のある私でも、止めるすべがなかった。イケメンくんがいきなりすーと表情を消して、並んだ壺に向かって、素手でかまいたちを起こした。


何?何で?どうしてこうなった?


壺露店のオーナーが泣いてるよ?


謝罪と賠償の約束をして、問題児壺破壊鬼くんに目を光らせながら、やっとギルドに着いた。あーやば疲れた。


ーーー


ギルドへ入って受付の窓口で番号札を取る。思ったより遅く着いたが、待っている順番がそんなに長くなかった。この季節だと、魔の森も中級ダンジョンもオフシーズン。ギルドで用がある冒険者は少ないかも。空いてる席で問題児くんと一緒に座った。


「...」


「壺壊しちゃうのダメ。わかった?」


「...」シュン


ーー可愛く惚けてもダメなことはダメだからな。私、二度と騙されないぞ。


唇を軽く噛んで眉を落としてるアンニュイ儚げなイケメンくんの破壊力と言ったら。周囲の人たちから「キューン……」って音が聞こえた気がする。

罪悪感で蹴られそうになるけど、ここは心を鬼にしないと。

「人のものを壊しちゃダメ。君がもし大切なものが他人に壊されたら、どんな気持ち?何か壊す理由があるだろけど、ここは我慢して。あとで壺を沢山買ってあげるから、それなら好きに壊していいよ」


「...」ウル コク


叱るつもりだったのに、私ってコイツに甘すぎるな。きっとあの顔のせいだ。イケメンくん、恐るべし。

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