第一章
こんにちは、私の名前はキンバリー。キムって呼んで。私は聞いたり話したりすることができない。すなわち聾唖なの。
私を憐れまなくていいわよ。私はそんなに苦労してない。むしろ、学校が楽過ぎて、つまらないぐらい…
私の先生の名前はトニー。今、彼は手話で生物について講義している。黒板にたんぱく質や細胞、酵素についての説明を書き、分かりやすい図まで描いている。
ある眼鏡をかけたシャイな男の子が私の肩を軽く叩いた。彼は恥ずかしそうな顔をして、私に手紙を渡した。その手紙に書いてあったのは、「こんにちは、僕の名前はロバート。まだ自己紹介してなくてごめんね。ちょっと話しかけにくかったんだけど…でも、君の髪型や歯の矯正やそばかすが好きなんだ。今夜デートしない?」
私はすぐに手紙を返した。「こんにちは、ロバート。ありがとう、でもごめんなさい。そんなに興味がないの。」
なるほど、こうやって耳の聞こえない男の子は耳の聞こえない女の子に告白するんだ。手紙で。もちろん少し嬉しかった。誰だってそうでしょ?でも、恋に落ちるほどロマンチックではなかった。
私は生物の時間中ロバートの方を見向きもしなかった。その代わり、トニーのミトコンドリアについての授業にやたら集中することができた。
ドアのベルが鳴った。私はドアを開ける前から誰がそこにいるか分かっていた。それは、いつも通り、ローラだった。ローラは私のクラスメイトで唯一の親友であった。この時間にいつも世間話をしながら一緒に宿題をする。まあ、宿題は簡単なので、ほとんど世間話だけど。そしてもちろん、私たちは書いて世間話をする。宿題はだいたい10分以内に終わる。
ローラは紙に次のように書いた。「ロバートは授業中あなたに何て言ってたの?」
私はこう書いた。「彼は私に告白してきたの。私は興味ないと答えたけど。」
ローラは目を回した。「典型的ね。」
私は笑顔で書いた。「そうね。」
もう察したかもしれないけど、人をふるのは今回が初めてではない。ロバートはこの学校に来たばかりだから知らなかっただけ。学校の他の人たちは私に告白したら何て言われるか分かっていた。