※ カロは見た
主は、何がしたいんだ?
カロは最近矛盾だらけの主人に、呆れた眼差しを送っている。
結婚を嫌がっている口調ではあるが、ディーン令嬢を側から離そうとしない。師匠の孫娘には気を使うから面倒だという割には、気を使うを通り越して過保護。いや、ストーカーだな、あれは。
令嬢が実の弟と会話をしても不機嫌極まりない。頻繁に会いに行かないように、一番奥にある離れの客室をあてがい、令嬢と一緒に食事をすることすら許されないとはどんだけだよ。
ディーン子爵家の補修と清掃はゆっくりやれ!とか、わけわからん命令を出すし!それを聞いたゼロニアス様がニヤニヤして気持ち悪いったらありゃしない。
最低限揃える予定だった令嬢服は、日々運ばれて来て、宮殿に溢れ返り、片付けるのに手間取っている始末。
これ、どうやって持って帰るつもりなのさ?長旅!砂漠を越えるんだけど!まだ、ディーン令嬢がこの宮に来て4日しか経って無いのにこの有様、服やドレス、靴や装備具が全て仕立て上がって運び込まれるのを考えると恐ろしくなる。
慌てて、王妃にこれ以上の服類の準備は不要と伝えにいけば、心配性の王妃は確認に来て、その膨大な量に大爆笑!
王妃の女官が直々に、購入物のリストアップと片付けをする始末。
一着のドレスが王妃様の目に留まる。
「カロ、このドレスはどこで手に入れたの?」
「マリン・クレトアの工房でございます。彼女の試作品を無理矢理、主が購入なさりまして…」
はい、そのままディーン令嬢のサイズに…。
デザイナーは普通、試作ドレスなど絶対に売りません!店に展示して客寄せにするんです。今季の売り上げを左右する大事なドレスなんですから!
それを主は、半ば脅して、はい。で、三日で仕上げさせ、今ここにあります。可哀想に、これを取りに行った時のお針子方々と、マリン・クレトアの顔と言ったら、それはもう見るに耐えれませんでした。
王妃様、絶句なさってます。
わかりますよ。長年時を共にしてきた俺も、もう何が何だか。気でも触れたか心配になるくらいですから。
なのに、主本人は、ポーズなのか無自覚なのか、ディーン令嬢のことを面倒な相手とのたまってるんだから。もう、こっちの身にもなって欲しい。令嬢と楽しく談笑をしていた護衛は、急な配置換え。彼、何が何だかわかっていませんでした。
令嬢には部屋も与えず、つねに自分の側に置いておく始末。可哀想にいつも居心地の悪そうな顔をしてらっしゃいます。
まあ、主が書類仕事をしている時はまだ、いいんですよ。御令嬢もご自分の書類仕事をなさったり、針仕事をなさっているから。でもね、軍議とかしてる横で、紅茶飲みながら読書とか刺繍とか出来ないって!
ほら、騎士隊長や高官もディーン令嬢に、なんでここにいるの?見たいな目を向けているし…。主以外、気まずさ100%だよ!
子供がお気に入りのおもちゃを離そうとしないように、執着している主を目の当たりにして、王妃様もディーン令嬢のことを気の毒そうな目で見てらっしゃる。
王妃様が折を見て、お茶に誘うのも嫌そうになさる始末だし…。後追い期の子供ですか?あんた。
まあ、弟君との時間は必死で我慢?なさっているみたいですけど…。
これで、面倒たって?ね?誰が信じるんですか?本気で面倒だって思っているのは、ディーン令嬢の方じゃ無いかな?お優しいから、口には出されないけど…。溜息増えましたもんねー。
令嬢、主のこと、少し怖がってらっしゃるみたいだし…。今の所、主の片思い?あの主が片想い。似合わない!
考えただけで、笑いが込み上げる!!!
主に省みられない可哀想な大公夫人を想像してたんだけど…。それは杞憂だということがよくわかった。そう思っているのは、俺だけではない。はい。長年、主の右腕として行動を共になさっているルーベルト伯爵なんて、どんな顔をして主をみて良いのか困ってらっしゃいますし。まあ、別の意味で可哀想な大公夫人なんだけど、ププププ…。
明日のパーティーはどうなることやら…。
王妃様も同じ心配をなさっているはずだよ。フォローを頼むためご実家に帰られましたし。




