ゲーム 【ライラック視点】
物心ついた時には、自分の中にもう一つの記憶があった。時折痛くなる胸と、涙に濡れる両親、入退院を繰り返し、生活のほとんどを病院のベッドで過ごす日々。ドナーの順番待ち。人の死を望んでいるような気持ちになり沈みゆく心。人との接触で感染症に罹ることを極度に恐れた両親が、ゲームや漫画、小説を買い与えてくれた。
その一つに、今いる世界が酷似していると気がついたのは、7歳の頃。両親に全く似ていない自分に疑問を持ったのは、10歳の頃。16歳を過ぎた今、昔遊んだゲームの世界と認めざるえなかった。
ヤンデレゲームでメリバエンドオンリー。その事実、誰も幸せになれない!重い愛でゲームしてる側は満たされたけど、現実では受け入れ難い。私は幸せなことにモブキャラだけど、ゲームの登場人物だけあって、姫でありながらその秘密は闇深い。
生まれてからこの方、姫として何不自由なく幸せに過ごしてきた少女には受け入れ難い秘密だ。うん、荒れること間違いなし。その上、愛してくれない夫に嫁ぐんだから不幸だよね...。
その夫となる人、ディーン子爵も攻略者の一人。出生に秘密のある子爵で極度のシスコン。
私の叔父である大公殿下セザール。これは、淡い憧れを抱いた初恋相手の娘に恋ちゃう系。
もう一人がもとお隣さんの幼馴染。今は、貿易会社の社長。この人は比較的病み度低め。
弟キャラはマリアンヌの弟、マシュー、彼は学園に行くまではマリアンヌ大好きだったけど、学園でマリアンヌに失望して、エミリーに同情心を抱き、惹かれていく感じ。彼も病み度低め。ただ、秘密がバレる病んじゃう系。
で一番やばいのが、私の本当のお父様。かなり重度のヤンデレ。もう、監禁エンドまっしぐら。最悪、氷漬けにしてうっとり眺めるとか、マジ有り得ない。
みんな病むには、それなりの出来事があって。お父様とマリアンヌの弟以外はディーン令嬢こと、ツェツェリアの死が原因。ツェツェリア嬢はディーン子爵の姉で、ルーディ社長の幼馴染、そして、セザール殿下の初恋の人の娘なのよ。
一番拗らせているのが私の実父、ツェツェリアのお母様に恋して、彼女が寡婦になったから結婚したかったんだけど、周囲に反対される。ツェツェリアのお母様には、実父の門家と家族の絶対的な了承が条件と断られて、拉致したけどあえなく見つかる。で、ツェツェリアのお母様は実父との子である私を身籠もり、精神を病み、私が生まれたと同時に死亡。
そこから、実父は狂うのね。実父がツェツェリアを攫うことに失敗して、ツェツェリアが死亡してから、ゲームがスタートするの。
常に亡きツェツェリアの面影を求める男たちの心の隙間を埋めるのが、ルーズベルト家の厄介者であるエミリー。ツェツェリアほど美人じゃないんだけど、その雰囲気とか仕草が似ていて、深く付き合ううちに、ツェツェリアと混同していくってわけ。だから、選択は常にツェツェリアならどう答える?って、悩みながら選んでいたわ。ツェツェリアとのシンクロ度が高ければ高いほど、リメバ率が上がる。
メインストーリーが私の実父っていうのも酷いよねー。まあ、ゲームの発端だし、最後は王国乗って、エミリーをエメラルド宮に監禁エンド。完璧な王なのに、エミリーの前では狂った姿を晒す。これが王道エンドなんだけど、私的に国が乗っ取られるのは勘弁願いたい。
姫として生まれたから、色々勉強した。本来なら、男児しか習わないことまで、頼んで学習させて貰った。わかったことはメインストーリー通りに進むと、沢山の人が死ぬということ、これまでの歴史や他国の歴史を見てもそれは避けれない。
他のエンドもそう、まともな未来は一つもない。だって、世継ぎが生まれないんだもの!国が滅んでしまうじゃない!子供にも嫉妬するような人達ばかりだし、ツェツェリアが死んだら、女性そのものを嫌う人達になるし。
ルーディハルトお兄様はおたふく風邪にかかったせいで、子供ができない、多分。で、私の配偶者となるディーン子爵とは白い結婚、子供は望めない。残る希望は、セザール叔父様とツェツェリア穣のみ。
王が定まらない国は、その座を巡って長い内乱が起こるし、その隙を狙って、他国に占領されるのがオチちよ!
