【その②】
お待たせしました! 本日は【その②】をお送りします! ウィルの庇護から離れて(?)小さな『探検』へと繰り出したマーユちゃんとファウストを初めとするちび従魔達一行! さて、ラーナルー市のマーケットまで来た一行に一体何が待ち受けるのか!?
それではゆる〜くお読み下さいませ!
【その②】
住み慣れたラーナルー市の第一層区画の東区、つまり市場へとやって来たマーユとファウストを初めとする愉快な仲間達一行。
事ある毎に良くウィルと訪れているマーケットだが、こうしてマーユが(お供付きであるが)1人で訪れるのは何気に初めてだったりする。
「よぉし! まずはマーケットにとーーちゃくぅ!」
「「「「「オーッ!」」」」」
「「ワンワンッ!」」
無事(?)マーケットに到着し1人気炎を上げるマーユと、それに合わせて声を上げるヤト達やファウスト。道行くヒト達は楽しそうなマーユ一行を見て、誰もが笑みを浮かべている。
そうした歓声を上げた後は特に何かを買う訳でもなく、ただ店先に並ぶ様々な商品を眺めていくマーユとその一行。特にマーユはこうして見る行為自体が楽しいらしい。マーケットに店を出す店主や店員も、その殆どがマーユにとっては馴染みのあるヒト達ばかりであり、そんなマーユ一行をほっこりとした気持ちで見守っていたりする。
やがてマーユ一行がマーケットの外れまで来ると、大通りから1本外れた細い路地の奥から、何やら子供達の騒ぎ声が聞こえてきた。
「? 一体何だろうね?」
そう言うが早い、声がする方へと向かうマーユ。その後を急ぎ付いていくヤト達。
果たしてマーユ達の目には、高い木の枝に登って降りれなくなっている子猫と、その子猫を助けようとやはり高い木に登り、必死に手を伸ばしている男の子と、その様子に声援を送る子供達の姿が飛び込んで来たのであった。
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「「「がんばれーーーっ!」」」
高い木の幹の下で、木によじ登った男の子に必死に声援を送るのは男の子2人と女の子1人。男の子は男の子で太い枝まで登ると、子猫がいる細い枝へ一生懸命に手を伸ばしながら
「も、もう安心だからな……さ、さぁ、こっちに来るんだ……」
出来る限りの優しい声で子猫に語りかけている。
「にゃーん……にゃーん」
男の子の言葉に子猫はそろりそろりと、細い枝を伝ってゆっくりと男の子の方へと、這い蹲ったまま恐る恐る歩んで行く。その様子を固唾を呑んで見守る子供達とマーユ達。
だが男の子が伸ばした手まであと少しの所で、体勢を崩してしまい、細い木の枝から落ちそうになる子猫! 我を忘れて思いっきり腕を伸ばす男の子! その手は何とか子猫を掴む事が出来たが
「う、うわあああーーーッ!」
今度は子猫を掴んだ男の子がバランスを崩して、子猫ごと高い木の枝から落下する!
「「「ああッ!?」」」
幹の下で見ていた子供達からは、悲鳴にも似た声が上がる!
「お姉ちゃん達! お願いッ!」
我知らず咄嗟にそう叫ぶマーユ! すると!
「──『上昇気流』!」
「──『風壁』!」
セレネが『上昇気流』の魔法を、ヤトが『風壁』の魔法をそれぞれに口にする! 下から吹き上げる強風が男の子の落下速度を急激に低下させ、そして男の子の身体に濃密な空気の塊が纏わり付き、地面への激突を防御する!
