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3つのMが重なる時  作者: 暁 さくら
第一章 開幕
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第2話 初めての異世界へ

 俺は若葉市で探偵をしている水谷 晃と助手の南 朱里だ。

つい先日、俺たちはアパートに住んでいる二人組のカップル、大津 隼人さんと石橋 渚さんが行方不明になった事件を捜査していた。捜査は難航していたが、二人が住んでいた部屋にゾーンのような物を発見する。

 捜査に難航していた時、ゾーンから来たと思われるシュリルに出会う。そして、事件解決のためにゾーンの先に繋がる異世界へと足を踏み入れようとしていた。

朝起きると心地よい風が俺を刺激する。ついに今日なのだと気持ちを高ぶらせる。そう、今日だ。ついに異世界に行くのだ。


家の隣にある事務所の扉を開くと中には朱里が寂しそうに窓の外を眺めていた。扉の開く音に気づき、こっちにやってきた。

「おはよう、晃。」

「おはよう。」

「ついに行くのね。」

「ああ。この事件を紐解く方法はあのゾーンを解明する他ない。」

朱里は笑顔で話しかけるが、どこか心配そうに俺を見る。

「心配するなと言っても無理だとは思う。俺も不安しかない。でも、いつまでも行かないと助けられない。だからこそ行く。」

「うん、わかっている。でも、やっぱり心配する人がいることもわかって。」

「ああ、ありがとう。」


 シュリルが起きて、身支度を済ませる。そして、アパートに向かう。

「久しぶり、探偵さん。」

「今日はこのために来てくださってありがとうございます、双葉さん。」

「話は聞いたわ。気をつけなさい。」

「ありがとうございます。」

大家さんとはゾーンを見つけて以降、今日の相談をしたくらいだ。心配で食べ物が喉を通らないことが増え、げっそりとしている。あのゾーンの存在、この部屋に住んでいる二人のこと、そしてなにより俺のことを心配してくれているようだ。

「双葉さん、とても心配してくださってありがとうございます。いち早く事件を解決できるように尽力を尽くします。大変な役を請け負ってくださり、ありがとうございます。そして、大変申し訳ございません。」

「いえ、あなたが謝らないで。私が依頼したせいで巻き込まれているのだから。」

「双葉さん、あなたは何も間違ってはいない。アパートの住民が姿をくらまし、心配しして俺に捜査を依頼した。これは間違ったことではない」

「ええ。良い報告をお待ちしています。」



 大家の双葉さんに部屋の扉を開けてもらい異世界へと旅立つ。

「シュリルがこちらの世界に来たのはここで間違いない?」

「うん!!間違いないよ。」

「それじゃあ、行こう。」



 ゾーンに入ると急に意識が飛び、目を覚ますと異世界にたどり着いていた。

「シュリル、起きて。」

部屋の隅にはゾーンがある。きっとこれがアパートのゾーンと繋がっているのだろう。そして、俺の隣にはシュリルが意識を失っている。声をかけるとゆっくりと目を開ける。

「ん……晃?」

「気が付いたか?」

シュリルはグーッと伸びをする。そして周りを見渡す。

「ここは僕がいた世界!!戻ってこれたんだ!!」

シュリルは久しぶりに戻ってきた世界に喜びいろんなものを触り始める。

「シュリル、ここは君の世界のどこなの?」

「僕が来た時から位置が変わっていなければ、アシュラムにある魔術塔の中にある倉庫なんだけど……うん。間違いないね。」

「なるほど。とりあえず、この世界のことを知らないと話が始まらない。」

「でも、晃がこのまま出ていくと危ない。晃は魔法が使えない。この魔術塔は魔法が使える人しか入れない。」

「そうかわかる限りでいいからこの国の構造を教えてほしい。」

「まず、僕たちがいるここが魔術塔。魔法が使える人たちが常に魔法の訓練や魔術について学び、生活するところ。塔は三つに役割があって上が護衛室で常に国の周りを監視している。中が僕たちの暮らしている場所。下が訓練や研究室になっている。この塔の出入り口には常に番人がいて、その番人に軽く能力を見せることで塔に入ることができる。」

「なるほどね。ほかはどうなっている?」

「塔の隣には外壁に囲まれた王宮がある。そこにこの国を治めているアラジン様がいらっしゃる。基本的に国王様は王宮から出てこなくて、記念式典とかをやる時のだけ僕たちは王宮の庭に入ることが許されているけど、国王様は王宮の二階にある特設室にいらっしゃるだけ。そしてその周りに普通の住民が暮らしている。」

