【結】
さて今回はいよいよ起承転結の【結】の回です!
初っ端から戦闘シーンで始まったこのトラブルの行方はいかに?
今回は文字数が少し多くなっております。
《4》
刀剣の紅い刀身が煌めくと、胴をあるいは縦に、あるいは上下に斬り裂かれ、機械部品を撒き散らし頽れる兵士人形!
俺の横ではコーゼストが増幅光束で次々にソルジャードールの頭や胴を撃ち貫き、その傍ではアンシェリーナが青く輝くレイザーブレードでソルジャードールを斬り伏せている! ルアーナも巨大な氷柱を魔法で生み出しソルジャードールを破壊している!
そして俺達は襲い来るドール全てを打ち倒したのである。
「ふぅーっ」
構えを解いて大きく息を吐く。ここまで機械人形を何十体と斬り倒してきたが流石は緋緋色金の刃、刃毀れひとつ無い。
「しかし抵抗が段々強くなって来た気がするな……」
「そうですね。その分機導頭脳に近付いている証拠では?」
倒したソルジャードールを検分していたコーゼストが戻って来ながらそんな事を宣う。
「何れにしても、この先もこう抵抗が多いと流石に骨が折れるな……」
「それに関しては何らかの対策を講じる事は出来そうです。少し時間が掛かりますが」
どうやらコーゼスト先生には手があるらしい。ここは任せる事にしよう。俺はアンシェリーナと彼女の治療していたルアーナに声を掛けると全員で歩を進めるのだった。
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それからも何度となくソルジャードールの襲撃を受けながらも進む俺達。トランゼが運んでくれたのは機械之塔への入口であり、入口から塔までの迷路を突破しなくては辿り着けない様になっていたが、迷路の攻略方法はコーゼストが把握していたのである。何でもトランゼが安置されていたあの部屋の壁一面にあった複雑な規則性のある模様が、この迷路の正しい道順を示していたとの事で、それを明確に記憶していたコーゼストに先導され進んでいた。良く考えたらコーゼストはこうした事は得意中の得意だったのを俺はすっかり忘れていた。
そして今は何度目かの戦闘中──
「くそっ! コイツら本当にしつこいな!」
コーゼストを庇いながらソルジャードールと切り結んでいる俺! 戦闘に入って直ぐにコーゼストが倒したソルジャードールに手を添えると、「少しの間お願いします」と言って動かなくなってしまったのだ! なのでコーゼストを護る様に俺とアンシェリーナ、ルアーナが立ち回っていた。
「ウィルさん! コーゼスト様はどうしたのでしょうか?!」
「わからん! ただ何かをやっているのは確かだ! 兎に角ここは護りきるぞ!!」
ルアーナが叫ぶ様にコーゼストの事を聞いてきて、ソルジャードールの剣を受け止めながらそれに何とか答える俺。続けてアンシェリーナの悲痛な声が響く!
「ですが敵の数が多過ぎませんか?!」
「くっ!? このままでは──」
──押し切られるかと思った次の瞬間
「──お待たせしました」
「?! コーゼスト!」
「今止めます──改竄」
目覚めたコーゼストがそう唱えると斬り掛かって来ていたソルジャードールが急に動きを止め、文字通り糸の切れた人形みたいにガチャリとその場に倒れ込む!
「……何をしたんだ、コーゼスト?」
急に辺りが静まり返ったなか、唖然とするアンシェリーナとルアーナを横目に見ながら俺はコーゼストを問い質す。
「倒したソルジャードールの制御核を利用して、他のソルジャードール達に行動停止の偽の命令を送り込みました。これで全てのソルジャードールは停止している筈です」
問い掛けに事無げも無く答えるコーゼスト。
「ソルジャードール全てですか……」
ルアーナは驚いて言葉を無くしているが、まぁコーゼストだしな。
「何か今、物凄く失礼な事を考えませんでしたか、マスター?」
コーゼストがジト目を向けて抗議してきた。なかなか勘が鋭いが
「とにかくだ! これで邪魔者は居なくなった訳だな! なら先に進もう!」
この際無視する事にした。コーゼストはジト目で暫く見つめていたが
「わかりました。ではこちらに」
諦めたみたいに通路の先に先導する。
すまんな、今は突っ込みに受け答え出来るほどの余裕が無くて!
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塔までの道中は今までと打って変わり、物凄く静かなものになった。通路の所々には待ち伏せていたソルジャードールの群れが折り重なって倒れていた。
「何と言うか……凄い眺めだな」
「先程改竄の為、彼等のコントロールコアに接続した時に確認しましたがこの迷路には推定で2500体のソルジャードールが配置されていたみたいです」
「そんなにか?!」
それを聞いて思わずゾッとした。コーゼストが手を打たなかったら俺やルアーナ達だけでそれだけの数を相手にしなくてはいけなかったからだ。ルアーナやアンシェリーナも同じ思いらしく顔が蒼褪めている。
「それにしても……コイツらはもう目を覚まさないんだろうな?」
こんな所で一斉に襲われたら目も当てられない。
「それは大丈夫です。主演算頭脳であるマシンブレインでも簡単に解けない様に命令は複雑な暗号にしましたので」
「それなら安心か……」
「あ、あの……」
俺とコーゼストの会話にルアーナが割って入る。
「コーゼスト様って何者なのですか? あまりにも人間離れしていて……」
当然の疑問である。仕方ない、教えておくとするか…… 。
「あーっとな、コーゼストは人間じゃ無いんだ。自動人形なんだ」
「「えっ!?!」」
驚くルアーナとアンシェリーナに俺はコーゼストが元々魔道具で機械の神から機械の身体を得てこの世界に来た事を説明した。最初は驚いていた2人だが、話を聞き終え「だから人間離れしているのですね」と納得していた。
「でも、最初にお会いした時にお話していただきたかったですわ」
ルアーナが少し拗ねた顔をする。
そんな事言われても……なぁ?
