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疲れた時、ちょっと笑いたい時に読んでいただけたら嬉しい作品達

自称 妄想部 

作者: はやはや

みなさんは、どんな部活に入っていましたか?

 私は椅子に座ってぼんやりしている。

 今は合奏中。

 私のパートは今、休みの区間だ。


 この中学は全員、強制的に部活に入らなければならなかった。

 宮野鈴菜みやのすずなは帰宅部希望だったのに、入学してからその事実を知った。

 ショックのあまり、しばらく頭がフリーズした。


 で、消去法で部活を選んだ。運動部はもともと選択肢にすらなかった。だから、文化部の中で消去法をした。


――放送部 朝や掃除の時間、音楽を流さなきゃいけない。それに運動会で司会進行みたいなことするのは嫌だ。

 

 却下。


――家庭科部 地味だし、特に活動ないんじゃない?

いいかも……と思ったところで、家庭科部だった、幼なじみのお姉さんから聞いた話を思い出す。

 文化祭で作品展示があるから、いろいろ作っておかなきゃいけないんだよー。

 そんなの面倒だ。


 却下。


――書道部 字なんて読めりゃいいじゃん。わざわざ放課後にすることじゃない。


 却下。


 という具合にして残ったのが、吹奏楽部だった。

 吹奏楽もパート練習や合奏、文化祭での演奏、といろいろ忙しい。

 それでも、他の却下した部活との違いは、その他大勢に紛れることができる、ということだった。


 鈴菜の担当楽器はクラリネット。先輩を合わせて、八人いる。だから、鈴菜が音を出していなくてもバレない。


 周りを見れば、みんな真剣な表情で楽譜を追い、時々顧問の指揮を見ている。

 どうして、そんなに真剣になれるんだろ?

 鈴菜には理解不能である。

 あ、そろそろ音出さなきゃ。

 そう思い、楽器を口に咥える。


 それでも、鈴菜の頭の中では、こんなこと起きないかな? 妄想が止まらない。


 例えば、


 トロンボーンの子が、U字型の管の部分をスライドさせた時、勢い余って管が抜け、前にいるユーフォニュームの子に直撃しないかな


 とか


 ホルン吹いている子が、勢いよく吹きすぎて、いきなりホルモンが一直線に伸びないかな


 とか


 コントラバスの子が、いきなりそれをバイオリンのように掲げて演奏を始めないかな


 とか


 複数の楽器を掛け持ちしているパーカッションの子が、担当の楽器を忘れていて、変なタイミングでそれを鳴らさないかな


 とか


 次々妄想が出てくる。たまに忍び笑いすることもある。


 チューバの子が、いきなりバランスを崩して、チューバがひっくり返り、前にいるサックスの子をなぎ倒さないかな


 という妄想が浮かんだところで、鈴菜の音を出す所がきた。笑いを堪えながら吹く。

 すると、クラリネット特有の〝ぴぃっ〟という間抜けな、失敗音が高らかに響いた。


 そうだ忘れてた。吹いてるふりだけすればいいんだった……


 それ以降、鈴菜は楽器を咥えたまま妄想を続けた。


 こんな風に鈴菜は、三年間吹奏楽部に所属し、楽器の腕を上げるのではなく、妄想を鍛え上げたのだった。

恐るべし、妄想部。

読んでいただき、ありがとうございました!

鈴菜は中学時代の私自身です 笑

私も吹奏楽部に所属していましたが、妄想部でした。

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