だから、私の出した答えは、極力メインキャラクターに関わらずに、いかに、ツェツェリアが死なないように手助けするか!そもそも、彼女が死ななかったら、ほら、みんな病まないわけでしょ?まあ、渋々だろうけど、ディーン子爵も私と結婚して、ツェツェリア嬢が心配しないくらいには、家族を大事にするだろうし?
セザール叔父様は、ツェツェリア嬢を大事にするでしょう!
ルーディ・ヒューゴ・ナッツに至っては、初恋を断ち切って、別の出会いがあるかもしれない!
既に闇落ちしている私の実父は手遅れ勘あるけど、まあ、それでも、3人は闇落ちが免れる。
色々調べた結果、ディーン子爵家の状況は思わしくなかった。何がって、経済状態がよ!収入が少ない!で、ディーン子爵が不治の病で、使い物にならない!そんな設定なかったけどなぁ。レイモンド、ゲームではピンピンしてたしー。もしかして、病気設定でツェツェリアに構ってちゃんしてるとか?まさかね...。既に、病み要素高めで引くわー。
ツェツェリアと会ったその日に、一目惚れしたであろう、叔父様ことセザール殿下にディーン家のセキュリティーが不味いですよー!今、ディーン令嬢の周辺で若い娘を狙った犯罪が増えてますよーって伝えてみる。これで、ツェツェリア嬢を保護してくれたら、まあ、死亡確率は減るよねって、軽く考えてたら、翌日ホワイト宮に拉致して来やがった!
レイモンドを残しては来れないわって、言われないように、レイモンドも自分のホワイト宮殿に連れ込むんだから、うん、もう、ビックリよ!
一応、婚約者になるんだしって、レイモンドに面会を申し込めば、すんなりオッケーが貰えたからお茶をした。
話してみると、ツェツェリア嬢に関わること以外は、至ってまともなことがわかり少し安心。ただ、「自分はお姉様以外愛せない」とキッパリ言われたわ。清々しいくらいに。
私も愛のある結婚を望んでいる訳ではなく。ただ、自由に生きる為の隠れ蓑が欲しいと言ったら、快く快諾してくれた。
「弟であるから、お姉様と結婚できないことは、重々承知しています。この気持ちを伝えたら、僕はお姉様の側にはいられないし、この場所さえ失うでしょう。ですから、この想いを伝えることは一生ありません。でも、せめて近くで暮らしたい。この希望さえ聞いてくれたら、結婚は承諾しましょう」
って、言われて少々面食らったけど、私の直轄の領地がアールディア国にあると言ったら、すごく喜んでくれた。
「そこに住めるなら、僕のことは、放ったらかしにして下さって結構ですよ!是非、好きなことに邁進して下さい」
って、綺麗な笑顔で言われたら、もう、笑うしかないわ。うん、私のことなんて、本当にどうでもいいのね。
「離婚したくなったら、いつでもして下さって大丈夫です!ほら、僕の病気を盾にすれば、王族でも可能ですよ!」
って、微笑まれてしまったわ。あんた、健康体そのものでしょ?変哲もない綺麗な石を『月の石』です。病状が回復する不思議なものですよって渡してみた。まあ、嘘は方便で上手く使ってくれって、意味を込めて。
そうしたら、ちゃんと意味を悟ってくれたのか、
「ありがとうございます。症状が緩和した気がします」
ってさ、まあ、上手く使ってくれたらいいよ。うん。
はあ、叔父様、とっとと結婚式を挙げて、ツェツェリア実をつれてアールディア国へ帰ってよ。さっさと世継ぎを作ってよ。そしたら、有能な我が父こと陛下が全てなんとかするだろうからさ!
もう一つの問題は、うん、悪役令嬢ポジのマリアンヌ穣。私と同じで友達少ない系女子、エミリーの事が大っ嫌いで、ファザコンでコンプレックスの塊。努力家で、私の好きな人物の一人だから、自滅しないで欲しいのだけど...。
マリアンヌはセザール大公が大好きなんだけど、まーったく相手にされてない。というか、多分嫌わられてる。まあ、今回はツェツェリア嬢が生きてるから、叔父様もエミリー嬢に惹かれることはない、だからエミリー嬢の命を狙う様な酷いことはしないはず!
本来なら、ツェツェリアは婚約が締結た翌日、セザールと買い物に出かけた数日後に死ぬのよ。本来なら、拉致予定だったのが、拉致を頼んだ相手が極悪人達だった為に引渡しでごねられて、相手はツェツェリアを使って値を釣り上げるつもりが手違いで死亡。ここから、ゲームスタート。大丈夫、今、ツェツェリアは生きている。