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何だかんだはあったが無事に迷路を突破し、塔の最下部まで辿り着いた。入口の扉の前に立つと独りでに扉が開きひとつの部屋が姿を現す。俺達は警戒しながら部屋の中に入ると独りでに扉が閉まり、僅かな振動が部屋全体を包む!
「これは……部屋が丸ごと上に向かい動いています……」
コーゼストがそう分析結果を口にし、やがて振動が収まると再び扉が開き──
『ここマで来たカ』
目の前に一抱えもあるクリスタルが太い線に支えられ宙に浮かび、そのクリスタルから無数の線が伸び周りにある様々な機械に繋がっている。機械の類は部屋一杯に置かれ、何が何の機械なのかさっぱりわからない。宙に浮かぶクリスタルは声に合わせゆっくり明滅していた。
「お前が──機導頭脳──いや、機械之神か?」
『イかにも』
俺の問いに答えるマシンナリー。何と言うかここまで大掛かりな装置だとは思わなかった。
『ヨクぞ兵士人形たチを打ち倒シコこまで来た。だがソレモここまで。私自らがオ前達を滅してくレヨウ』
その台詞と同時に機械の陰に隠れていたソルジャードールが4体飛び出して来た! どうやらコイツらはマシンブレインが直接操っているみたいである! だがそのドール達も俺とアンシェリーナが立ちどころに切り伏せたが。
『ホホう、なかなかヤルでは無いカ』
この状況になっても態度を変えないマシンナリーに何となくイラッとする俺。一方到着してからじっとマシンナリーを観察していたコーゼストが
「──成程、あなたの故障箇所がわかりました。そしてどうすれば良いかもね」
と、こちらも偉そうにマシンナリーに言い放つ。
『キさまナニを言っていル?』
「先ずは少し黙っていて下さいね」
そう言いながら激しく明滅するクリスタルに近付きクリスタルから伸びている太い線の下部に手を当て
「──侵入開始」
一言呟くと今まで激しかったクリスタルの明滅が不意に消える。
「主演算装置に侵入──主記述命令を確認──読取り開始────確認──メインプログラムを停止」
コーゼストの呟きと同調する様に周囲の機械類も停まって行く。
「──全停止を確認。これで修理が出来ます」
「いや、随分素早いなオイ!?」
事無げも無く宣うコーゼストに思わず突っ込む俺。
「いえ、早いのはこれからです」
そう言うとクリスタルに繋がる少し太いコードを辿るコーゼスト。見ているとコードの途中が切れかけていた。何かに噛み切られたみたいにも見える。
「どうしたんだ、これ?」
「原因は恐らくコレです」
何が何だかさっぱりわからない俺に答えを示すコーゼスト。その手には小さく干涸らびた何かが──何だそりゃ?
「恐らくは鼠か何かの類だと思われる小動物です。この塔に迷い込み餓死したのでしょう。あまりの飢餓にどうやらこのコードを齧ったみたいですね」
掌にある死骸を示しながらコーゼストの説明が終える。何と言うか……こんな些細で単純な事でこの世界が危機に見舞われていたと思うと何とも言えない気持ちになる。
俺は魔法で破損していたコードを修復するコーゼストを見ながらそんな事をぼんやりと考えるのだった。
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その後──ついでに整備もしてマシンブレインを再起動すると
『感謝します』
正常に戻ったマシンブレインが礼を述べてきた。何でもトラブルが起きたのは直ぐにわかったのだが、手を打つ前に暴走してしまいそのままになってしまっていたらしい。
『本当に御礼の言葉もございません。これで私も再び人間に奉仕が出来ます』
「この塔の小動物避けの結界も調整しておきましたから今後この様な事が起きる事も無いかと、まあきちんと自己管理をしていただければですが」
『はい、わかりました。異世界から来た機械技師様』
お互いに言葉を交わすマシンブレインとコーゼスト。どうでも良いが俺とルアーナ、アンシェリーナが空気である。
《終わったようだね》
その時不意に声が響く。明らかにマシンブレインやコーゼスト、ルアーナやアンシェリーナの声では無い全く別人の声が。辺りを見回すルアーナやアンシェリーナとは別に、俺とコーゼストはその声が誰なのか見当がついていた。
やがてマシンブレインが置かれている部屋の中に光が満たされると、光がヒトの形を成すとその姿は大きくなり
《御苦労様だったね》
美しい女性の姿が現れた──と言うか、俺達の所に現れた時とは随分違うんだな。
《これが本来の姿なんだよ。こちらでは制限が掛からないからね》
俺の思考を読んでニッコリと笑うデア──機械の神。
「あ、あの、ウィルフレド様。このお方は…………?」
呆然としていたルアーナが掠れた声で聞いて来る。
《初めましてだね、ルアーナ皇女。私が神だよ》
ルアーナの問い掛けに笑顔で答えるデア。自らの世界の神だと知ったルアーナとアンシェリーナは「は! ははぁーーー!!」と頭を床に擦り付ける程に平伏する。まあこの反応も当然だな。
「兎に角これで依頼達成だろ?」
《うん、これ以上無いくらいの満点で達成だね》
「それにしてもデア、貴女の世界なんですからもっと良く管理をした方がいいと思いますが」
俺がデアから依頼完了の言を取っていたら、コーゼストが苦言を呈して来た。それを聞いたデアはバツの悪そうな顔をすると
《そうだね、今回の件は色々と考えさせられたよ。コーゼストの言う通りもう少し気を付ける様にするね》
そう言うと「ごめんね」と手を合わせて来るデア。何と言うか、この神様は軽い!
