【その③】
お待たせしました! 本日は2026年スピンオフ、ラストの【その③】をお送りします!
意気揚々とルピィが居る冒険者ギルドへとやって来たマーユちゃんと愉快な仲間達(笑)! ここで何も起きない訳もなく……とんでもない事態に巻き込まれます(笑)!
それではお楽しみ下さいませ!
【その③】
「えっ、ええっ!? ま、マーユ!? い、一体今日はどうしたの? ウィルは一緒じゃないの?」
何の前触れも無くいきなり冒険者ギルドにやって来た、マーユとファウストを初めとする従魔達一行を見て驚きの声をあげるルピィ。周りに居る他の冒険者達やギルド職員達も、ルピィの声に吃驚して何事かと此方を見ている。
「うん! お父さんは一緒じゃないよ! 実はね──」
満面の笑みでそう言うと、ルピィに今日の『探検』について話して聞かせるマーユ。最初は驚いていたルピィだが、マーユの話を聞くにつけ徐々に落ち着きを取り戻していき
「はァ……そんな話になっていたのねぇ。それでファウスト達を一緒に連れて来てるのね」
話の最後には色々と納得し、理解も示してくれた。
「くふっ、そうなのですわルピィさん。妾達は今日一日マーユちゃんの守護役を、主様から直々に言われましたの」
ルピィの台詞に従魔達を代表して、ニュクスが誇らしげに話をする。ニュクスの言葉に頷く事で同調を示すファウスト以下の従魔達。やはり同じ従魔の中でもニュクスが一番理知的に見えなくもない──多分に偏見が含まれているが。
「兎に角そう言う事なら、私としても安心出来るわね。皆んな、マーユの事を宜しく頼むわね」
ニュクスの言葉にそう言って微笑むルピィ。
「任せなさいっての!」
今度はヤトが従魔達を代弁する形で元気良く返答する。
その一連のやり取りを、マーユは満面の笑みを浮かべながら見ていたのであった。
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「それにしても……」
一通りの話も終わって、徐ろにそう呟くのはルピィ。
「ファウストやデュークはいつもの事なんだけど、ヤトやセレネやニュクスが小さくなるのは本当に久しぶりねぇ……そこにもってきてイーヴァインまでも小さくなっちゃって……本当に可愛いわぁ♡」
そこまで言うと、ルピィは頬に手を当ててホゥ……と艶っぽい溜め息をひとつ漏らす。その目には怪しい光が宿っているのが見える。そんなルピィの様子に思わず身を硬くするヤト。最初に出会った頃に短身モードでルピィに散々モフられた事を思い出したのだろう。
ふとマーユが周りを見ると、いつの間にか近付いて来ていた何人かの女性ギルド職員も、ちびの従魔達を虎視眈々と狙っていたりする。いつの間にかジリジリと狭まる包囲網。そして遂に──!
『『『キャーッ!』』』
嬉声を上げると同時に短身モードのファウスト達に、文字通り飛び掛るルピィ以下の女性職員達! 抵抗する間もなくルピィ達に抱っこされ、モフられるちび従魔達!
「ギャーッ! やっぱり!?」
「な、な、なんですの?!」
「わ、妾達をどうするつもりですの?!」
「な、なんじゃ!? 一体何をするんじゃ?!」
ルピィ達にもみくちゃにされて、慌てふためくヤト達! ファウストとデュークはもう慣れっこだし、マーユは目を白黒させて事の成り行きを見ている。
こうしてヤトやセレネやニュクス、そしてイーヴァインは、ルピィ達の「モフり」と言う地獄(笑)の洗礼を受けるのであった。
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「はぁ……やっぱりファウストの抱き心地は最高ねぇ……」
ある女性職員がファウストをモフりながら、そう口にすると
「ううーん、デュークも抱き心地がこうしっくり来るのよねぇ」
ある女性職員はデュークを抱き上げながら、やはりそんな事を口にし
「あらァ? 私はやっぱりヤトが好きよぉ。この鱗の触り加減が何とも気持ちいいのぉ」
ある女性職員はヤトの蛇身を撫で回しながら、悦に浸り
「私はやはりセレネの柔らかい毛並みが好きだわァ」
またある女性職員はセレネの身体を触り……もといモフりながら、その様な台詞を言葉にし
「ハァハァ……ニュクス様ァ、その剛毛に覆われた蜘蛛の体、最高ですわァ♡」
またある女性職員はニュクスに対して多少……いや結構危ない思考を垂れ流しており
「んん〜♡いつも厳ついイーヴァインも、こんなに小さくなると可愛いわぁ♡んー、萌えるわぁ」
そしてルピィはルピィで、イーヴァインに頬擦りながら新たな境地に立とうとしていた。