結果として男の子と子猫は、無傷で地上へと降り立ったのである。
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無事に地上へと降り立った男の子の周りに、先程まで幹の下で声援を送っていた子供達が「わーッ!」と叫んで集まる。その様子にマーユはホッと胸を撫で下ろすと
「セレネお姉ちゃん! ヤトお姉ちゃん! ありがとうッ!」
セレネとヤトの2人に感謝の言葉を投げ掛ける。
「うふふっ、マーユちゃんのお役に立てて何よりよ♡」
「ふふーん、任せなさいっての!」
マーユの言葉に嬉しそうに答えを返すセレネとヤト。するとそこに
「な、なぁ、お、お前らが俺を助けてくれたのか?」
子猫を抱いた先程の男の子がマーユ達に声を掛けてきた。他の子供達はいきなり現れた魔物連れのマーユを、警戒しているのか少し遠巻きで見ている。
「うん、そうだよ! 正確には私じゃなくて、セレネお姉ちゃんとヤトお姉ちゃんが魔法で助けてくれたの!」
男の子の問い掛けに笑顔で答えるマーユ。それを聞いた男の子は
「そうなんだ! 何にしても助かったぜ! ありがとうなッ!」
破顔一笑、マーユ達に向かってお礼を口にする。遠巻きにしていた子供達も口々に「ありがとうッ!」と言うと、マーユ達の所へ駆け寄って来て、ファウストやデュークやヤト、セレネやニュクスやイーヴァインを取り囲んで、興味深そうな顔で見ている。
「ところで……お前は魔物使いか何かなのか?」
男の子がマーユにそう尋ねてくる。
「ううん、違うよ! 皆んなお父さんの従魔なの!」
男の子の問いに、満面の笑みでそう答えるマーユなのであった。
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「それでお前は……」
続けて話し掛けてくる男の子の台詞に対して
「私、「お前」って名前じゃないもん! 私にはマーユって名前があるんだよ!」
そう的確に突っ込み返すマーユ。男の子は「むぐっ」と言葉に詰まると、頭をガシガシ掻いて
「あーっ、悪ぃ。まだ名前を聞いてなかったな。お前マーユって言うのか? 俺はリッチェルって言うんだ、よろしくな!」
自分も名乗ると、マーユに右手を差し出す男の子──リッチェル。年の頃はマーユと同じくらいか。いつの間にか抱いていた子猫は、近くに居た女の子が抱き締めて頭を撫でていた。
「うん! よろしくね!」
そう答えながら、差し出されたリッチェルの手を取って握手を交わすマーユ。するとリッチェルは近くに居る子供達を、手招きして呼び寄せて
「よーし、お前らもマーユに自己紹介しろよな!」
と水を向ける。
「うん! えっと俺はクロードって言うんだ! よろしく!」
「僕はジャンと言います。よろしくお願いします」
「え、えっと、あたしはセリーヌ。よ、よろしく…… 。そ、そしてこの子があたしの猫のサディって言うの……」
「なーん」
クロードはリッチェルと同い年ぐらいの快活そうな男の子で、ジャンはマーユより年下らしい眼鏡を掛けた男の子で、セリーヌは更に年下っぽく少しオドオドした女の子で、抱っこしている猫のサディをマーユに紹介する。紹介された子猫のサディは、マーユに向けて可愛い声で自己紹介をするのだった。
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「「ワンワンワン!」」
「ヴ……私は剛鉄岩人形のデューク。よロシくお願いシマす」
「私は半人半蛇のヤトよ! 皆んな、よろしくねッ!」
「うふふっ、私は女王蛾亜人のセレネと言うのよ。皆んな、宜しくね?」
「くふっ、妾は女郎蜘蛛の、名をニュクスと言いますの。皆さん、良しなに」
「そして儂は暗黒霊騎士のイーヴァインと言う者じゃ。皆んな、宜しくな」
短身モードの双頭魔犬のファウストを筆頭に、デュークが、ヤトが、セレネが、ニュクスが、そしてイーヴァインが、リッチェル達に銘々に自己紹介をする。
「「「「よ、よろしく」」」」
片やファウストを初めとする従魔達の自己紹介を受けたリッチェル達は、その迫力に若干気圧されたみたいにたじろいでいたりする。
そんな中、ジャンだけは
「オルトロスにアダマンタイトゴーレムにラミアにモスクイーンにアラクネにリビングアーマー……?! そ、それってウィルフレド辺境伯閣下の所の従魔達じゃないんですか!?」
1人だけ的確に、その事実を言い当てる。一方でジャンの台詞を聞いていたマーユは
「うん! そうだよ! ウィルフレド・フォン・ハーヴィー辺境伯は私のお父さんなのッ! 私の本当の名前はマーユ・ジョゼ・ハーヴィー=ファンティーヌって言うのッ!」
殊更嬉しげに驚愕の事実をあっさり口にする。
「「「「え、ええーーーッ!?」」」」
路地裏いっぱいにリッチェル達4人の吃驚した様な大声が、綺麗に重なって鳴り響くのであった。
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「はぁ……マーユってお姫様だったんだな」
