【①】
新年明けましておめでとうございます!
2024年初っ端からお届けする「俺ヒザ」のスピンオフ! 今回のスピンオフは時間軸的には第274部/本編259話と第276部/本編260話の間の話となります! 但し本編には一切関係ない話ですので予めご了承くださいませ!
それでは『魔物娘達のとぅえんてぃふぉー』【①】をお楽しみ下さい!
【①】
「お邪魔するであるよ」
俺の誕生日晩餐会から何日か経ったある日、俺が屋敷でだらけていたら、突然何の前触れも無く唐突に、腐れ縁の魔法士ラファエル・アディソンが朝から屋敷に顔を出した。なので応接室にて応対中である。
「ラファエル……今日はなんかあったのか?」
彼の顔を見るなり、そう棘のある物言いで言葉を投げ掛ける俺。コイツが何の用事も無く俺の所を訪ねて来るなんて有り得ないからな。それに十中八九面倒事だろうし…… 。だが俺のそんな物言いも全く意に介する事なく
「うむ。今日此処を訪ねたのは貴様では無くコーゼスト殿に用事があって来たのであるよ」
物凄く真剣な面持ちでそう台詞を口にするラファエル。此奴がこんな顔をするとは珍しい。
「ラファエル殿が私に用事とは……一体なんのお話でしょうか? もしかしなくても技術的なお話しでしょうか?」
俺の直ぐ横でラファエルの台詞を聞いていたコーゼストが、彼に自身の推測を交えた問い掛けをする。
「うむ! そうなのであるよ! 実は先日市場にある古道具屋で、「魔王の庭」で見つかったと言われる魔道具の類を大量に購入したのだが、それ等を私の屋敷に来て一緒に解析してもらいたいのである!」
コーゼストの問い掛けに我が意を得たりとばかりに嬉々として答えるラファエル。ほらな、やっぱり面倒事だった!
「ふむ……そう言う事でしたら私に否やはありませんね」
彼の答えを聞いてそう返すコーゼスト。その辺は流石、似たもの同士である。
やれやれ…… 。
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とりあえずここで話をしていても埒が明かないので、魔道具の現物が置かれているラファエルの屋敷に向かう。此方のメンバーは俺とコーゼストと、アン・エリナ・レオナの奥様’Sとマーユとルアンジェ、そしてヤト・セレネ・ニュクスの魔物娘’Sである。
アン達奥様’Sは兎も角、何でヤト達まで付いて来たかと言うと「単に暇だから、暇潰しに」だそうだ。因みにファウストとデュークはいつもの短身サイズで顕現しており、それぞれアンとエリナに抱かれていたりする。更に因みにジゼル達分隊『戦乙女』が「魔王の庭」に潜っているので、自動的にスクルドは居なかったりする。
「それで? 一体幾つの魔道具を手に入れたんだ?」
道すがらラファエルに肝心な事を尋ねる俺。それによっては何日か解析に掛かるかも知れん。
「そうであるな……ざっと50はあるやも知れん。何せ一山幾らで売っていた故……」
一方俺に聞かれたラファエルは歯切れの悪い返事を返して来る。どうやら彼は叩き売りされていた魔道具の山を丸々買ったらしい。
「何だよ、そんな事しているとノーリーンに怒られるぞ?」
「いや……もう充分過ぎる程ノーリーンには叱られたのであるよ……」
ノーリーンの名前を出したら物凄く遠い目をしてボソリと呟くラファエル。前からずっと思っていたんだが、ラファエルも屋敷での家庭内序列は俺と同じ底辺みたいである。
俺は思わずラファエルの肩を無言で叩くのであった。
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「皆様、この度はこんな主人の為にご足労いただきまして有難うございます」
ラファエルの屋敷に到着すると、侍女のノーリーンが玄関先で深く腰を折って俺達を出迎えてくれた。
「……私には何も無いのかね? ノーリーン?」
「はい、旦那様もお帰りなさいませ。ウィルフレド様方に失礼はしませんでしたよね?」
「それはそれで酷くないであるか? 私とてその辺はちゃんと礼節をわきまえているつもりであるよ」
「礼節をわきまえている方は他人様に迷惑は掛けないものですが?」
「うぐぐ……」
帰宅早々にラファエルがノーリーンに文字通り食ってかかるが、あっさり言いくるめられて二の句が告げないでいる。ノーリーン、相変わらず絶好調だな。やはりこの屋敷での家庭内序列はノーリーンが序列一位でラファエルが底辺みたいである──まぁこの2人しか居ないけど! 仕方ない、助けてやるか……はァ。
「あーっと、ノーリーン? お小言はその辺にしておいてやってくれないか? 流石にここまで来て依頼主のコイツにごねられるのは勘弁して欲しいからな」
「はい、そうですね。それでは続きはまたあとに致しとうございます」
俺の言葉にそう言って一旦鉾を収めるノーリーン。一方のラファエルは死んだ魚のような目をして、目に見えて落ち込んでいる。
「そ、それじゃあラファエル! 早速その魔道具の山とやらを見せてくれないか?」
俺の言葉に「そ、そうであるな」と俺達を自身の研究室へと誘うラファエル。
やれやれ、漸く本題に入れる…… 。
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「これがそうか……」
ラファエルに案内されて彼の研究室に足を踏み入れた俺達。目の前の作業台の上には種々雑多な魔道具類が、文字通り小山の様に堆く積まれていた。これはなんと言うか…… 。
「なぁにコレ? ガラクタばかりじゃない」
俺が何と言うべきか言葉を選んでいると、ヤトが目の前の小山を見るなりズバリ言ってしまった。そんなにハッキリ言うんじゃありません! 見ろ、ラファエルが今にも泣きそうじゃないか!
