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ゲームの行方は【ライラック視点】

 最近、断頭台が忙しく動く。ルーズベルト公爵がその門家から追放され、過去の薬草事件で処罰された。勿論、それに関わった人々も、先延ばしになっていた廃妃も、断頭台に上がった。

 

 日々高騰する麦、それに対する貴族達への不満を逸らす為に、ここぞとばかりに溜まっていた処刑が行われている。都民の怒りの矛先を王室や貴族から、罪人にすり替える。一時的な問題回避にはもってこいの方法だ。贅沢を尽くした廃妃の処刑もだが、特に、薬草事件の処刑は都民の怒涛の声が凄まじかった。


 ツェツェリアが死ななくてもゲームが始まっていた。それも最悪な実父ルート。ヒロインがエミリーではなく、ツェツェリアに代わっただけで、後は概ねストーリー通り。マリアンヌはツェツェリアへの殺人未遂と令嬢達への殺人示唆で断頭台へ登ることが決まっている。ゲームと違うのは、実父以外()()闇落ちしていないこと。これが唯一の救いだ。

 

 レイモンドもセザールもツェツェリアを探している。でも、見つかるわけない。だって、マッケーニ侯爵邸の古びた塔の中に監禁されているんだもの。あの塔は、戦いの女神の信託を聞く場所。マッケーニ侯爵が、追放された戦いの女神の子孫である証拠だ。


 実父が、ツェツェリアを盾にレイモンドとセザールを脅す前に、ツェツェリアを洗脳してしまう前に救出しなきゃならない。ツェツェリアさえ救出できたら、マリアンヌの冤罪は晴れる。国の滅亡も防げるかもしれない。


 腐敗しきった王国を潰しヒーローが虐げられていた民達に切望され建国してエンド、なんだけど、私は国の滅亡なんて望んでいない。まず、お父様は愚王なんかじゃない!どちらと言えば賢王だ!


何ができる?1番頼みやすいセザール大公は、今、アーシェア国で蛮族の侵入を防いでいる。頼れるのはレイモンドとお母様だ。しかし、王家とはいえ、無闇矢鱈に侯爵家に侵入して、それも女神の儀式をする場所に足を踏み入れることはできない。どうしたらいい?


 確か、郊外に取り潰されていない女神の教会があった。エミリーはそこで預言という名のシステムの声を聞き、ゲームを進める。そこに行けば女神像がある。それを謀反とこじつけて、屋敷の捜査ができるかも知れない。あそこはマッケーニ侯爵家の登記だった。


 私の宮殿の離れに居住まいを移したレイモンドのところへ急ぐ。本来なら、ここは彼の宮殿だったのだろうか?


