未定
中学生と言ったら、それはもう青春真っ最中の頃だ。
友情、恋愛、まさに漫画みたいに思うがままに出来る。
きっと俺が大人になったら、この瞬間に戻りたくなるのだろう。
友情と恋。同じであって驚くほど全くの別物。
友情に恋は無いし、恋に友情はない。
ーーーよって、俺と彼女はどちらでもなく、どちらでもあるのだ。
「やっほー、葵。」
「やっほー!おはよ!!」
俺が声を掛けると、葵は元気よく返事をする。
やっほーとおはよーって同じ挨拶だろうがい!
朝からというのに相変わらず纏ってる活気がすごいな。
隣の席に座ると、葵のシャンプーのアロマの匂いが鼻をくすぐる。
「ねぇねぇ、英語のノートの評価どうだった?」
ちょんちょん、嬉々とした声を上げながら葵が俺の肩を突く。
おおこれか、机のロッカーの底にポツリと落ちている
英語のノートを見つける。昨日俺らが帰った後に先生が配ったのだろう。
ーーーさてはこいつ、課題の評価でマウントを取る気だな!
俺の直感がそれ以外あり得ないと瞬時に結論を叩き出す。
むしろこっちがやってやる!
「Bだった、プラスでプリントも提出したのにさ〜」
「ふふ残念〜私なんもやってないのにB+だった!いいでしょ!!」
あえて最初は葵に嘘をつく。なるべく自然な感じに。
そんでもって
「あれ〜、見間違えてた〜A+だったわ」
「はぁ!?見間違える訳ないでしょ!!ぶっばすよ!」
煽り散らかす。これこそ我が流儀。騙される方が悪い。
だからちょっと殴るのはお勘弁していただいて。
一旦落ち着こうではないか、話せば分かる!
「いーだ!」
「痛い!、痛い!、痛いから。」
耳を指で思いっきり摘んでくる。
あまりの痛さに俺はすぐギブアップする。暴力反対!
このくそ女がまったく。一ミリも躊躇すらしてねぇ。
「あんたの昨日の塾の点数は何点だったけな〜?」
「あぁうるさーい!数学と社会では俺に負けてるくせにー!」
今度は葵がわざとらしく嘲笑う。
俺は耳を抑えて、何も聴こえてないフリをしてやった。
「負け惜しみじゃん!はいださ〜い。」
「ノー勉の俺に勝てないは誰かな〜」
次に何を言うかなんてもう百億年前から決まっている。
息を大きく吸って、俺は葵にはっきりと言ってやる。
「「 バカはお前!! 」」
セリフが重なる。一音一句すらぴったしに。
「ふふ」
「ははは」
思わず二人で笑ってしまった。
お互いに顔を合わせて涙が滲むくらい笑った。
よりにもよって、この言葉でハモってしまうのが俺達らしい。
こんなしょうもない馬鹿も良いところの些細な日常が
ーーー俺と彼女の幸せな〝恋する友情〟だった。
クリスマスだろうと、
「クリスマス私と入れて良かったねー?」
「は!お前こそよったな!今年はぼっちじゃなくて!」
「残念、私女友達に誘われてます〜」
「くっそお、裏切りもんがぁ!」
お正月だろうと、
「お前栗きんとんばっか食うな!!他のおせちも食べろ!」
「だって、私これしか食べれないもーん。無理無理〜」
「じゃあ葵のだーいすきなかもぼこは全部俺が食べるからな〜?」
「はぁあ!?私も食べたいー!!」
バレンタインだろうと、
「頼む葵!情けでチョコくれ!ゼロは嫌なんだ!」
「も〜仕方ないな〜、今回は特別だよー?」
「よっしゃあああああああああああ」
「返しは期待に期待してるからね?」
「oh…ガンバリマス」
俺と彼女は二人で一人。そう言えちゃうくらい、
お互いに一緒にいるだけで最高に楽しくてたまらない。
これが友情なのか恋なのか分からない。
けど、彼女だからこそ、そうなんだと俺は思う。
俺は俺で、葵は葵なんだから。そこに壁は成し得ない。
春だろうが夏だろうが秋だろうが冬だろうが
どんだけ世界が踊り回っても、
ーーー俺と彼女の仲は変わらない。
念入りに髪型が崩れてないか確認して、教室へと一歩踏み入れる。
窓側から三番目の、日光が照らす席。彼女の席へ。足を動かす。
不思議なことに、まだ声も掛けてないのに笑っちゃいそうになる。
彼女と会えることが嬉し過ぎてどうにかなっちゃいそうだ。
俺は必死にニヤつきを抑えて、平常を装っていつもの一言を口にするーー
「やっほー、葵。」
「やっほー、おはよ!」
だからやっほーとおはよはどっちも挨拶だって、笑。
今日も今日とて、彼女と甘い〝恋する友情〟を送るのだった。




