放浪癖・・・
続きで所々設定を加え始めました。
正直なところ思い付きで進めているので矛盾も大いにありますね。(知らんし)
・・・・予定は未定。確定ではない。
鉱山ギルド人事部門から呼び出しがあった。私だけではなく私も所属している派遣会社スタッフ全員である。人事部門の担当者によると我々の派遣会社アーセナル・ジャンプとの連絡が二週間前よりとれなくなり、請求に関しても連絡がないとのこと。問い合わせられる全ての努力をしたがどうしようもないのでギルド内部での決定で派遣契約終了になるとのこと。直接雇用も話されたが、他に増員に関する動きもあり、これはこれで一旦終了し改めて人材確保に動くことになったとのことだ。
かなり乱暴な話だが、ギルドの総意なので個人に口を挟む隙は無い。そもそも個人に便宜を図ってもらえるようなコネがあるならば最初から派遣では働いていない。
そこでギルドとしては派遣会社請求金額をそのまま我々に配分するということになっているらしい。ただし、金額の支給を終えた時点でギルド人員待遇解除の上、早急な退去も迫られた。とりあえずはここから10キロほど離れた荒野の非武装地帯までは連れて行ってくれるとのこと。担当曰く「すまないが防衛体制を崩すわけにもいかないので送っていける範囲もそこまでしか無理だ。2日~3日分の食糧と水は渡すし、派遣戦闘員には最低限の武器は渡すので派遣社員同士でどうするかは考えてくれ」とのことだ。
退去の為に用意された馬車の貨物に荷物を持って乗り込む。元派遣社員は戦闘員が5名に作業員が3名で作業員の中に1名女性が混じっている。背は小柄で細身、メガネをかけておとなしい感じの娘だ。20代半ばから後半だろうか。作業場で何度か見かけたことはあるが話をしたこともない。ただ、なんとなく見られているという感覚はあった。意識のしすぎかもしれないが。ただ、今も私の隣にいつの間にか座っている。もう一名の作業員は真っ青な顔をして足を抱えて座っている。そこそこの体躯の若い男だが物凄く小さく見える。戦闘員たちは面倒くさそうな顔をし、中には舌打ちしている者も居る。(そりゃそうだろうな。)
馬車に揺られ一時間半ほど経っただろうか。馬車が止まり、御者がここまでだと告げる。荷台が空になった警護兵付き馬車は元のギルド拠点へと引き返していく。
降ろされた場所は浅い轍の残る道だけがある荒野である。塵が舞い埃っぽい。非武装地帯といっても争いがない荒野というだけであって武器所持を咎める機関もなく、無法地帯と言ったが早いのかもしれない。近場の街まで30キロはあろうか。街と言っても宿場町として少し栄えた街で住人だけで自治しているところが最短距離である。大きな街になると私が釣り具を準備した街だ。100キロほど離れている。ただ私には他に心当たりがない訳ではないが・・。
寧ろ、なんとなく誘われていた感じがする。ともかく8名の集団としての総意を推しはかろうと思っている。降りたところで元戦闘員たちからは最短距離の宿場町へ行こうという小声話が聞こえてきた。そこで元戦闘員1名が私たちに向け声をかけてきた。「あんたらを宿場町まで送りはする。だが行程の危険もあるんで警護料を払って貰おうか。」「ギルドに支払って貰った給与の半分だな。それで命の保証をしてやるよ。」と言いながら若干ニヤついていた。
元戦闘員たちとは就業場所が違ったので顔を合わせることもほとんどなく、見たことがあるというくらいであった。やはり親身になってくれることは無いよなとちょっと残念な気持ちになりながら、とりあえず同意はしておいた。寧ろ、この状況で身ぐるみ剥がされた上で打ち捨てられたり、最悪殺されないだけ悪い奴らではないことは解った。給与全部を見せ半分を手渡した。他の二名も同じように渡していた。
この一本道を東へ歩いていく。殺風景な眺めが疲労を蓄積させる。遠い、遠いなぁと思っていると少し先に大きな木が道の傍らに立っていた。10キロは歩いただろうか。木陰になっており、いい休憩場所になるようだ。当然のように休憩となった。それぞれが水分を摂ったり、座ったり、寝転がったり思い思いの休憩をしている。私も木陰に尻を付けて座った。ここでもなぜか私の横に女が膝を抱えて座っている。ふと私は少し遠くに違和感を覚える。行く方向の1キロ先くらいだろうか。待ち伏せて窺っている集団を感じる。大隊クラスの戦力だろうか。(フ)が居ないようだ。全てが(ホ)以上の人員らしい。総数で50名程度。盗賊や夜盗とは違うらしい。薄々感じていた誰かの思惑が私の中で確信に変わっていった。いつの間にか横に座っていた女が私の上着の裾を握り、私を見ている。彼女も感じとっているみたいだ。