《さてと、それでは約束通りに君達を送還するとしようか》
「ちょ、ちょっと待て!」
すぐさま俺達を還そうとするデアを制し、俺は床に額を擦り付けているルアーナとアンシェリーナの元に近付く。
「ルアーナ、アンシェリーナ。2人には世話になったな。俺達はこれで帰るがこれからは皆んなとこの世界を立て直して欲しい」
「えっえっ!? もうお別れなのですか? もっとこの世界に留まっていただければよろしいのですが……きっと父も国を挙げてウィルフレド様達を歓待いたしますでしょうに」
何と言うか……そう言う仰々しいのは勘弁して欲しいからサッサと帰るんだが?!
《ルアーナ皇女、無理を言ってはいけない。彼等はこの世界では異物なんだ。だから早く帰さないとその皺寄せでこの世界が壊れかねない》
俺の思考を読んだのかデアがルアーナを説得してくれた。ナイスである! ルアーナはデアに言われた手前、おずおずと頭を下げると「残念です……」と呟く。
「ウィルフレド様、コーゼスト様、本当にお世話になりましたっ」
アンシェリーナも名残惜しそうに言葉を漏らす。
《ではもう良いかな? それでは改めて君達を送還するね》
デアがそう言うと目の前に魔法陣が床に現れそこに入る様に指示をされる。ルアーナとアンシェリーナが魔法陣の外から見送る姿勢を取ると
《それではウィルフレド君、そしてコーゼスト、本当にありがとう──送還》
魔法陣が一際輝きを増し俺達は転移の光に包まれる!
「ウィルフレド様! コーゼスト様! 本当にありがとうございました!」
「お元気でーーっ!!」
ルアーナとアンシェリーナの2人の声が微かに聞こえ、俺達はこの『アウロア』から掻き消えたのである。
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眩しい光が薄れ視界がはっきりして来ると、俺はラーナルー市を見下ろす丘の上に居た。
「帰って来た……のか?」
目の前に広がる城塞都市ラーナルー市を見てぼんやりとする俺。
『帰って来たんですよ。私達は』
ふと声が聞こえ左肩に目をやるといつもの妖精姿のコーゼストが居た。
『あれは夢でも幻覚でもありません。私の中にある記憶がそれを証明しています。私にとってもとても貴重な経験でしたしね』
「そうか……夢じゃ無いんだな」
コーゼストの力強い言葉に自然と笑みが零れる。
『さあ、戻りましょう。私達のラーナルー市に』
「お前さぁ、随分仕切るじゃ無いか……」
コーゼストと相変わらずの軽口を叩き合いながら俺は懐かしいラーナルー市に歩を進める。アンやルアンジェにどう説明しようかと考えながら。
そういやデアに加護を貰うのをすっかり忘れていた!
トラブルを無事収め自分達の世界に戻ったウィルとコーゼスト。それにしてもコーゼストがチート過ぎました(笑)
そして加護を貰い忘れるウィルも相変わらずであります。些か駆け足気味でしたがこれにて「すぴんおふ/でうす・えくす・まきなの箱庭」完でございます。楽しんでいただけたでしょうか?
☆明日は13時に本編「なぜか俺のヒザに毎朝ラスボスが(日替わりで)乗るんだが?」新年第一回目の投稿になります。そちらも是非ともお楽しみに!
http://ncode.syosetu.com/n8501eq/
☆そして「魔法と銃との異界譚 〜Tales of magic and guns〜」も12話まで更新中! 近未来の地球の民間軍事会社の傭兵クリスと異界から来た大魔導師ルーツィアの2人が主人公の冒険譚です! こちらはなろうとノベプラにて展開中! 是非ともよろしくお願いします!
なろう→http://ncode.syosetu.com/n0259fr/
ノベルアッププラス→http://novelup.plus/story/529278724