「ほらご覧なさい、旦那様。ですから私はこんな物に大金を払って買ってきても無駄遣いだと言ったんです」
ヤトの台詞を聞いたノーリーンはこれ幸いとばかりに、ラファエルに辛辣な言葉を投げ掛けて来た。またもや「うぐぐっ」となり、ノーリーンに言い返せないでいるラファエル。仕方がない、また助けてやるか…… 。
「コーゼスト、この山の中で使えそうな魔道具はどの位有りそうだ?」
「はい、少しお待ち下さい──・・──・──判りました。ここに置かれている魔道具は総数67点、そのうち使えそうな魔道具はざっと17点程ですね」
俺の言葉に即座に反応し答えるコーゼスト。その辺はやはり流石である。
「すると約2割半か……」
コーゼストの報告を聞いてそう呟く俺。一緒に聞いていたアン達奥様’Sも凄く微妙な顔をしている。つまりは残り8割近くは塵芥と言う事であり、コーゼストの言葉に白く燃え尽きているのはラファエル。
こればかりは助けてやれんな、悪いが!
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「まぁ使えない魔道具も9割方は素材として再利用出来るので、あながち無駄でもありませんよ?」
そんなラファエルの様子を見かねたコーゼストから真逆の支援である。
「……そうであるか?」
あ、ラファエルの死んだ魚みたいな目に生気が戻ってきた。
「さ、さてとラファエル! そしてコーゼスト! その使えそうな魔道具をサッサと解析しちまおうぜ!」
ラファエルが立ち直りかけてきたところで、無理矢理話題を本題に戻す俺。そうでも言わないと、何時まで経っても終わらないからな。
「う、うむ! そうであるな! それではコーゼスト殿、ひとつ宜しく頼む!」
漸くやる気になったラファエルがコーゼストにそう声を掛けて作業に入った。
「それではラファエル殿。その魔道具の山を一旦私の無限収納に収納しますね」
そう言うが早い、魔道具の山の下に魔法陣が出現し、次の瞬間には積まれた山が作業台の上から掻き消える。
「こうして私が使えると判断した魔道具だけを共に解析した方がより効率的ですからね。勿論使えない魔道具は後で纏めてお渡ししますのでご安心を」
ニッコリ笑いながらそう言うと「それでは少しお待ち下さい」と宣い、目を瞑るコーゼスト。同時に彼女の頭上には幾つもの魔法陣が展開しゆっくりと明滅する。その辺は流石『既知世界一番の魔道具』を自負するだけの事はあるな。ことこう言う事に関しては信頼出来る。
俺は解析中のコーゼストを見て、そう思うのであった。
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それから数分経ち、コーゼストの頭上の魔法陣が消えた。
「お待たせ致しました」
同時に彼女は目を開けてそんな言葉を口にする。
「いや、そんなに待っていないが……」
「そこは様式美ですよ? マスターも察して下さいね?」
彼女の台詞に俺がそう返すと、真逆の突っ込みを返された──何か色々とすまん。
「さて、気を取り直して──私が走査した結果ですが、最終的に完動品の魔道具が17点、一部修理すれば使えるのが7点、どう見ても使えない壊れた塵芥が43点になります」
「うぉい!? 言い方ァーーーッ!?」
解析結果の報告の中でサラリと毒を吐くコーゼストと、その物言いに思わず突っ込みを入れてしまう俺。見ろ、ラファエルが再び真っ白に燃え尽きているじゃないか!