「なるほどね。魔法が使える人はどれくらいいるの?」

「どのくらいかはうまく説明できないけど100人いたら1人が魔法使いって感じかな?」

「そっか。厳重に管理されている塔の中から俺が出てきたらそれこそ大変だよな。」

「この国では魔法使いは神様の使いって言われているからね。」

「それは何で?」

「昔、神様がこの世界を作り始めたときに魔法でいろんなものを生み出した。けど、人々はそれを奪い合うように争った。それに怒った神様自身がこのアシュラムを作った。そして、その子孫が今の国王様。そして、アシュラムを作る時に神様自身が何人か使い魔を連れてきた。そして、その子孫が僕たち魔法使いって感じ。だから神の血でできた僕たちは神聖なる存在として崇められているんだ。」

「なるほど。そうなると俺はここから動けないのか。」

「そ、そうなるね……」

「早速行き詰ったな……」

二人して頭を抱える。俺が出られないのじゃこの世界を調べることも迷い込んだ二人のことも探せない。シュリルはゆっくりと俺を見る。

「ぼ……はなして……くる。」

「どうした?」

「だから、僕がきちんと国王様に話してくる。それまで、待っていてほしい。きっと前に言っていた、晃の世界から来た人たちはこの魔術塔の中で見つかり不届き者として捕まっているはずなんだ。」

「なんだって!?」

「僕が晃のいる世界に迷い込むよりも前に魔法が使えないのに魔術塔に入り込んだ不届き者がいるって。でも、捕まっているだけで、ひどいことをされているとは聞いてないからそのことも含めて僕が事情を話してくる。この部屋はめったに人が来ない。だから待っていてほしい。」

「わかった。」

「急いで行ってくる。」

シュリルは部屋を勢いよく飛び出した。



 シュリルは部屋を出てとにかく塔を出ることを考えた。すると後ろから声がする。

「シュリル?ねえ、シュリルよね?」

「アイリーン?」

「良かった。いなくなって心配したんだよ!!」

「アイリーン、ごめんね。僕は急がなきゃいけない。今すぐにアラジン様に会わなくてはいけないの。」

「アラジン様に!?王宮にいらっしゃるとは思うけど。どうしたの?」

「すごく大事な話があるんだ。僕がやらなきゃいけないことだから。また後で。」

シュリルはアイリーンをおいて走り出した。アイリーンは僕を心配してついて来ようとしたが僕が必死に走っていると見失ったようだ。

 魔術塔では何人かに声をかけられたと思うが、目もくれず一心不乱に魔術塔を出て、すぐ近くにある王宮へと向かった。



 王宮の門前まで来た。しかし、ここからが問題。たとえ魔法が使え、国で崇められる存在であっても国王様に易々と会えるわけではない。

「門番さん、僕は国王様に大切な言伝を持ってきました。会わせてください。」

「君は魔術師のようだが、国王様は常にとてもお忙しいお方。貴様に会わせるような時間はない。」

「先日、確保された異国民について知っているとしても?」

「なに!?」

門番は慌てだした。異国民について情報が何もなく、捕らえたが対応に困っていたため、異国民についての情報を欲していた。

「今、確認してくるからそこで待っていろ。」

二人いた門番のうち一人は王宮の中に入っていった。残った一人がシュリルのことを睨みつけるかのように見てくるがシュリルは真剣な眼差しで王宮を見ていたため気にならなかった。



 王宮に入っていった門番が戻り、門をゆっくり開けた。すごく渋々という感じだ。

「入れ。特別に許可が下りた。」

「わたくしがご案内いたします。」

門番の後ろについてきていたメイドさんがゆっくりとお辞儀する。



 メイドさんについて行き、応接間に入る。さすが王宮と言わんばかりに神々しい。

「こちらで少々お待ちください。」

メイドさんに案内された部屋にて待つ。廊下はドタバタと慌ただしくなっている。

「メイドさん、こんなに忙しそうなのに僕が来ちゃって大丈夫だったの?」

「大丈夫ではないのですが、先日の異国民について国王様も困っていらっしゃいました。そしてこの特別許可は国王様の判断ですので。」

「そうなんですね。ありがとうございます。」



 ほどなくして、国王様が入ってきた。

「待たせて申し訳ないね。君が私に言伝があるのかな?」

「アラジン様。お忙しい中、貴重なお時間をありがとうございます。私はシュリルと申します。」

シュリルは今までの出来事を順に話していった。魔術塔の一部屋にゾーンが現れ、異世界と繋がってしまったこと。そこの世界から迷い込んでしまった人たちがいること。そして、自分自身もゾーンにて異世界に行ったこと。そして、こちらの世界に来てしまった人を救い、このゾーンについて解明しようとしている人がいること。徐々に国王様の顔つきが険しくなっていく。