そんなルピィと女性職員達にされるがままの、ファウストを初めとする従魔達。皆一様に目が死んでいるかのように見えるのは、決して気の所為では無いはずだ。
「ルピィお母さんもお姉ちゃん達も、そろそろファウスト達を離してあげて! ファウスト達が可哀想だよ!」
結局マーユが全員にそう訴えるまで、この狂乱は暫く続いたのである。
何事も度が過ぎるのはいけない、という戒めが良く分かる出来事だったのは言うまでも無い。
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そんなこんなで漸くルピィ達の手から解放された、マーユとファウストを初めとする従魔達一行。
「「クゥーン、クゥーン」」
「ヴ……酷い目二会いまシタ」
「はァ……やれやれだわ……」
「ふぅ……御主人様から話には聞いていたけど……」
「本当に……『伝聞よりも体験が一番良く理解を促す』とは、正にこの事ですわね」
「儂は主殿と戦った時以来、初めて身の危険を感じたぞい……」
漸くモフり地獄から解放されて、ゲッソリした様子のファウスト以下の従魔達。
「私も……お父さんからルピィお母さんの事は聞いていたけど、あんなになるなんて知らなかったよ……」
ファウスト達と同じく疲れた表情を見せるマーユ。とんだとばっちりである。
兎にも角にもそうして冒険者ギルドを出て、西の正門を──郊外の丘を改めて目指す事にしたマーユ達一行。さぁこれからと言う所で
「マーユぅ、私お腹空いちゃったァ」
「恥ずかしながら、私もですわ……」
「くふ、妾も同じく」
ヤト以下の魔物娘'Sが、声を揃えてそう宣う。
「それじゃあ、途中の屋台で何か買って食べようか?」
そんなヤト達に苦笑しながら、そう提案するマーユ。
こうして途中の屋台で肉串を買って、西の正門へ向かうマーユ達なのであった。ここに来てウィルがマーユの小型肩掛鞄に密かに忍ばせていた銀貨が、漸く日の目を見る事になったのである。
まぁマーユはポシェットに銀貨が10枚も入っていた事に吃驚していたが、それもまたご愛嬌だ。
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賑々しくそんな事をしつつもマーユと愉快な仲間達(笑)は、無事にラーナルー市の唯一の出入口である西の正門までやって来た。
「テックスさん、こんにちはーーーッ!」
正門を護る顔馴染みの門番の衛兵の1人に、そう元気良く声を掛けるマーユ。テックスと呼ばれた衛兵は
「うん? やぁ、マーユちゃんじゃないか。今日はお父さんと一緒じゃないのかい?」
笑顔でマーユに返事を返すと、ウィルの事を改めて尋ねる。
「うん! 今日はね──」
マーユはルピィにも話した今日の『探検』について、再度テックスに話して聞かせる。それを黙って聞いていたテックスは
「……成程なぁ。それで今日はファウスト達だけなのか」
1人得心が行ったみたいに深く頷く。
「それで……と。目的地は彼処の丘の天辺までなんだね?」
テックスはそう言うと、正門からやや北寄りにある小高い丘を指差して確認する。距離にすると凡そ1キルトぐらいか?
「そうだよ! あそこからラーナルー市のぜんぼーを確かめて来るのッ!」
屈託のない笑顔でそう宣うマーユ。
「よしッ、それじゃあ気を付けて行ってくるんだぞ? あまり遅くならないようにな」
そう言うと改めてマーユ達一行を正門から送り出すテックス。
「はーいっ! 行ってきまーす!」
「「「「「行ってきますッ!」」」」」
「「ワンワンワン!」」
マーユとヤト達は手を振り、ファウストは尻尾を振って、テックスに挨拶を返すと、目的地へ意気揚々と向かうのであった。
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「ふんふーん、ふんふん♪ふんふふんふーん♪」
えらくご機嫌な様子で最後の目的地である丘へ、鼻歌を唄いながら小鳥のように軽やかに歩んで行くマーユ。そのすぐ後ろからはファウストを初めとする従魔達が、やはりご機嫌な様子でマーユの後に続いて行く。
目的地の丘の麓には北にあるリータグ市に繋がる街道が通っており、ラーナルー市とリータグ市を行き交う旅人達が、そんなマーユ一行を少し驚いた顔で見てくるが、マーユ達は全く意に介さない様子で只管目的地の丘を目指し進んで行く。
やがてマーユの足で凡そ15分ほど歩いて、一行は丘の麓まで到達した。
「ううーん、結構上まであるの……かなぁ?」
下から丘の上を眺めて、ポツリそう呟くマーユ。この丘は周囲より高いが、山よりは明らかに低く、傾斜が緩やかな地形をしており、標高は凡そ50メルト有るか無いかだ。
「さぁマーユ! ここまで来たら登りましょうよ!」
