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6話

「あそこが教会から一番近い冒険者ギルドよ」


ラヴィの指さした先には数階建ての建物があった。

一階は外から見ると酒場のような雰囲気をしている。


中に入ると左手に受付のカウンターがあった。

正面にはドアがある。

右手にはロビーや掲示板があり、多くの人が談話している。

ルスが受付に向かうと、受付嬢と目が合った。


「冒険者ギルドへようこそ!本日はどのようなご用件でしょうか?」


愛想のいい受付嬢が明るい声で挨拶をしてくれる。


「こちらで冒険者として登録をして、パーティを組みたいのですが」


「かしこまりました。まずはお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「ルスです」


「ルス様ですね」


受付嬢は慣れた手つきで登録者リストを確認した。


「登録が無いことが確認できました。登録の前に冒険者としての適性があるか、独自の試験を受けていただきます。実技試験で試験官が合否を判断し、合格だった場合は書類への記入や認定バッジの付与等を行い登録完了となります」


「分かりました」


「それではあちらへお進みください」


ここに入った時に見えたドアに誘導される。


「付き添いとして一緒に行ってもいいですか?」


ラヴィが尋ねる。

試験を受けるだけとはいえ、彼女に離れる気はなかった。


「ええ、構いませんよ。勿論試験に介入することは出来ませんが、見学することは認められています」


受付嬢はにこやかに答えた。


二人は言われた通りドアを開き、先へ進む。

一本道になっており数十メートル先に建物の入り口があった。


「かなり大きい建物だね」


「ここは王国の中でも外側にあって、派手な戦闘をしても街やお城にあまり影響がないようになっているの。人間同士は基本的には戦闘しないけれど、パーティ同士の強さを競う場合なんかもあそこを使用するわ。今回も…」


急に黙るラヴィ。


すると次に焦ったようにルスを見た。


「ちょっと待って、ルスは魔法のこと何も知らないんじゃない?」


「…そうだね」


「大変よ、どうしましょう。この国では誰しもが魔法に関しての知識を多少なりとも持っているの。小さい頃から教養としてね。当たり前のことだと思って見落としていたわ」


ルスもジョブの準備は終わった気でいた。

魔法使いになったのだし呪文を唱えれば魔法が使えるのだろうとなんとなく考えていたが、そもそも呪文すらも知らない。


「物理攻撃を行うジョブは入念な事前準備が無くても試験に合格できると言われているけれど、魔法使いみたいなジョブはそうはいかないわ。何せ知識が無ければ魔法の発動も出来ないから。最初のハードルの高さも魔法使い人口の少なさに影響を与えていると言えるわ」


それはいいとして、とラヴィは続ける。


「ど、どうしましょう。一回戻って別の機会にまた来ることにするか…もう受付の方も試験官の方も準備を進めていると思うから申し訳ないけど…」


「いや」


ルスが口を開く。


「今ラヴィから教わればいいんじゃない?」


「え」


ラヴィは呆気にとられた。

しかし、表情から冗談のつもりでは無いと悟る。


「基本だけでいいから教えてほしい、そこから先は頑張るよ」


『頑張る』だけで解決しようとしている風に感じて不安になったラヴィだが、その言葉に従うことにした。


「分かったわ。試験官の方も待っているだろうし本当に基本的な事だけね」


「ありがとう」


ラヴィは歩きながら説明を始める。


「魔法の基本は『魔力』と『イメージ』と『精神』と言われているわ。まず魔法は使用者の『魔力』を消費して発動できる。そして『イメージ』が具体的である事、より詳細である事が重要よ。大きな火の玉を生み出そうと思ってもその熱量や大きさ、エネルギーなんかが想像できていないと、小さい火の玉は出来てもそれを大きくすることが出来ないなんて事が起こるわ。初心者が一番躓くのがここね。最後に『精神』の状態は魔法の精度に直結するわ。焦っていれば思い通りに動かせないし、生み出したりしたものを綺麗に形作れないということね。これらをより簡単に成功させるために『詠唱』や『呪文』を唱えることが推奨されてるわ。詠唱は素早いイメージの形成や、余計な情報を閉ざし魔法に集中できるという点からほとんどの魔法使いが使用するの。魔法にはいくつもの属性があるのだけれど、『火』『水』『土』『風』が四大元素と呼ばれ主要な属性となっているわ。基本の呪文はそれぞれ『ファイア』『ア…」


「そろそろよろしいかな?」


早口で説明し続けていたラヴィがハッと前を向く。

二人はいつの間にか大きな建物の中におり、前には試験官らしき中年の男性がいた。


「す、すみません」


「まあ良い。私が今回の実技試験の試験官を務めるコイアだ。試験を受けるのは君かね?」


コイアはルスを見る。


「はい。よろしくお願いします」


「では、付き添いは離れているように」


ラヴィは壁側に、ルスはそのまま前にそれぞれ進む。


(サッカースタジアムみたいだ。外側に観客席のようなものもあるし、その上には屋根もある)


中心部が吹き抜けになっている会場を見渡したルスは、そんな事を思いつつコイアの前まで来た。


「試験内容は簡単だ。私が君に攻撃を仕掛けるので持てる力で対処すること。戦闘経験に差があるので、どんな反撃でも構わない、遠慮せず反撃したまえ。安全面を考慮し私は木刀を使う。もちろん君は通常の武器で構わない。『魔物と対峙しても対処が出来るレベル』と私が判断すれば合格だ」


コイアは続ける。


「もし、不十分であれば勿論不合格とする。不合格という結果は残酷に思うかもしれないが、それは不合格者の為でもある。冒険者ギルドに入ることを諦めないのであれば修練を積み、再度挑戦するといい。何か質問はあるかね?」


「いえ、大丈夫です」


「よし、それでは始めよう」

お互いに建物の中央の方に進み、コイアが指定した距離を取る。

準備が整ったのを確認しコイアは剣を出し構えた。

ルスも杖を取り出す。


ルスの初めての戦闘が始まろうとしていた。


次回更新:1/25 18:00以降


Vtuber最協決定戦面白かったです

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