第1話 ボーイミーツガールは魔の森の中で
はじめての投稿です!お手柔らかに〜よろしくお願いします。
うん。まだいるね。
4時間前ここを通った時もそこにいた。ポツンと立って動かない男。顔はそこそこ整っているけど魔の森で村人格好の装備なしで、最初は人形か魔獣の罠かって思ったよ。
でも、魔力感知しても……間違いなく“人間”なんだよね。
どうしよう。
どこかの村から迷ってきた頭かわいそうな者なの?でもあの顔だとどこかの追放された王貴族もおかしくない。自分のことでもう精一杯なのに、面倒ごとに関わりたくないなー
あーだこーだする間に目が合ってしまった。
やたらとキラキラしている。眩しい。
『声をかけてくれー』のがめっちゃ伝わる。
「……あの、君。大丈夫? 何か困ってる? 迷子?」
「...」コクコク、フリフリ
?なるほど、わからない。
「...」
「...もしかして、喋れない?」
「...」コクコク、フリフリ
はい、コミュニケーション成り立たないな。マジでどうしよう。
彼をもう一度近くから観察してみるとやっぱりいい顔している。森の木漏れ日を反射させるさらさらな金髪に明るい空色の瞳。大人になる一歩前の17-18歳ぐらいに見えるが、凛々しい顔立ちと堂々とした佇まいはそこら辺の村人少年からほど遠い印象。
……なんか、危ないかもしれない。そんな本能の声が耳の奥でささやいてる。
そんな遠くない所から唸り声が響いて、我に返った。装備なしの彼はここだと危険。
まずは安全な所へ連れ戻そう。
「...ここじゃ危ない。一緒に来て。」と言い彼の手を取って歩き出した。
幸い、周りにC級以上の魔獣がいないようだけど、油断は禁物。
「...」
固まっていた彼の手が少しずつ力を抜いて、私の手を握り返したような感覚がするけど、周囲へ警戒しながら森を出る最短のルートを思い出すのに精一杯だった。
歩いて2時間後、森の入り口がそろそろ見える所にたどり着いた。もうここになると、F級魔獣のスライムとホーンラビットしか出ないので、一度も魔獣に居合わせてなかった私たちは運が良かった。
今の私はというと、大きな石に腰をかけて休憩しながらホーンラビット(x220匹目)と少年の戦いをぼーと見守り中。
…コイツ、やっぱり変だよ。
ここまでの道中で、普段もじゃもじゃ出てくる魔獣に出くわさなかったのに、コイツが謎の宝箱を3つも見つけたんだけど?!宝箱、誰が置いた?何のために?
最初は、急に立ち止まった彼が用を足したいかなと思ったよ。
「トイレ行きたくなった?」
「!!!」フリフリフリフリフリフリ
面白い反応に思わず笑っちゃった。すると、顔真っ赤な彼が少し離れて近くにあった切り株をぐいっとひっくり返したら...あら、ふしぎ!宝箱が出てきた!
「...」ほめてほめて!
と彼の目が言っているけど、一瞬私とても変な顔をしちまった自信あるわ。
「...ちょっとまって。何であんなところに宝箱が?!」
しかも開けて見たら銅貨数枚しか入っていない。マジでなに?
その後、彼が岩の隙間と木のうろから次々と宝箱を見つけ出したけど中身がりんご1個とサビついた鍵、何とも言えないしょぼい物ばかりで、むしろ箱の方が高価そうなんじゃない?と思った私は悪くない。
(精神的に)疲れてきたので、先程休憩したいと言ったら、少年はコクコクと頷いたけど、結局自分は休憩せず拾った木の枝でひたすらホーンラビットを狩りはじめた。
最初は1匹を倒すのに5分ほど掛かったのに、それがどんどん早くなって、今じゃ一撃で7〜10匹を倒せる。無装備の枝一本でだよ?先の宝箱を見つけ出すのも凄まじいスキルお持ちのようなのに、なんだかほっとけない残念な子にしか見えない。
例えば、彼は的を倒した度に笑顔をしながら木の枝を頭の上に高く持ち上げポーズを取っている。なにそれかわいい。
黙々と機械的にホーンラビットを倒してはポーズ、倒してはポーズ。あの勝利ポーズって毎回必要?と思ったけど、イケメンは何をやってもイケメン。
ホーンラビットの死骸が小さい山になってきている。これを全部持って帰るの?というかコイツ疲れてないのか?若いっていいよね。
そろそろ行かないと日が暮れる。採取依頼された薬草と報告をギルドへ渡さなきゃし、宿もとらなきゃし。ハー...やること多いな。ぶつぶつと文句言いながらホーンラビットの山をアイテム収納付きのバッグにしめた。
でも、そのキラキラした目を見たら何だか悪くない気がしてきた。
「....今更だけど...私、ミリアというの。リエル町で薬草採取担当のC級冒険者をやっている。よろしくね」
「...」返事は帰ってこなかったけど、多分世界一のイケメンスマイルアタックをくらった。私を殺す気か。
しゃべらない訳ありそうなイケメンを拾ったから責任はとるよ。