サーチ系の精度の良い質を保持しているらしい。多分、(ヒ)が2名と(へ)3名であとは残り(ホ)全てか。よくもここまで集めたものだ。ちなみに全て(は行)のこれらはギフト持ちのランク付けを意味している。簡単に言うと(フ)は(普)とか(歩)と表記されることもあるがほぼギフトなしであり、(ホ)はホルダーのホと考えると解りやすい。(保)とも表記される。(へ)は(併)とも表記されギフト複数持ち、ほとんどの場合は二つ。(ヒ)はヒーロー級でギフトが複数連動していてかなりの強さになる。サーチ等の補助系ギフトもあるので連動したギフトでなければそこまで戦力は上がらない。ただ補助系でもサーチ系で相手の戦力が予め解れば戦略的に優位にはなるのだが。ただ、個人戦力、単純単体では連動がという話である。ギフトの話だが例えば居合斬りはその場で剣を抜き一般的な(フ)よりも100~200分の1秒で身体が動き対象物を斬ることが出来る。一般人と比べて数百倍の速さがあるということである。疾風と言われるモノは移動速度が極めて速い。10~100分の1秒で簡単に間を詰められ懐に入られる。刃を水平にして通り過ぎるだけで斬られる。ただこの場合は剣戟にギフトが籠もってないので刃が長い行程を通り過ぎるような感じだ。ただ通常の一閃よりは遅くなる。連動したギフトでは疾風迅雷などがあり、素早く移動しながら剣戟にギフトを込めて自由に振るうことが出来る。一瞬で集団に踏みこみ意図を持って自由に斬ることが出来るのである。極めて稀な連動ギフト持ちであるが相手からすれば凶悪な攻撃となる。それが2名ほど居るようなのだ。しかし、これほどの戦力を用意するあたり明らかに意図を持った集団だ。とりあえず私は誰かの思惑通りの行動をすることに決めた。ガチャガチャと釣り具の多い荷物の中から飾り気のない鞘を抜き白銀の細身片刃の剣を引っ張り出した。私と女以外はまだ誰も気付いていないようだ。
様子を窺っていた集団が動き出した。我々のところまでの行程半分のところに来た時点で元戦闘員たちは慌てだした。「敵襲ーっ、敵襲ーっ」と一人叫んでいる。こちらの戦力は最初からアテにしていない。せいぜい(小隊戦力)くらいだからだ。
「はぁ」・・一回大きなため息をつく。心の中で思う。(面倒だ。面倒だ。非常に面倒だ。)
補助ギフトのステルス(隠密)を解く。私を見ている隣の女の目が一瞬大きく見開かれた後若干ほほ笑むように見えた。
女を見て(ね?)と同意を求めるように心の中で言う。先方は攻撃態勢に移ったようだ。水色のオーラを纏った中に黄色が3つ、赤っぽいオレンジ色が2つ見える。(サーチ系持ったヤツが居ないんだね。)ギフトを発動すると見える者には身体に皮膜というか殻というのか難しいがより濃く覆われ色で斬撃の質も含め解るのだ。先方は私が隠密解除しても態勢に変化なし・・。私は周りの誰にも告げず行動に移す。ギフト発動。徐に移動し始め敵中に向かって速度を上げる。視界の周りが黒く染まってくる。しかし視界の中心は明瞭に映っている。スピードを上げれば上げるほど視界が狭まってくる。景色全てが止まったように見える。オーラを纏う集団に到着した。オレンジの二人は若干驚いた顔になりつつある。他のモノたちの視点が私の元居た場所になっている。この集団の抜刀した剣に向けて軽く斬撃を加えていく。あまり強い斬撃だと受けた方は無事ではない。一通り相手全ての剣に斬撃を加えたところで素早く帰投し、ギフトを解く。瞬間、50回ほどの斬撃音がほぼ重なって轟音となって響き渡る。と同時に斬撃を受けた相手方武器全てが砕け散った。それからすぐに静寂に包まれる。全ての者が微動だにしない。手に持っていたであろう武器が砕け散ってしまったのだ。現状を把握する為には多少の時間はかかるだろう。
「はぁ」・・今一度私は溜息をつき、テクテクと集団のところまで歩いていく。さっきオレンジ色を纏っていた一人に近づいて腕組みをし様子を窺う。未だに口を開けたまま見つめられている。「で・・どうする~?」と問いかけるとポカーンと3秒ほど口を開けたままふと我に返り「こ、降参します。」と慌てて答えてきた。その返事を聞いてまた木陰まで戻って「やれやれ」と言いつつ腰を下ろしタバコに火を付け紫煙を燻らせ休憩を再開する。その間、陣営問わず全員立ったまま何が起こったのか把握出来ずに呆然としている。タバコの火を消した頃、ようやく一人の者が話しかけてきた。
