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真夜中のとりかえごっこ

作者: 砂藪

近作品は、天鵞絨ビロォド企画様がTwitterで開催したTwitter内展示企画「おみみのおはなし」に出した作品になります。



「アケミ、最近いいことあった?」

「あ~、分かっちゃう?実は私さ、『真夜中のとりかえ様』をやったんだよ」


 真夜中のとりかえ様。その名前はアケミの話を聞かずともミエも知っていた。最近、噂になっているおまじないのようなもの。自分の気に入らない部分を好きに取り換えてくれるらしい。


「アケミは何を取り換えるようにお願いしたの?」


 ミエがアケミに聞くと彼女は笑いながら「胸、かなぁ」と答えた。顔の一部分だと答えたら変わっていないじゃないかと言うことができるが、胸となると確かめることもできない。


「……ねぇ、そのとりかえ様ってどうやるの?」


 ミエがアケミの話を否定も肯定もせずに聞くと彼女は嬉々としてとりかえ様の方法を教えてくれた。


 ミエは家に帰り、真夜中の午前二時のなる前に一階へと降りた。

 まずは、家中の電気を消す。それから風呂場に行き、鏡の前に水を張った桶を置いて、さらにその桶の横にイチゴの飴を置く。そして、こういうのだ。



「とりかえ様、とりかえ様、私の耳をとりかえてください」



 ミエの悩みの種は自分の耳だった。最近は休みの日に友達がイヤリングをしているのを見て、一度、自分の耳にもつけようとさえ思ったのだ。しかし、自分の耳は他人と比べると嫌になるほど大きな福耳。友達は「気にすることはない」と言ってくれるが、ミエにとっては気にしないなんてことはできない大きな問題だった。


 こんなのは気休めにしかならない、と分かっていながら、風呂場の鏡の前に膝をついてお願いする。


 しばらくして、ミエはため息をついて、ズボンのポケットの中からスマホを取り出した。二時から五分ほど過ぎている。何も起こらないから片付けて部屋に戻ろうとスマホのライトをつけた。


「え?」


 イチゴの飴は、包装だけ残されていた。ふと、鏡を見る。スマホのライトがあって、鏡が見える。


『とりかえっこ、してくれるんでしょ?』




 翌日、ミエが学校に行くと親友のエリがきょとんと目を丸くした。


「あれ、ミエちゃん。なんか雰囲気変わった?」


「そう?あー、あれかな?『真夜中のとりかえ様』をしたんだよ」


 ミエがにこにこと話すとエリはますます首を傾げた。ミエはあまりそういうおまじないを信じるような女子には見えなかったからだ。それにやったとしてもそれを嬉々として人に話すような性格でもなかったような。しかし、よくよく見てみると彼女の特徴的な福耳が他の人と大差ない大きさになっていることに気づいた。


「もしかして、耳を……?」


 エリの言葉にミエはにこりと微笑んだ。


「今度、一緒にイヤリング、買いに行こ」



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