第1話:転生
アンフィニ祐です。
この作品は個人で作ってて、外伝作品ではあるんですが本編に深く関わる作品となります。
「俺達はお前を見送ることしか出来ないのか?」
「命は尊く、儚いものだ。俺はきっとお前たちと会うことは二度と無い。つまりこれで本当にサヨナラだ。」
そうして彼がその言葉を言い終えたその刹那、体が光り輝き、大量の光の粒子となって散った。
「馬鹿やろぉぉぉぉぉぉぉ‼」
彼の相棒の咆哮とも言える叫びが木霊するのだった。
その瞬間、俺の感覚は不思議なものだった。体の感触がある。一体どういうことなんだ?意味がわからない。何が起こったのかを理解するには少しかかった。起きるとそこは――――
のどかな草原だったのだから。
俺はそこから歩いていた。腰には相棒、一透が打った刀がある。鬼神刀は・・・流石に無いか。
「ここは・・・どこなんだ?」
その瞬間、俺の体が敵がいるという信号を出す。
よく見ると人が魔物に襲われているではないか。
「絶流斬伍式、電撃斬!」
爆速でその魔物へ一直線に向かう。そしてその魔物を叩き切る。
斬った後、刀をしまう。
「貴方は・・・」
ふと振り返ってみると頭には獣の耳らしきものがある。
これは・・・佐奈の実験品とかじゃあ・・・ないよな?
「俺の名前か?」
それに首を縦に振る。
だが鬼神涼なんて名前はこの世界では通じ無さそうだ。何にすればいいんだろうか・・・その瞬間。
アドラードの姓を名乗れ。
頭にいきなり直接流し込まれる情報に頭を抱える。
なんなんだこれは・・・!
「ぐっ・・・!」
「大丈夫ですか⁉」
「ああ・・・大丈夫だ。すこしキツめの頭痛が来ただけだ。」
なんだったんだろう。あれは。
「俺の名前はリョウ・アドラードだ。よろしく頼む。」
「私はサクラ・ルベライトです。」
サクラ・・・って桜だよな。多分。
「何をしていたんだ?」
「私は街に向かっていたのですが・・・何せ武器がなくて・・・」
嘘だろう。
いくらなんでも村であってもそんな布一枚のボロボロの服を着ているわけがない。手首に一周して痣がある。捕まっていたのか?
ツッコむのはやめておくか。
下手にツッコんでPTSD(心的外傷後ストレス傷害)になってもらっちゃ困るしな。
「そうなのか。」
「貴方は・・・?」
「俺は最近ちょっと遠く離れた場所から来てな。暇してたんだ。どうだ?一緒に旅をしないか?」
「・・・いいんですか?」
「俺は一般的な常識は知らないんだ。そういう常識が入って来る環境じゃなかったもんでね。」
すると今度は人間が現れる。
「・・・テメェなにもんだ?」
「俺か?・・・そういうアンタ等は何をしようとしているんだ?」
サクラがブルブルと震えている。
奴隷商人か?斧を持っている。
「俺等はそこの女に用があるんだ。邪魔をするんなら殺させてもらうぜ?」
「残念だがもう一緒に旅をするって約束ができてしまったもんでね。渡せないな。」
「それじゃあ・・・死ね。」
矢が飛翔してくる。
「絶流斬漆式。無化。」
小声でそれを詠唱して全てを切り落とす。その間に走って間を詰めてくる。
「いい判断だ。だが・・・鈍い。」
「小僧が何を言って・・・」
手刀を首に当てて気絶させる。
やはり鈍い。
「走るぞ。」
「え?」
手を引いて走る。
ただ、やせ細っているのでそれほど速くは走れない。
「仕方ないか。ほら。」
おんぶするようにポーズを取る。
「え。」
「早く。」
「わっ分かりました。」
そうしておぶると空高くジャンプする。
「すごい・・・!」
「地元ではそこそこの実力だったんだ。これくらいはできる。」
「街はあそこにあるようだな。高いと何かと便利だな。」
そして着地すると走って街へ向かうのであった。
街の入口まで来て発覚した。
「通行手形・・・だと⁉」
「いるっぽいですね。」
「嘘だろ・・・⁉」
門へ行ってみる。
「あのー。通行手形ってどうやって入手するんでしょう。」
「貴様。持ってないのか?」
「ええ・・・」
「金は?」
「金が流通していなかった環境で過ごしてまして。」
「そうか・・・そうだな。いいことを教えてやろう。お前には難しいかもしれんがすぐそこの森に居る魔物たちを12匹狩って来てみろ。そうだな・・・1匹10kgほどでいい。一人なら10匹でいいんだが奴隷が居るようだし2匹増える。」
「計120kg・・・分かりました。行ってきます。」
「死ぬなよ?小僧はまだまだ若いんだ。」
「ええ!」
そのまま森へ潜る。
「・・・いいんですか?親方。」
「未来ある子供には是非この街へ入ってもらいたいんだ。だがタダで入れると上が黙ってないだろうからな。」
「ですね。」
門番の部下が苦笑する。
「ものは持てるか?なに、1匹だけだ。」
「できます!」
「敬語口調でなくてもタメで構わない。」
「・・・分かり・・・分かったわ。」
「美女はそれでいいんだ。」
ボン!と真っ赤になる。
そんな大したことは言ってないと思うんだがな。
「絶流斬参式。」
小声でそう言って12匹を斬り飛ばす。
「よし。こんなもんかな。」
そのまますべてを門番へ持っていく。
「よくこんな短時間で終わらせたなぁ。」
狩った魔物を持っていく。
「慣れれば楽ですよ。」
「育ち盛りはいいな。・・・それとそれだけ丁寧ということは奴隷じゃないな?その半獣人。」
「そうですね。」
「ギルドにお前らを登録したりある程度の資金も用意してょうがいいだろう。それならあと3匹は必要になる。もう街には入れるんだが。そのままでは困ることもあるだろ。」
「分かりました。飯用の3匹です。」
「もう狩ってるのか。」
「ご飯は必要でしょう?」
「まあな。」
「おじさん。名前は?」
「俺か?俺はカイト・ヒューズだ。」
「俺はリョウ・アドラード。また会いましょう。」
「きっとすぐ会える。」
「だと嬉しいですが。」
「ほら、行って来い!」
「ええ!」
苦笑する。この人は父親みたいな人だな。
背中をバンと叩かれて街へ入る。
「これは・・・」
「広い・・・」
そこは絵でしか見たことのない中世の街だった。そんな非現実的な街を前にして一瞬迷うが歩を進めていく。
「えーっとギルド・・・だったな。」
「ギルドなら突き当りを右に行って少し歩いたらでっかい建物があるからそれだ。」
「分かった。」
「それと収納魔法を使っておけ。」
「そんなのがあるのか。」
「ああ。」
そうして収納魔法の方法を教えてもらう。スキルパネルなどの能力もその時に入手した。
「なぜこの収納魔法を教えてくれたんだ?」
「あったほうが便利なのもあるし、その刀。今は出さないほうがいいからな。ギルドに行けば分かる。」
「そうなのか。とにかく何から何まで助かる。」
「これが俺の仕事だからな。」
「それじゃあ行こう。サクラ。」
「え?」
俺はサクラの手を引いて歩くのだった。
リョウの異世界生活が今、始まる・・・!