庭で
その日のうちに、ツェツェリアは見つかったと発表された。が、詳細は伏せられた。
「あのクソジジイが残念がる顔を拝めないのが残念だね」
珍しく、レイモンドの口が悪い。
機嫌良さげにセザールの部下に剣術を教えて貰いながら、意気揚々とローランド老公のへの不満をぶち撒けている。よほど、腹に色々溜まっていたのだろう。
ツェツェリアはそれを眺めながら、セラと今後のことを話し合った。
「程なくして、陛下から呼び出しがかかるでしょう。この事態を収集する為の聞き取りが行われます」
何をどう話すのか?と言うことね。話し方を一緒に考えてくれるのだろう。
「教会で倒れて、マッケーニ侯爵家にお世話になったことは、話すべきでしょうか?拉致されて、貧民街からルーディに助けられことは?その後、ローランド公邸宅で軟禁されたことはどうしましょう。陛下はそのうちのどれを知ってらっしゃるのでしょうか?」
剣術の手を止めて汗を拭いていたレイモンドが口を挟む。
「マッケーニ邸にお世話になったことは陛下はご存知ない。正確に言えば、ローランド老公、お祖父様も知らない。知っているのは僕とそして、姉さんを拉致した侍女、ルーにぃ、王女様だけだな。まあ、ここにいるメンバーは姉さんか喋ったから知ってるけど」
レイモンドはカラカラ揶揄うように笑いながら、もう一回と、セザールの部下に相手を頼んだ。
「なら、マッケーニ侯の名前は出さずに、親切な方に部屋を借りたことと、侍女に攫われて殺されたそうになったこと、ローランド老公爵邸に軟禁されたことを伝えれば良いのでは?マッケーニ侯と直接会われたわけではなく、住み込みの使用人に助けられたのでしょう?だから、その方は奥様が皆が探しているツェツェリア様と気が付かなかったのですから。そうすれば、マッケーニ侯へは迷惑をかけることはありませんわよ。」
「まあ、流石ですわ」
私の伝え方だとグランツのことを住み込みの使用人と思ったのね。確かにこの伝え方なら、グランツの存在を陛下へ伝えないで済む。彼の存在を隠し通せるわ。
「マリアンヌ穣達はどうなったのでしょうか?」
私が見つかったが、彼女たちには令嬢達殺害の容疑もかかっている。釈放とはならないだろ。
「変わらず、貴賓牢に居ますよ。ただ、奥様が先程の話しをすれば、マリアンヌ穣は無罪になる可能性が出ますわ」
「無罪になればマリアンヌ穣は?」
「婚外子扱いの彼女が、王太子妃になれる可能性があるのかと、聞いていらっしゃるのでございましょうか?なら、答えは『民意』にです」
「民意?」
「平時ならともかく、このような時は民意が大事にされますからねぇ。平民に落とされたルーズベルト公爵夫人の復権を願う嘆願書が集まりつつありますし、ルーズベルト夫人が貴族に返り咲けるかどうかが鍵になりますわね。後はマリアンヌ様がどれだけ民に慕われているか、でしょうか」
確かに、ルーズベルト夫人はルーズベルト公の領地は同然ながら、貧民街な住民を含めた王都民からも評判が良かった。娘のマクレーン夫人の評判もいいけど、マクレーン侯爵家がルーズベルト公爵家の領地全てを取り仕切ることは流石にない。それだと、マクレーン侯爵家が大きくなりすぎるから。なら、分家の筆頭がその座の大半を引き継ぐ可能性が出る。
領民のほとんどはそれを危惧しているのね。そして、ルーズベルト公爵家から慈善活動という名目で沢山の穏健を受けていた王都民も...
「ルーズベルト夫人の影響力はそれほどだったのですか?」
ツェツェリアの問いにセラは大きく頷き、懐かしむような表情を浮かべる。
「前王妃は妹君である夫人を大変心配されていましてね。民に約束なさったんですよ。飢饉の時は、妹がルーズベルト公爵家にいる間は、彼女がルーズベルト庫の麦を治世に響かない程度まで、解放すると。で、今がその時なんですがね」
「ルーズベルト夫人が平民ではそれは...」
確か孤児院にも毎月、穀物や布を支援していらっしゃったとか、それも止まっているのだろう。亡き前王妃様は民意によってルーズベルト夫人を守ろうとしたのね。
「民からしたら、婚外子などどうでもいい話でございますから、公爵夫人に対しては犯罪者に騙された不憫な人と思っている民の方が多いのかもしれませんわね。民からしたら、施してくれる者が犯罪者でなければ自分達の口に入る麦の方が大事ですからねぇ」