 部屋をノックすると、はい、と不機嫌極まりない声が聞こえてきた。


「失礼しますわ」


 中に入ると、地図を片手に今まで捜査された場所や、ツェツェリアを敵視していた令嬢達の名簿を睨み付けているレイモンドの姿があった。


「何の用事です?僕は忙しいので、貴女の相手をしている暇はありません」


 昨日も遅くに帰って来たと聞いた。


「そんなにコンを詰めて大丈夫ですの?難病を患っているのではなかったかしら?」


 嫌味ったらしくそう揶揄えば、ギロリと睨み付けられた。流石美形なだけあって、その顔はなかなかくるものがある。


「そんな事に気を取られている場合ではないので、どうぞお引き取り下さい」


「ディーン令嬢を、探す手掛かりがあるかも知れないと言ったら?」


 レイモンドの顔色が変わる。ガタっと音を立てて、ら


「落ち着いて、少し昔話をするわね。座ってもいいかしら?」


 レイモンドの了承を得て、ライラックは椅子にすわると、ゆったりと話し出した。


「昔、一人の夫人に恋をした少年が居ました。その夫人は彼の上司の妻でした。彼はその思いは叶わないと知りながらも、諦めることができずにいました。しかし、時代は乱世、その上司は若き騎士を守り死んでしまいます。少年は自分が成人したら、その未亡人を娶りたいと両親に懇願します。しかし、少年の身分は高く、年上の子持ちの寡婦など釣り合いがとれません。勿論、父親に親戚全てが反対しますが、母親のみ少年の味方でした。少年は母親に手伝って貰いながら、なんとか未亡人を妻に貰う約束を取り付けます。彼は父親にも、精一杯理解して貰えるように努力しました。しかし、そんな中、唯一の理解者だった母親が亡くなります。親戚をはじめ、父親は手のひら返しのように少年と未亡人の結婚をないものとしました。少年は未亡人の元に行き、彼女を攫って駆け落ちします。しかし、それが父親に見つかり、未亡人は毒を盛られてしまうのです。運良く、一命は取り留めましたが、その毒の影響で未亡人は亡くなってしまいました」


 黙って聞いていた。レイモンドが苛立ちを隠そうとともせずに、声を荒げた。


「で、その話と姉さんに何の関係があるんですか?」


「その未亡人が、ディーン夫人、ツェツェリア穣の母君であり私の本当のお母様よ」


「え」


 レイモンドは、まるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔になる。


「そして、その少年は私の父親であるブロード侯爵子息様。ここまで、言えばわかるかしら?私の父親はツェツェリア穣に執着しているの。彼が身を寄せるなら、彼の縁戚であるマッケーニ侯爵家を選ぶはずよ」


「マッケーニ侯爵が、女神が選んだ当主だからですか?」


「いいえ、違うわ。女神が選んだ当主はブロード侯爵子息様だからよ」


 レイモンドは頭を抱える。


「嘘だろう?罪を重ねた者は当主に選ばれないんのでは?」


「女神が定めた罪はね。あと、女神によって罪は違うから」


 これは王太子教育でしか学ばない事だ。無理矢理、兄様の授業に同席しなきゃ知らなかったこと。


「はあ?」


 うん、びっくりだよね。


「まあ、そうなのよ。私の実父が攫った可能性があるのよ。ほら、もう、疑わしい人物は調べ尽くしたわけでしょう?調べてみる価値はあると思うの。父親は違うとはいえ、ツェツェリア穣は私の姉でもあるのだから。これでも心配して、私なりに彼女を探しているのよ」


「それにしては、姉さんに似てないですね」


「まあね。美しい実父にも似てないわ。私はお母様であるディーン夫人が妊婦初期に毒を盛られてね、その後遺症で陛下と同じく身体の機能に少し障害があるのよ。お祖父様である将軍は、毒に侵され死産した姫の代わりにと陛下に請われて、私を差し出したのよね。だから、陛下や王太子殿下に似ているでしょう?」


 女神達を虜にした太陽神が不細工なわけないじゃない!絶対、血が濃いせいと、流産させようと盛られた毒で、本来の容姿から歪んだのよ!


「それを証明できる人やモノはありますか?」


「ふふ、貴女の乳母に聞いたら?ローランド老公爵でもいいわよ?」


「はあ、わかりました。どうやら事実のようですね。ですが、マッケーニ侯爵邸を調べる口実がありません。陛下を説得できても、大義名分もなく屋敷を捜索する事ができない事くらいご存知でしょう?」


 お手上げとばかりに、盛大に溜息を吐くレイモンドに、ジジャーンとここぞとばかりに地図を広げてみせる。


「ここに廃墟があるんです。ほら、元戦いの女神の教会があった場所よ。この廃墟が取り壊しがなされていない教会だったら、もしかしたら、このな中に女神像があるかも知れない。もし、それがあれば、そのことを理由に謀反の恐れがあるからと、立ち入り調査ができるわ!」


「わかりました。乳母に頼んでみましょう」


 レイモンドの乳母に調べ貰った結果はというと、惨敗。なんと更地になっていたという。それも、薬草事件の判決日に...。流石メイン攻略者、アッパレだわ。


 もしかしたら、エミリー穣がここに通ったんじゃないかなぁと、ワンチャン希望をかけて、ルーズベルト公爵家に手紙を出したんだけど、なんと、ジャネット夫人が追い出した後。


 修道院に戻ってるかもって、メイドに修道院を訪ねて貰ったら、母親と共にこっそりと出て行ったそうで、残念ながら足取りは掴めなかった。


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