【Ⅱ】
2023年「なぜか俺のヒザに」スピンオフ! ウィル達の頭上に落下して来た流星! 果たしてウィル達の運命は……と言う様なシリアス展開はありません!(笑)
期待された人、申し訳ございません!
では後編【Ⅱ】をお楽しみ下さい!
俺の屋敷の前庭全体が眩い光に包まれる! 直後に襲って来るであろう流星の落下の衝撃に備えて自身の身を固くしていたが、いつまで経っても衝撃も何も来ない──あれっ?
「な、何が一体どうなってやがる、ん、だぁ?!」
抱えていた頭を恐る恐る上げると、目の前には眩い光に包まれる流星の姿が?! その様子に思わず間抜けな声を上げる俺。
一緒になって地面に突っ伏していたアン達が、俺の声に顔を上げると目前の信じられない光景に唖然としている。それは魔法障壁や螺旋風繭を展開していたヤトやセレネも同様だ。
「な、な、何なんだよ、これ???」
眩しさに目を細めながら目の前にいる流星を見て、思わずそう声を漏らす俺。そして皆んなでそろそろと立ち上がりながら、遠巻きに注意深く目の前にいる流星を観察する。
「……お父さん、これって何かな?」
「さ、さぁ……」
マーユの問い掛けに答えるべき答えを持ち合わせていない俺。アン達も「これって何?」とか遠巻きにしながら盛んに声を掛け合っているが、やはり答えが出ないみたいである。それはまぁそうだろう、それだけ衝撃的な出来事が目の前で絶賛起きている最中なんだからな。
「ふむ……」
そんな中でコーゼストだけは一言そう呟くと、未だに輝きを失わない流星についと近付き、そして徐ろに手を触れると
「──マスター、皆さん。これは自然の物ではありません。人工物──ヒトが造ったモノみたいですよ」
そうある意味で衝撃の報告を口にするのだった!
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コーゼストがそう言った瞬間、それまで眩い光に包まれていた流星から不意に輝きが消える! 光の中から姿を現したのは、丸っこい形状の何か。
丁度東方大陸で料理に使われていた底が丸い鍋の縁を合わせた様な形と言うべきか。兎に角自然界では有り得ないフォルムをしている、そんな形をした小屋サイズの謎の物体が、目の前に鎮座ましましているのだ。
「なぁコーゼスト。コイツってやっぱり誰かが乗っているの……か?」
謎の物体をあちこち見て回るコーゼストにおずおずと声を掛ける俺。因みにコーゼストにはまだ物理結界は展開してもらっていたりする。
「──生命感知センサーに反応無し。恐らくは無人機かと思われます」
「そう……か」
コーゼストの言葉に小さな溜め息と共にそう言葉を漏らす俺。これで何か乗っていたらどうするかと戦々恐々だったのは秘密である。
「じゃ、じゃあ何でこんな所にいきなり降りて来たの?」
ホッとしてる俺に代わりアンが今度は口を開く。するとアンの言葉に呼応するかの様に、謎の物体の鍋の縁の合わせ目の所から不意に光が明滅する!
「うおっ!?」
「キャッ!? な、なに?」
突然の出来事に思わず声を上げる俺とアン。エリナ達やヤト達、そしてマーユも驚いて声を上げていたりする。そんな状況でもただ1人コーゼストは冷静に
「──ふむ、どうやら体の一部分に異常があって、その修理の為に降りて来たらしいですよ」
これまた事も無げに言ってのけるのだった。
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「お前……ソイツと話せるのか?! と言うかそれは無人じゃないのか?!?」
驚いてコーゼストを問い詰める俺。すると
「はい、この光の明滅はちゃんとした符号なので意志の疎通は可能です。それと確かに無人機だとは言いましたが、コレは高度に発達した自律機械──有り体に言うと『混沌の庭園』の魔導人工頭脳「アルカ」の様な存在だと思って下さい」
またもや事も無げに平然と言い切るコーゼスト。それはまぁ「アルカ」の様な存在だと言われれば、そうなんだろうけど……「アルカ」に至っては俺達と普通に会話出来ていたし…… 。
「はァ……それで? ソイツは何と言っているんだ?」
色々と痛むこめかみを揉みながらコーゼストにそう尋ねる俺。所謂思考放棄であるのは勘弁して欲しい。俺の言葉に呼応して光を明滅させる謎の物体の意志を、コーゼストが解読して俺に教えてくれる。
「はい──自分を修理して欲しいとの事です」
「いやいやいや、それって俺らの技術で直せる物なのか?!」