「それでラファエル殿に相談なのですが……修理品は私がこのまま修理しても宜しいでしょうか? 修理に使う部材は壊れた魔道具を使いますので、無駄がありませんし、何より確実です」
そんなラファエルの様子を気に掛ける事なく、非情な追い討ちをかけるコーゼスト。ああもう! 混沌に混沌を混ぜ込むな!
「ああ、それは良いですね。コーゼスト様、何卒宜しく御願い致します」
そしてそんなコーゼストの尻馬に乗るノーリーンからも更なる追い討ちの台詞が聞こえてきた。お2人さん、ラファエルの奴が燃え尽き過ぎて最早灰すら残っていないんだが?
俺はそんなラファエルに「強く生きろよ」と祈らずにはいられなかった。
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ラファエルが燃え尽きて使い物にならないので放っておいて、1人で作業の続きを始めるコーゼスト。
先ずは修理品7点の修理である──と言っても無限収納内で修理を行うのでは無く、ひとつひとつ無限収納から作業台に出して、その上での作業となるみたいだ。先ずは最初の修理品を手に取るコーゼスト。
「それは一体どんな魔道具なんだ?」
その様子を見て、コーゼストにそう声を掛ける俺。
「これは──防音結界の首飾ですね。名前の通り周囲に防音の結界を展開します。有効範囲はこの魔道具を中心に半径1メルト程、結界内部の音は勿論の事、外部からの音も遮断します」
「……ヲイ」
何なんだ、そのビミョーな性能は?! 中の音は兎も角、外の音も聞こえないと何かと不便じゃないのか?! 古代魔導文明もだが古代魔族も、魔道具の性能の加減が極端かつテキトーな感じがするのだが?!
俺が1人で憤悶としている間にも、テキパキと修理を行っていくコーゼスト。
「──これで良し、と。それでは次に……」
「コーゼスト殿! その手にした魔道具は一体どんな物なのかね?!」
あ、いつの間にかラファエルが復活している。
「ああ、これは──爆裂魔法だけが誰にでも使用出来る様になる宝杖ですね。まぁ普通のヒトは魔力をかなり充填しなくては使えませんが」
ラファエルの問いにそう事も無げに答えるコーゼスト。と言うか、この2人はやはり似た者同士である。
しかし本当に古代魔族の加減は極端過ぎる……!
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兎にも角にも復活したラファエルを交えて、残りの魔道具も流れる様な動きであっという間に修理して行くコーゼスト。勿論途中で解析をしつつ、である。
「うむむ、流石はコーゼスト殿。見ている此方の方が勉強になるであるよ」
コーゼストの手際の良さをそう称賛するラファエル。いや、素人目に見てもラファエルも充分に速いぞ? 何せ彼女の体は自動人形だからな、比べる方がどうかしていると思うんだが?
「さて……ではいよいよ本命の17点の解析に移行したいと思います」
俺が1人でそんな事を思っていると、徐ろにそう宣言するコーゼスト。宣言と同時に無限収納から分別しておいた17点の魔道具を作業台の上に出す。
「さてと、では最初の魔道具ですが──これは──永続光源の宝冠ですね。効果はその名の通り永続的、但し使用者の魔力を少しづつとは言え使用し続けるので、効率的とは言えませんが」
そう言って魔道具を手に取り、解析結果を口にするコーゼスト。またえらくビミョーな物が初っ端から出てきたな?! 彼女の傍で解析結果を聞いていたラファエルが目に見えてしょぼくれているし!
「では次の魔道具ですが────ッ!?」
「? 何だコーゼスト、どうかしたのか?」
次の魔道具を手にしたコーゼストから声にならない声が上がる。それにどうしたかと呑気に尋ねる俺。
「──これは──ヒト型の魔物をヒトの姿に変身させる魔道具、つまり人化の宝玉と呼ぶべき魔道具です」
な、何だって!?
ラファエルの道楽(?)に付き合っていたら、真逆の大発見のコーゼストとウィル達! これぞ正に『瓢箪から駒』状態! 一体『人化の宝玉』とは?!
※次回【②】は1月2日10時に公開です! 是非お楽しみに!