「なるほど。我が国にてそんなことが起こっていたとは……」

「今回の一連の話を踏まえてのお願いなのですが、事件解明のために私が異国の世界で出会った一人の男を連れてこようと思っているのですが、よろしいでしょうか?」

「ふむ、それは許可しよう。しかし、連れてきた際にはまず、私に顔を見せることだな。以前のように混乱を防ぐためだ。そして、その人が来て話をしたのちに確保している二人を解放するか決めるそれでも良いかな?」

「はい、快いご決断ありがとうございます。」



 話を終えたシュリルは王宮を出て、魔術塔に戻る。魔術塔に入ってすぐの場所にアイリーンが待っていた。

「シュリル!」

「アイリーン!どうしたんだい?」

「国王様に会いに行くって言って飛び出していったから気になっていたの。」

「アイリーン、心配かけてごめん。無事に国王様にお会いしてお話しできたよ。」

「国王様、お忙しいのによく会えたね。シュリルも忙しいかもしれないけど、みんな心配していたんだから挨拶して。」

「わかった。」



 アイリーンに連れて行かれて団欒室に向かった。

「シュリルだ!!」

「シュリル!!帰ってきたの!!」

みんなシュリルに声をかける。シュリルの周りに人が集まる。

「みんな、心配かけてごめん。僕は今、やらなきゃいけないことがある。僕は無事に戻ってきたからまた話そうね。」

シュリルは簡単にみんなに声をかけ、部屋を出た。



 シュリルは晃の待つ倉庫に向かった。

「晃!!」

「シュリル!」

晃は倉庫の中で軽く仮眠をとっていた。

「シュリル、どうだった?」

「アラジン様から許可をいただけた。でも、混乱を招かないためにもまずはあいさつに来いと。」

「まあ、それが普通よな。外はもう暗いのか?」

「うん、もうすぐ日が落ちそうだよ。」

「そっか、とりあえずあっちから持ってきたパンがあるからこれを食べて今日はここで過ごそう。明日、正式に国王様に挨拶に行こう。」

晃はカバンの中からクロワッサンを三つほど出す。もしもの時の食料として持ってきていたようだ。そのクロワッサンを食べ、倉庫の死角になる物陰で眠った。



 数時間後、目を覚ます。

「シュリル、起きろ。」

「晃?どうしたの?」

「少し朝早いと思うけど、ほかの魔術師に見つかる前に王宮の近くまで向かってしまおうかとおもって。俺が来ることを国王様は知っているとしてもほかの魔術師は知らないだろ。もし何かあったら混乱を招きかねないからさ。」

「わかった。」

二人は荷物を持ち、倉庫をゆっくりと出る。



 廊下は人気がなく、とても静かだ。できるだけ物音を立てないようにゆっくりと進んだ。外はまだ薄暗く日が昇り始めたばかり。ほとんどの魔術師は寝ているためか誰とも会わずに魔術塔の出口までたどり着く。

 問題はここからだ。門番に不審がられずに魔術塔を出なければならない。この世界に来る前に中世ヨーロッパ風のローブなどを作っては来ているが、どう見ても不自然なのだ。魔術師は魔術を使うときに邪魔になるからとローブを好んで着ないようなのだ。しかし、絶対に着ないとは限らないため、顔を隠し魔術塔を飛び出した。

 二人は王宮近くの路地まで進んだ。

「王宮にいつ尋ねる約束になっているの?」

「こっちに来たらっていう話だから今日いければ大丈夫かなって。」

「何時にとかの約束はないの?」

「何時?どういうこと?」

「まさか時間の概念がない?人と約束するときにどう約束しているの?」

「日が昇った直後、日が昇って温まってきたとき、日が沈みかけて空が赤くなった時、日が出ていないときくらいかな?」

「なるほどね。」

そう。この世界には時間の概念がない。ざっくりと太陽の動きや空の様子で察しているようだ。



 日が昇り、人通りが増えてきた。晃とシュリルがいるのは大通りから外れた路地裏のため、スラム街までいかずともホームレスのような人がちらほらいる。そのため、ほかの人達が来ることはほとんどなく重い空気が漂っている。

