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32話

「戻ろう」


「ええ、そうね」


「…」


(僕らがクエストに出てからずっと誰かに見られている気がする…)


ルスは周囲を警戒しながら王国へ歩き始めた。



冒険者ギルドへ戻った二人は受付嬢のクラメに状況を話した。


「パーティメンバーの二人と見知らぬ男一人が黒い魔物に飲み込まれました」


「はい。…え?」


クラメは呆然としていた。


「異常事態かもしれないので報告をと思い…」


クラメと話していると二人の男が奥の扉から出てくる。

一人はルス達が初めて見る、随分と恰幅のいい男性だった。

もう一人は王女ファイを城へ送り届けた際に駆け寄ってきた男だとわかった。

ファイにパガンと呼ばれていた男はルス達を見ると目を細めた。


「では、そのように」


「ええ、ええ。…ん、どうした?」


恰幅のいい男がクラメに話しかける。


「クセン様。冒険者の方から報告なのですが、未知の魔物に人間が飲み込まれたと」


「何?本当か。それは消滅という事か」


クセンと呼ばれた男はルス達を見る。


「ええ、そう言えると思います。黒い魔物に飲み込まれたかと思ったら、彼らの姿は消えました」


ラヴィは答えた。


「クセン殿、この者たちは…」


パガンはクセンに目配せする。


「なんと…」


クセンは驚いた顔をした。

彼の眉間に皺が寄る。


「黒い魔物などと言う話は聞いた事がありませんな。本当に消滅したというのか?人間が消えたのであれば、お前たちが消した…という事もあり得るが」


パガンが話に入る。


「ち、違います!」


ラヴィは抗議した。


「では証拠はあるのか?ドロップはどうした?魔物であればドロップが出るのではないか?」


「それは…どうしてか魔物からドロップは出なくて…」


ラヴィは口ごもる。


「魔物ではあるがドロップは出ないと…。お前たちの言動は不審すぎるな。お前たちは噂の魔法使い二人組だろう?なんでも冒険者ギルドの断り無しに王女様の護衛もしたそうじゃないか。その報酬はたんまりもらったと聞く」


「何!?本当か!?」


パガンの発言にクセンが反応する。


「ええ!冒険者ギルドに所属しているのだから、報酬の一部はギルドへ渡すべきではないのかね?」


「そのような説明は受けていません」


ルスは答えた。


「では報告はどうしてしなかったのだ?」


「王女様が人に知られたくないと仰っていましたので」


パガンは疑いの目を向け続ける。


「怪しい…。そもそも本当に護衛だったのかも不明だ。金銭目当てで貴様らが仕組んだのではないか?」


「そんな事はしません!」


ラヴィは強く言うが、パガンの不信感は変わらない様だった。


「逆に僕たちは暗殺されそうになった身です。そして、その暗殺はパガンという方から依頼を受けたとの話を聞きました」


「何…?」


ルスの言葉にパガンはピクリとする。

クラメとクセンはその言葉に驚いた様子であった。


「私に仕向けられた?そんなもの知らないな。まさか、ありもしない作り話で私の評判を下げようというのか?許せないやつらだ」


パガンの声は少し荒くなる。


「人間を飲みこむ魔物?何を言っているんだ。そんな怪物いるわけがなかろう。全て貴様らが仕組んだ殺人の為の出鱈目にすぎん!貴様らは、殺人鬼だ!犯罪者め!」


ルス達を指さしながらパガンは続ける。


「この件は私から上に報告しておく。前代未聞の冒険者殺しだとな。また、今後我々の管轄である冒険者ギルドで働くことは認められんぞ。殺人の疑いがある者どもなど雇えん。我々にそれ相応の『誠意』を見せん限り、な」


パガンはルス達を見下し言った。

パガンの目を見たまま何も発さないルスだったが、やがてクラメに向き直る。


「…そういえばクラメさん、これを」


「このドロップは?」


「クエストの成果です。報告だけでもと思って」


「あ、ありがとうございます」


「報酬はやらんぞ」


パガンはぶっきらぼうに言う。


「ええ。行こう、ラヴィ」


ルスはラヴィを連れて冒険者ギルドを出た。



「これからどうしましょうか…」


ラヴィは困った顔をする。


「うーん。とりあえず食べよ」


「…ホントにルスは」


ラヴィは笑った。



大衆居酒屋のような店に入った二人。

四人席に向かい合って座り、ラヴィは口を開いた。


「色々ありすぎて疲れてしまったわ」


「本当だね。とりあえずお疲れ様。お互い生きててよかった」


「ええ。今日だけで何度身の危険を感じたか」


「うん。事前にラヴィからバフとデバフを教わっておいてよかったよ。相手の剣を薙ぎ払えるか不安があったから」


「え、剣を飛ばした時にどちらも使ったって事?」


「うん」


「そ、そう…」


(どちらも特殊な魔法なのに初めてで成功させたって事かしら。しかもあんな目まぐるしい状況の中で、高い効果を正確に出して…そもそも彼女たちの攻撃にそこまで隙があったように思えないし、どんな速度・戦略・タイミングで二つの魔法を使用したのかしら。魔法使いの私が傍から見ていても分からないような魔法の発動ってそんな…)


ラヴィは悶々と考え込んでいた。


「それにしてもあの黒い魔物は何だったのか。僕は調べる必要があると思うんだ」


そんな彼女を気にすることなくルスは話す。


「それは危険よ」


ラヴィは即座に返した。


「でも、きっとあの一体だけじゃないと思う。次いつどこで出てくるかもわからない。もし生き物の多い場所に表れた場合、被害は甚大になるかもしれない」


(この王国は剣士が多い。もし同じ魔物が現れた場合、倒し方が分からない冒険者は次々に近づいて取り込まれていく可能性が高い。それは阻止しなければ…)


ルスには使命感が生まれていた。


「でも、ルスが心配だわ」


「僕だって無理はしないつもりさ。約束するよ」


「…本当にそうならいいのだけれど。それと、今後何をしましょうか?」


食事を口に運びながらラヴィは言う。


「うーん、まずは…」


ルスが考えていた時、足音が近づき、二人の横で止まった。


「なあ、冒険者ギルドから追放された魔法使い二人組のパーティってお前らか?」


若い男の声がする。

顔をあげると見知らぬ青年がいた。

20代くらいの男はにこやかにこちらに話しかける。


「人違いなら悪いが、そうだったら用があるんだ」


「確かに私たちは追い出された二人だけのパーティだけど…」


ラヴィは警戒しながら答える。


「そうか!良かったぜ」


男はにこやかに言った。


「俺はラク!新しく冒険者ギルドを立ち上げるんだ。二人とも、俺に雇われないか?」


ラクはルスとラヴィを見て言う。


二人は顔を見合わせた。


次回更新:2/16 12:00以降


訂正

30話にて「バガン」と記載しているところがありましたが

正しくは「パガン」です(2/15 22:08修正済み)

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