犯人 【?視点】
本来なら、ディーン令嬢はルビー宮殿の貴賓室に寝かされるはずだった。医者もルビー宮殿から遠い宮殿医の医局に控えている老医師が呼ばれ、その間は、ルビー宮のメイドが世話をするのが一般的なのだ。老医師がルビー宮の貴賓室へくるには時間を要する。だから、その間に息のかかったメイド達を使い、貴賓室に寝かされているうちに、リネン入れのワゴンに入れて攫う計画だったのに。
騒ぎを聞きつけたセザール殿下か乗り込んできて、王妃様が口を出す前に、さっさとディーン令嬢をホワイト宮に連れて行くなんて!
その上、今は犯人探しの為、みんな足止めをされているしまつ。その上、鬼の形相のアールディア国の騎士達に監視されている。セザール殿下の直属の配下なんだろけど、人相が悪くて、近衛騎士みたいに華がなくて正直苦手だわ。
お茶に薬を仕込んだメイドは、もう、城からでたでしょうし。犯人はみつからないわ。見つかっても、私が犯人だなんて、わからないから大丈夫。見つかったら、マリアンヌ嬢に脅されたと彼女は言う手筈だし。彼女がみつらからないなら、ブロード侯女が一番怪しいと思われるわよね。
でも、何故お父様はディーン令嬢を攫ってこいなんて言うのかしら?あんな女、攫うじゃなくて、殺しちゃえば良かったのに。家にだれか、身分の高い人を隠しているみたいだし...。貴賓室に近づいただけで、酷く怒られたわ。いったい、誰がいらっしゃるのかしら?
「他の方々のカップからは、薬物の反応はありません。お菓子類も同様です。ディーン令嬢が口にされたカップから、睡眠薬に使われる成分が見つかりました」
若い軍医が菓子、お茶を確認し、王妃へ報告した。
「取り敢えず、毒の類でなかっただけよしとしましょう。お茶会に関わった使用人達を調べて。取り敢えず、皆、控室へ移動して一人ずつ監査室長と話をしてから、帰って頂戴。私のお茶会でこんな不手際が起きたことをお詫びするわ」
頭を抱える王妃をブルボーヌ婦人が支えている。
「ディーン令嬢を眠らせて、何をするつもりだったのかしら?」
「そう言えば、ディーン令嬢も枯れ草色の髪ですわ」
「なら、ディーン令嬢もあの連続殺人犯に狙われていたのかしら?恐ろしい」
「連続殺人犯って?どんな事件ですの?」
気になって、話をしていた伯爵令嬢達に尋ねた。
「実は、枯れ草色の髪の令嬢を狙った犯罪が起こっていまして、皆、空き家のベッドの上で、頭部を切り落とされ、膚を剥いだ状態で見つかっておりますの。持ち去られているのは、その頭部の膚のみと言う話ですわ。怖い話ですわよね」
壊れそうなくらい心臓が激しく脈打つ。
「他に、わかっていることはございますの?例えば、犯人の目星がついているとか?」
「犯人は貴族じゃないかと言われいますの。ただ、攫われた際の目撃者がいないんですの」
「貴族...。いつ頃から、その事件が始まったのかしら」
鼓動がさらに激しくなった。嫌な予感がする。
「約、一月前ぐらいに、最初の被害者が出たのかしら?」
一月前...。嗚呼、なんてこと、お父様が不審な動きをはじめられた頃じゃない。そして、誰か隠してらっしゃる気配を感じ始めた頃。
背中を嫌な汗が伝う。
「大丈夫ですか?」
教えてくれた令嬢が心配そうに、除き込んでくる。側にいた別の令嬢が、人を侍女を呼んでくれたようだ。私を支えられるようにしながら、貴賓室のベッドで休むか聞いて来た。
「早く帰りたいの、馬車へ連れてくれる」
ふらふらとしながら、馬車に乗り込み屋敷へ帰ると、また、敷地の隅にある棟の煙突からもくもくと煙がたち登っていた。