「そうねぇ、それが此処に来た目的ですものねぇ」
「くふっ、そうですわね。此処まで来て、登らないと言う選択肢は有り得ませんわね」
「そうじゃのう、折角ここまで来て目的を達成せんと言うのは、些か勿体ないからのぅ」
「……それを決メルのはマーユちゃんでス」
「「ワンワンワンッ!」」
ファウスト達従魔達の声援を受けて
「よーし!それじゃあ丘の頂上目指して出発ッ!」
マーユはふんす!と気合を入れ直して、頂上へと続く道を愉快な仲間達と登り始めるのであった。
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「よいしょ、よいしょ、よいしょ」
緩やかな丘の斜面をそう気合の声を出しながら登るマーユと
「「ワンワン!」」
「マーユちゃン、頑張ってくだサイ」
「ほらほら、頑張れ! マーユッ!」
「そぅら、マーユちゃん! 頑張ってぇ!」
「もう少しで丘の頂上ですわよ、マーユちゃん」
「そうじゃぞい! あと一息じゃ! 共に頑張ろうぞ!」
そのすぐ後ろで銘々にマーユに声援を送るファウスト達ちび従魔。
「う、うん! ありがとう皆んな! よいしょ、よいしょッ!」
ファウスト達の声援に元気良く答えながら歩を進めるマーユ。そうして麓から登り始めること凡そ30分、遂に──
「うんしょ、うんしょ、うんしょッ! や、やったぁ! とーちゃくゥ!!」
──マーユはファウスト達と共に、丘の頂上へと辿り着いたのである。
「「ワオーーーン!」」
「良く頑張りマシタね、マーユちゃン」
「やったわね! おめでとうマーユ!」
「うふふッ、遂にやりましたわねマーユちゃん♡」
「くふふっ、おめでとうございますマーユちゃん」
「遂にやったのう! おめでとうじゃな! マーユちゃんッ!」
ファウストは遠吠えと共に尻尾を振り、デューク以下のメンバーも口々にマーユを誉めそやす。
「皆んなありがとうッ! 皆んなのおかげでここまで来れたんだよ!」
マーユはマーユで、頂上へ辿り着いた高揚感で頬を紅潮させながら、ファウスト達にお礼の言葉を投げ掛ける。
そうして全員で改めて丘の頂上からラーナルー市の全貌を眺めるのであった。
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そうして今回の『探検』の最終目標を達成したマーユとファウスト達。丘の頂上から眺めるラーナルー市の全容はなかなか圧巻であり、誰もが暫し声も無くその景色に圧倒されていた。やがて何分か経った頃
「はぁーっ、満足したぁ! それじゃあ皆んな、ラーナルー市に戻ろうよ!」
徐ろにそう宣うのはマーユ。それに頷く事で同意を示すのはファウスト達ちび従魔。そうして今一度頂上からの景色を目に焼き付けてから、登ってきた道を引き返して麓へと降りラーナルー市への帰路につく一行。その道中も
「あーっ、楽しかった! ね、皆んな!」
「「ワンワンワンッ!」」
「マーユちゃんが楽しメタなら良かったデス」
「さぁ! 帰ったら美味しいご飯を食べるわよ!」
「うふふ、私は帰ったら御主人様に褒めてもらうわァ♡」
「くふっ、妾も主様に褒めてもらいたいですが、先ずはマーユちゃんを無事に主様の元に帰らせないとですわね」
「うむ、ニュクス殿の言う通りじゃな。儂らはその為に今日は共に行動しておるのだからな」
マーユやファウスト達ちび従魔が中々に姦しい。
そうこうしてる間にラーナルー市の正門が近付いて来た所で
「あれは……お父さんとコーゼストお姉ちゃん?!」
誰よりも早くマーユが正門に佇むウィルとコーゼストの姿を見つけた。一行の姿を見つけると、盛んに手を振るウィルとコーゼスト。
「お父さぁーん! コーゼストお姉ちゃーん! ただいまァ!!」
そんな2人に声を上げて手を振り返すマーユ。
「マーユ! 皆んな! お帰りッ!」
「マーユちゃん、皆んな、お帰りなさい!」
出迎えの言葉をマーユ達に投げ掛けるウィルとコーゼスト。2人に向かって駆け寄って行くマーユと、その後ろに急いでついて行く従魔達。
こうしてマーユの小さな『探検』は無事に終わりを告げたのであった。
最後にウィルの親馬鹿ぶりが発揮されたのは……まぁ許容範囲内ではあるが。
~おしまい~
とんでもない事態とはルピィ以下のモフリスト達によるちび従魔達へのモフり地獄(笑)でした! とんだ災難にも会いましたが、何とか無事に目的地に行って帰ってこれたマーユちゃん達一行! これにてマーユちゃんの『小さな探検』は終わり。同時に2026年スピンオフを終わりと相成ります! 本年最初の本編は1月11日から更新されますので、そちらもお楽しみ下さいませ!