「晃、そろそろ行く?」

「そうだね。王宮に向かおう!」



 日が昇る前に動いたおかげで、王宮まで数分で着く。

「シュリル様、お待ちしておりました。国王様がお待ちです。」

門番はシュリルを見るとすぐ門を開けてくれた。



 門番の一人に案内され、応接間に通される。

 応接間に向かっている最中、すれ違うメイドたちに晃を見ては何か噂話をしている。確かに見たこともないような物を身に着けていることもあるだろうが、国のトップを動かすほどの人なのかと見定めているようにも見えた。

「ただいま、国王様をお呼びいたしますので、しばらくお待ちください。」



 しばらくして、扉が開く。

「お待たせして大変申し訳ない。」

「いえ、こちらこそ貴重なお時間をいただき誠にありがとうございます。」

晃は深々と頭を下げると、シュリルも慌てて頭を下げた。国王様は私の方をじっくりと見る。

「君が異世界から来たという人かね?」

「はい、水谷 晃と言います。」

「なるほど。シュリル君から軽く話を聞いただけで事情がよくわかっていないのだ。説明してもらえるかな?」

「はい。」

俺は今までの出来事について話をした。国王様の顔つきが険しくなっていく。誰もがこのような話をされたら険しくなるだろう。

「……というような出来事が起きております。ここからは私の考えですが、この世界と私たちがいた世界は何かしらの因果があると思います。たくさんある世界の中でこの世界と私たちの世界には何かしらの関係があるからこそだと思います。もちろん、目的はわかりませんが。」

「なるほど。君はその因果を調べるためにこの世界について調べたいということだね?」

「はい。」

「問題はないが、こちらからもある程度の条件を出させてもらう。その服装は変えてもらう。さすがに目立ちすぎる。もちろん代わりの服装はこちらで用意するため用意したものに着替えてもらえれば大丈夫だ。あと、我が国の国民に下手な刺激をしないでほしい。対話とかはもちろん構わないが、君の世界での常識が必ずしもこの世界の常識とは限らないということだな。調査でいろんなところに言ったり話を聞いたりするのは問題ないが国民を混乱させないようにということだな。」

「はい、もちろんです。お願いなのですが、調査のために魔術塔に入ってもよろしいでしょうか?私の国では魔術を使えるものは存在しません。魔法は幻なのです。ですが、魔術塔にゾーンが現れた以上、何かしら関係があるとみています。」

国王さまは少しばかり考えた後、席を離れた。

 少しして、戻ってきた国王様には小さな紙を持っている。

「これは私が書いてきた許可証になる。魔術塔の者たちに話しておくから出入りをするときにそれを提示してくれ。」

「ありがとうございます。」



 ある程度話が進み、私たちはとある部屋に向かった。そこはこの世界に迷い込んでしまった二人がいた。二人は俺を見てももちろんポカンとするだけだが、順を追って説明した。

「私はあなた方を探すように依頼された探偵の水谷 晃です。先に確認いたしますが、大津 隼人さんと、石橋 渚さんで間違いないですね?」

二人はこくっと首を縦に動かした。

「お二方が暮らしていたアパートの大家さん、双葉 恵子さんに行方不明になったと依頼を受けました。」

依頼を受けてからここまでのいきさつをざっと話す。

「わかりました。私たちのためにありがとうございます。私たちにできることはあまりないですが、協力させてください。今回は、私たちの部屋でしたので被害がほとんど出ませんでしたけど、人がたくさん集まる場所でしたらたくさんの被害者が出ていたかもしれませんし。」

「ありがとう。私もこの世界の調査はこれからなのだ。だから、もしよければ調査に協力してほしい。」

「ありがとうございます。」

隼人さんと渚さんとは合流し、分かち合うことができた。その様子を見ていた国王様も微笑んでいる。

「君たちが悪い者たちではないとわかってこちらも安心したよ。できるだけ、酷い目には合わせたくはなかったからな。」

「いえ、こちらこそ今まで私たちのことをとても気遣ってくださってありがとうございます。」

隼人さんと渚さんは国王様に深々と頭を下げる。国王様は申し訳なさそうに二人の肩に手を置く。

「この先何が待っているかわからない。気を付けなさい。」

「はい、ありがとうございます。」



 国王様との挨拶と和解を済ませ王宮を後にする。ついにこの世界の謎を解く準備がそろった。

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