「先ほどは貴方様にご無礼を致しました。誠に申し訳ございません。お預かりしたお金はお返し致します。もしよろしければ私のお金もお持ち下さい。」私は苦笑いしつつ、「いいよ、いいよ、俺の預けた分だけ返して。それと他の人のもね。」と言うと話しかけてきた男は直立不動のまま「いえ、大変ご迷惑をおかけしましたので何卒・・」私は少し苛立ち「だから、いいって!」と言うとその男は直立不動で敬礼をし「失礼いたしました!」と言いつつ慌てて他の人の分のお金も返していた。
待ち伏せしていた連中も全員ぞろぞろと近づいてきた。誰も言葉を発しない。すでに自分たちに自由意思はないかのように今後の行動の指示を受けるような雰囲気を感じる。
(さて、後片付けしないとな・・。)
立ち上がると全員が私に注目する。私は頭を掻きながら「解散」とひとこと言うと、両戦闘員の口がぽかーんと開きすぐに「困ります。指示を与えてください。」とオレンジ色だった一人が言う。続けて「ましてや武器もすでにありませんし、丸腰ではどこにも行けません。」「貴方様に付いて参ります。」と言われる。他に言葉を発する者がおらず総意に近いと感じる。勿体ぶるつもりはないが、結局ここからは全員分の責任をどういう形であれ背負うということになるので気が重い。「それなら・・私はアーセナルと一部で言われているところに行こうと思っている。」「そもそも私はそれぞれ個人を縛るつもりは全くない。」「一旦、そこに行って今後どうするのかゆっくり考えればいいんじゃないの?」と言うと「え?」という声が複数あがり驚いている。その内一人が「アーセナルを御存じなのですか?」と驚いて聞いてくる。「いや、正式に呼ばれている訳でもないし、あんたたちの思うところと違うかもしれないけど知っているよ。」「知り合いも居るし・・」と答えるとどよめきがが起こった。「我々はアーセナルに行きたかったんです。是非、よろしくお願いします。」
何気に全体が活気に満ちている。(やっぱそういうことか・・。)
「ひとつ確認しておくけど、乗り気じゃない者は付いてこなくていいよ。むしろ、付いてきて欲しくない。」「行ったら行ったとして簡単に帰られるとは思えないから。」少なくとも公になっていないところを考えると秘匿されている可能性があるのでのちのち災いの種を持ち帰ることになった原因にされては困るという気持ちもある。一人ひとりに目を向けて雰囲気を感じとるが反対もしくは否定的な感じはしない。
「じゃ、行くか!」と大きい木の北に向けて獣道に近い道筋を歩いて行った。
道すがら質問攻めにあった。「ここから北には街は存在しないのでは?」『いや、普通にあるよ。誰も知らないだけだよ。』「貴方様は覇道の方なのですか?」『なにそれ知らんし。』
「貴方様であれば一国・・いや、すべてを・・」の質問は遮った。『身の丈に合ったことだけで充分でしょ。何を多く求めようとするの?多くを求め責任の持てる対応が出来るの?私には無理よ。そもそもなんの実力もないしね。そういう器じゃないってことでしょ。』と言うと一時沈黙が続いた。周りの納得できないという感じが伝わってきた。その手の質問は正直面倒だ。大抵『なにそれ知らんし。』で済ませている。「あの技はなんだったのでしょうか?」『ああ、武器破壊?いやほら戦い終わらせるには手っ取り早いでしょ?それで金属性で作って貰ったの。』「金属性とは言え、あそこまで簡単にはいかないはずです。銘刀とお見受けしますが。」『そうなの?知らんけど、見てみる?』と気軽に手渡す。渡した者は慣れた手つきでしかしながら慎重に鞘から抜き柄から刀身を外し銘を見ているようだ。驚愕の声が響き渡る。「えーーーーーっ!FlyingDutchmanのフルスペルですか!しかも刀工名入り!あり得ません。」「見たことも聞いたこともありません!」「ましてや、傷一つ付いていない!」頭を掻きながら『そうなの?知らんけど。』「私が知っている限りではFDと表記されているモノでも一級品。FlyingDまでのだと一国の宝物庫に国宝として大事に扱われている代物です。」拙かったかなと少し反省しながら『あ、ごめん。見なかったことにしてくれる?』と苦笑いしつつ頭を掻いた。ちょっと面倒になってきたので『ごめん、アーセナルに着いたら他の人に聞いてくれる?俺、そういうの疎いから。』余計な事を次々に言ってしまいそうなので押し黙る事にした。周りではヒソヒソ声は聞こえるが静かながら活気に満ち満ちていくことが解るくらいの雰囲気になっていった。私はそれとは反比例し、とっとと肩の荷を下ろしたい気分だった。
三時間ほど歩いただろうか、行き先に一人の男が私たちを見て立っている。にこやかな表情で待っている。
ここから先は考えてもおりません。さてどうしたものか・・・。
当面、書かない・・いや、書けないかも・・釣りに行けない・・行かない。
かけるやろ?むう・・。