17話
「じゃあ後で迎えに来ます」
「よろしくお願いしますわ」
眠い目を擦りながら王女のファイは答えた。
ルスとラヴィは冒険者ギルドへ向かう。
目的地まで届けた後は暫く一人にして欲しいとの話だったため、待っている時間で二人はクエストをやろうという事になった。
冒険者ギルドの掲示板で行く方面のクエストを探す二人。
「東の森周辺…これなんかどうかしら?」
「採取クエストか。良いんじゃないかな」
場所がファイの目的地に近く、採取する薬草の数も多くない。
「Eランクらしいけど、ルスは私より凄いし大丈夫だと思う」
「凄い…かはわからないな。けど、ラヴィが言うならきっと大丈夫だ。これにしよう」
受付に持っていきクエストを開始する。
「頑張ってきてくださいね!」
クラメの笑顔が眩しかった。
教会横の住居に戻る。
「お待たせしました。行きましょう」
「はーい」
フードを深く被ったファイが元気よく出てきた。
勢いあまってルスにぶつかる。
ルスは胸でファイの華奢な身体を受け止めた。
「大丈夫ですか?」
「つ、つい勢いをつけすぎてしまいましたわ!ごめんあそばせ」
「いえいえ」
「では!参りましょう!」
ファイはフードを被りなおし、先頭を歩き始めた。
三人で王女の目的地まで向かう。
目的地というのは昨日と同じ王国の東にある森で、その真ん中だという。
森には南北を分けるように一本道がある。
「お二人がいると安心感が違いますわ!」
ファイは一本道を足早に進んでいく。
採取クエストの場としてもよく利用されているため、一本道から獣道のような横道も定期的に見かける。
(今日はほとんど魔物を見ないな)
大変順調に進んでいく三人。
「昨日はここら辺まで来れたのですけれど、オオカミさんに見つかってしまって」
森の中の道を歩きながらファイは言う。
「あと少しだったんですけれどね。あ、このあたりですわ」
彼女は何でもない道の途中で止まり急に木々の間を進んでいく。
ルスとラヴィも続いた。
暫く進むとファイは立ち止まり二人に告げる。
「では時間が経ちましたら、またこの辺りに来てくださいまし」
「本当に護衛はしなくて大丈夫なのですか?」
昨日と何ら変わりない森の中である。
魔物が出てもおかしくない、とルスとラヴィは思った。
「ええ、大丈夫ですわ!それよりお二人もクエストがあるのでしょう?是非そちらに向かってくださいまし!」
「わ、わかりました」
急かすように背中を押されラヴィは返事をする。
心配ではあるが二人はファイを信じることにした。
「似たような道だし、僕らはちゃんとここに戻ってこれるかな」
一本道に戻りルスは言う。
周りを見て覚えようとしているが、確実に戻れる自信はそんなに無い。
「私は何回か来てるし大丈夫だと思うけど…念のため印をつけておきましょうか」
ラヴィは、ファイが一本道を曲がったところの草むらに入る。
そして一本道からは見えにくい地面に、何かを書き込んでいた。
「それは?」
「魔法陣よ。書いた時に込めた魔力の分だけ特殊な効果が持続して、魔力が切れると自然に消えるわ。今回は私が魔法陣の近くに来たらその位置をなんとなく感じれるように作成したの」
「へぇ。便利なものを知ってるんだね。後で詳しく教えて欲しいな」
いかにも魔法らしい代物で、応用範囲も広そうだ。
「じゃあ僕らも採取に行こうか」
二人は一本道を半分ほど引き返し、脇道に入る。
「ここら辺に目的の薬草があるはずよ。魔物もその付近に集まるからランクがEなのだけれど」
少し先の木の近くに魔物がいた。
魔物はこちらに気付いていない。
「あんな風にね」
「あの魔物の近くにあるのが薬草か。あそこは魔物がいるし、別のところに行こうか」
「ええ」
別の場所を見に行く二人。
「あれなら採れそう」
ルスは違う場所に同じ薬草を見つけた。
ラヴィに採取の仕方を教わり、丁寧に採る。
「おおー出来た」
「いい感じね。状態が悪いと使えなかったりするみたいだから、採取時は時間をかけて丁寧にやった方がいいわ」
「了解」
二人は順調に採取していく。
目標まであと一束という所で猪のような魔物に見つかる。
縄張りに入ってしまったのか機嫌が悪いのか、二人に向かって来た。
「戦闘したい訳じゃないし、とりあえず逃げようか」
「賛成よ。ただあのイノシシ種は気性が激しいと言われているから、もしかしたら戦わないとかも」
二人は暫く走るが、イノシシはしつこく追いかけてくる。
「戦わないとだめかもしれないわね」
「仕方ない」
ラヴィは杖を、ルスは剣を構えた。
「いつの間にジョブチェンジしたの?」
「あー、昨日ね」
突進してくるイノシシの攻撃を躱し、ルスは剣で攻撃を入れる。
イノシシは仰け反るが戦意は消えていない。
ラヴィは何か魔法をかけたようだった。
もう一度突進してくるイノシシに、再度斬りかかる。
先ほどよりもかなりの手ごたえを感じたルスがイノシシを見ると、倒れて動かなくなっていた。
ドロップが飛びラヴィの方へ転がる。
「防御面のデバフかな。ありがとう」
「いえいえ」
ラヴィがドロップを拾った時だった。
「なあ、それオレらの獲物だったんだけど」
見知らぬ男の声がした。
声のする方を見ると男が3人立っている。
「貴方たちは…!」
ラヴィが反応する。
「ん?誰かと思えばいつぞやの足手纏いじゃねえか」
リーダーらしき男は吐き捨てるようにラヴィに言う。
「…もしかして前のパーティの人?」
「そう」
ラヴィは少し暗い顔で返した。
「ああ、わざわざオレらのために倒してくれたのか!だよな?」
ルスには何を言っているのかよく分からなかった。
「だから寄越せよ、それ」
「オレらの物だって言ってるんだよ」
男はラヴィのドロップを指さす。
「断る」
ルスは答えた。
「はっ、これだからクソ初心者は。これが見えねえのか?」
男は胸のバッジをこれ見よがしに見せる。
ルスの持っているパーティのランクバッジより、幾分か立派なバッジだった。
「お前らどうせFランクだろ?オレらDランクなんだけど。え、言いたいこと分かる?」
男たちは一歩詰め寄る。
「おとなしく渡しておけば穏便に終わるって話」
男はにやりと笑った。
「明らかにお前らの物ではない」
ルスは冷静に返す。
「生意気なFランパーティだなあ、まったく…潰してやるよ」
三人は剣を取り出していた。
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