16話
路地裏を少し進んだ先に少女は座り込んでいた。
かろうじて目立たない場所まで移動できたが、最早歩くのにも限界が来ていた。
「大丈夫ですか!?しっかりしてください!」
ルスは少女に話しかける。
少女からの返事はないが呼吸をしているのはわかった。
とりあえず生きていることは確認でき、安心する。
「お…」
小さな声で何かを伝えようとする少女。
ルスは耳を澄ます。
「お、なかが…空きまし、たわ…」
「え…?」
がくっと急に力が抜け、少女はルスにもたれかかる。
睡眠に入ったようだった。
「どこかで食べさせよう」
ルスは少女を担ぎ、店に向かって歩き出した。
少女が目を覚ますとそこは料理店の様だった。
自分たちの周りには厚くはないようだが仕切りがあり、周りからは見えないようになっている。
そこそこ繁盛しているようで店の中は賑やかだ。
少女は昼間も助けられた二人と一緒に、一つのテーブルの前に座っていた。
隣には同い年くらいの若い女の子が、テーブルの向かいには青年が座っている。
そして、テーブルには沢山の料理が並んでいた。
「わああ…」
それを見て、ぱぁあっと表情が明るくなる。
空腹の少女にとっては正に夢のような状況であった。
今一番必要なものが目の前にある。
「すみませんお二人とも。こ、こちら頂いてよろしいかしら?」
「もちろんです。どうぞ」
「…!本当に感謝致しますわ!」
フードを取り、料理に手を付ける。
少女は丁寧に、しかし迅速に料理を口に運んだ。
みるみるうちに元気になっていく。
ルスはその時、少女の顔を初めて確認した。
ウェーブのかかった少し長い髪と綺麗な目、白い肌に整った顔立ちと、確かに高貴な身分を感じさせる姿だった。
「どれもあまり食べたことのない味ですが、温かくてとても美味しいですわ!」
どんどん食べていく王女。
幸せそうな様子に、ルスとラヴィはほっこりした。
自分たちも食べ始める。
「何も食べるものが無くて、誰にも頼ることも出来なくて…本当にどうなる事かと思いましたわ。昼間も…はっ!!」
少女は急に手を止め、姿勢を正し、二人を見た。
「申し訳ありません。自己紹介が遅れてしまいましたわ。わたくしの名前はファイと言いますの」
ラヴィも慌ててそれに答える。
「こ、こちらこそ名乗るのが遅れてすみません。ラヴィと言います」
「ルスです」
「昼間も助けていただき本当に感謝致しますわ。あの時もお二人のおかげで九死に一生を得たのに、わたくしは計画が頓挫してしまう事ばかり恐れて、捕まらないように逃げてしまいましたの」
「お気になさらないでください。それよりも、計画?」
「そ、それは…」
ファイが口ごもる。
「あ、無理には問いません!」
ラヴィは慌てて言う。
「…お二人は、わたくしと会ったことを城の者たちに言わなかったのですか?」
ファイは尋ねる。
街に戻ってきた際も国を挙げての捜索はされていなかった。
それ自体も不可解だったが、二人と別れしばらく経っても特に変化は無かったため、王女は聞きたかった。
「言っていません。きっと王女様にも事情がおありなのだと思ったら、私たちもどうするべきか悩んでしまいまして」
「お二人とも…」
二人なら信頼できるかもしれない、ファイはそう思った。
「わたくし、とある場所に行きたいんですの。それも出来るだけ人に知られずに」
彼女は話し始める。
「本当は今日中に行って帰ってくるつもりでしたわ。でも、魔物に阻まれてしまった。闘いは得意ではない故、また魔物と遭遇した場合今度こそわたくしは命を落としてしまうでしょう。お二人にはまたお願いとなってしまうのですが、どうか護衛をお願いできませんか?」
「僕たちで良ければ」
「ほ、本当ですの!?」
「ええ。王女様の為ならば」
「感謝いたしますわ!」
「では明日にでも」
「ええ!お願いいたしますわ」
「ところで、本日王女様はどちらでお休みになられるんですか?」
「あ…」
今気づいたといった顔をするファイ。
空腹で頭が回らなかったのかもしれない。
ルスとラヴィは顔を見合わせる。
「良ければ自分たちのところに」
「匿ってくださるんですの!?」
「僕らも教会の近くに住まわせてもらっているのですが」
「教会の近く…」
ファイは心配そうな顔をする。
「祭司様にバレてしまっては、きっと直ぐにお城へ戻されてしまいますわ!」
「じゃあ慎重に、ですね」
食事を済ませた後、三人は教会の方へ向かった。
他の人にバレないよう、こっそり中へ入る。
「王女様はこちらをお使いください」
部屋に入ると、ルスは自分が使ったベッドを指す。
「ありがとうございますわ。あれ、でもそうしたらルスさんは?」
「僕は床で寝るから大丈夫です」
「ええ?」
「冒険者ですから」
ルスは笑顔でそう告げる。
結局なんとか説得して使ってもらうことにした。
王女は躊躇していたが、折れてベッドに横になった途端眠りについた。
相当疲れがたまっていた様だ。
「本当にいいの?」
ルスと一緒に説得していたラヴィであったが、ルスの事も気にかけていた。
「私が床で寝るのでも…」
「ありがとう、でも大丈夫だから。ラヴィはゆっくり休んで」
ラヴィの頭では同じベッドで寝るという選択肢が一瞬過ったが、すぐさま打ち消した。
「…分かったわ。おやすみ」
「おやすみ」
ラヴィも折れて眠りにつく。
その夜ルスは借りた本を読む。
「なるほど」
試験官のドロップを使い、自分の感覚を確認する。
「ばっちりだ」
ルスは明日に備えるため目を瞑った。
次回更新:未定
恐らく明日上げます。早ければ今日の夜