マーユの衝撃の告白に呆然としていた子供達だが、その中でいち早く立ち直ったリッチェルが、盛大な溜め息と共にそう言葉を漏らす。
「皆んな、驚かせたみたいでごめんなさい。でもそういう事は気にしないでいてくれると嬉しいんだけど……ダメかな?」
一方のマーユはと言うと、実に申し訳なさそうな顔をしながらリッチェル達を見つめていた。全く……正に『この親にしてこの子あり』である。
「んんッ! ま、マーユがそれでいいって言うんなら、俺らは別に構わないぜ! なぁ、皆んなもそうだよな?!」
そんなマーユに対してリッチェルは、わざとらしい咳払いをひとつするとマーユの想いに賛同し、そして何故かクロードやジャンやセリーヌにまで同意を求める。その頬が心做しか紅い気がするのは気の所為か。
「「「それはもちろん!」」」
「にゃーん」
同意を求められたクロード達はクロード達で、一も二もなく首を縦に振る事でリッチェルの言葉に賛同する。
「皆んな! ありがとうッ!」
「「「「ありがとうッ!」」」
「アリがとうござイマす」
「「ワンワン! ワンワン!」」
リッチェル達の返答に、これまた嬉しそうにお礼を述べるマーユと従魔達。こうしたやり取りを経てマーユや従魔達と、リッチェル達との距離感は一気に縮まって、皆んな実に賑々しく話が弾む。
やはり同世代の子供同士と言う事もあり、実に屈託のない笑顔がそこにはあったのである。
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だがそうした楽しい時間が経つのは、本当にあっという間で
「ごめんなさい、リッチェル君。私、そろそろいかないといけないの」
リッチェルと愉しげに語らっていたマーユだが、教会の鐘が時を告げるのを耳にすると、とても済まなそうな顔で此処を去る旨を口にする。
「ええっ!? もうそんな時間なのか?!」
その台詞に心底残念そうな声を上げるリッチェル。従魔達やクロード達も、マーユの言葉を聞いて実に名残惜しそうである。
「うん、だって今日の私は自由に『探検』しているから、そろそろ次の所に行って無事にお屋敷まで帰らないといけないの。それがお父さんとのお約束だから」
マーユは実に真っ直ぐな目で、リッチェル達にそう話して聞かせる。
「それじゃあ、もうマーユ達とは会えないのか……?」
少し重く沈んだ声でぽつり呟くリッチェル。だがマーユは
「そのうち、またきっと会えるよ! でも今度会う時は、お父さんなんかと一緒だけどね!」
実に屈託のない笑顔でそう宣う。
「そっか……そうだよな! 同じラーナルーに住んでいるんだ! きっとまた会えるよな!」
マーユの言葉と笑顔に、元気を取り戻すリッチェル。
「じゃあまた会おうね、リッチェル君! クロード君達も!」
「「「「「それじゃあ、また!」」」」」
「「ワンワン!」」
「おう! またな、マーユ! 従魔の皆んなも!」
「「「皆んな! またねっ!」」」
そう言うとお互いに再会を誓い合いながら、手を振って別れるマーユ達とリッチェル達なのであった。
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リッチェル達と別れてマーケットがある東区から、冒険者ギルドがある西区へと移動して来たマーユと従魔一行。
何せこの『探検』は、マーユが無事にラーナルー市郊外の丘まで行って、尚且つ無事に屋敷に戻るのが目的なのだ。なのであまり時間を浪費する訳にはいかないのである。
兎に角そんなこんなでマーユ達は、ウィルと幾度も訪れている冒険者ギルドの建物の前に立っていた。
「……あらためて見ると冒険者ギルドって結構大きいんだねぇ」
マーユがファウスト達の傍で唖然としながらそんな言葉を漏らす。そんなにポカンと口を開けたままだと折角の可愛い顔が台無しである。
「うーん、確かに大きいかもだけど、私達の住んでる屋敷の方が大きいわよねぇ」
マーユの言葉を受けて、そう宣うのはヤト。だがウィルの屋敷と冒険者ギルドの建物の大きさを比較対象する事自体、そもそも間違っている気がしなくも無い。
「まぁ兎に角だ、中に入ろうではないか」
イーヴァインの台詞に気を取り直して、ギルドの大きな扉を開けて中に入るマーユ達一行。広間の中に居た幾人かの冒険者達からは、一瞬厳しい視線を向けられたが、入って来たのがマーユとファウスト達従魔だと分かると、その視線も直ぐに霧散した。
一行はロビーの奥にある総合受付の帳場まで行くと、マーユがカウンターの内側で事務作業をしている人物に声を掛ける。
「ルピィお母さんッ!」
「はい? えっ!? マーユじゃないの?!」
ルピィの驚いた声がロビーに響き渡るのであった。
急転直下、街の子供達と急接近するマーユちゃんと愉快な仲間達(笑)! 残念ながらボーイ・ミーツ・ガールとはなりませんでした! 何かを期待していた方々、申し訳ありませんでした!
次回【その③】は明日10時に更新しますのでお楽しみに!