謎の物体の言葉に思わずツッコミを入れる俺。どう考えてもこの物体は、今の俺達の技術よりも進んだ技術で造られているのは明白だからだ。だがコーゼストは
「そこは問題無いかと。私が彼から構造を聴きながら修理しますので。マスターには必要な部材を使用する許可を貰えれば助かります」
三度、事も無げに言ってのけるのだった。
そういやコイツも「歩く非常識」だったな、と俺は思わず納得するのであった。
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流石にこの頃になると屋敷の近所のヒト達が、一体何事が起きたのかと、屋敷の門の前に集まって来て、盛んに此方の方を指差しているのが見える。
「あーっ、やっぱり集まって来たかァ……」
思わず頭を掻いて、そうボヤく俺。それはそうだろう。なんと言ってもいきなりうちの屋敷の前庭が眩く輝いたかと思えば、いつの間にか小屋程もある見慣れないモノが鎮座しているんだからな。
俺がどうしようかとあれこれと思いを巡らせていると、「私達に任せてッ!」と門の方へと駆けて行くアンさん達。どうやら俺に代わり皆んなに説明してくれるみたいである。まぁそこはアン達に任せるとして、俺は目の前にある面倒事の原因と向き合った。
そうこうしている間にもコーゼストと謎の物体の間で会話が交わされ、コーゼストが謎の物体から言われた箇所をあちこち見て回る。どうやら修理を要する場所は1ヶ所だけではなく、複数箇所あるみたいである。因みにコーゼストが謎の物体を「彼」呼びしているのは便宜上らしい。
「こんな凄い機械を誰が作ったんだろうね?」
「さぁな……」
コーゼストの後に付いて一緒に謎の物体を見ている俺とマーユ。マーユが漏らした呟きにまたもや光って反応を返してくる謎の物体。すると作業の手を止めてコーゼストが
「マーユちゃん、この機械は物凄く遠くの星からやって来たらしいですよ。詳しい話は省かせてもらいますがね」
これまた律儀にマーユの疑問に答えてくれた。
何でも俺達が見上げている星空には、俺達以外のヒトが暮らして居るらしい。
それはそれで何だか浪漫を感じる話である。
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そんな事をしつつ1時間程経った。門の前に集まる観客の数は更に増えたが、アン達がキチンと説明してくれたらしく、特に揉め事は起きては居ない。まぁどんな風に説明したかは敢えて聞くまい。
「──これで良し、と」
そうこうしている間にコーゼストの謎の物体の修理が終わった様だ。
「終わったの? コーゼストさん?」
「はい。全ての修理、完了しましたよ」
マーユの問い掛けに自信あり気に胸を張って答えるコーゼスト。
「良く修理の部材が有ったな……」
「はい、この物体の外殻の修理が主でしたし、部材は星銀で代用出来ましたしね」
俺の言葉にそう言うと更に無駄に胸を張るコーゼスト。どうでも良いがそのドヤ顔はヤメレ。
「良し! それじゃあ早速コイツには星空にご帰還願おうか?!」
「そうですね。彼がこのまま地上に長居すると人々の無駄な軋轢を生みそうですしね」
俺とコーゼストの声を聞いた謎の物体は、微かにその体を震わせると、徐々に宙に浮き上がり始めた! そして2メルトほど浮かび上がると、盛んに鍋の縁の合わせ目から光を明滅させる。門の前に陣取るギャラリーやアン達からは「おおーっ」と言う声が聞こえて来る。
「? アイツ何て言っているんだ? コーゼスト?」
「はい──『長寿と繁栄を』と言っていますね」
謎の物体からの言葉に、思わず笑みが零れる俺。あまりにも人間臭い言い回しだからだ。だから自然に言葉が紡がれる。
「そっちそこ『長寿と繁栄を』!」
俺の言葉に呼応するかの様に体全体から再び眩い光を発して、どんどん虚空へと溶け込んでいく謎の物体。それはやがて満天の星空の星のひとつになったのだ。
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「やれやれ、飛んでもない来訪者だったな」
思わずそう呟く俺。
「また会えるかなぁ……」
一方でマーユは名残惜しそうである。
「また何れ何処かで会える機会もありますよ」
そんなマーユにそう答えるコーゼスト。何れにしてもこれでまた、ひとつトラブルを解決した事になる……のか?
そしてラーナルー市には暫くこの流星の話題で持ちきりだった事を付け加えておこう。
やれやれ──全く大変な目にあったな。出来ればこうした事は暫く遭遇したくないと言うのが本心である──とほほ。




