【Ⅰ】
明けましておめでとう御座います! 今回は2023年正月に合わせて投稿される「なぜか俺のヒザに」スピンオフ作品です! あえて時間軸を言うと227部/第213話から228部/第214話の間の時間軸になる、ものすごーーーくユルい話です! おせち料理を食べながらゆるーーく読んで下さいませ!
それではまずは【Ⅰ】から話をどうぞ!
「──今夜はまた一段と星が綺麗ね」
ある日の晩、屋敷の窓から夜空を見上げていたアンがそうポツリと言葉を漏らす。その言葉に部屋に居た皆んなが、開け放たれていた窓の外へと視線を向ける。いつの間にか陽がとっぷりと落ちた夜空には、いつにも増して眩い輝きを放つ星々が拡がっていた。
ここはオールディス王国のラーナルー市、その一角にある俺の屋敷での話である。
「そうだな、確かに今日はいつもよりも綺麗だな」
アンの言葉に同意して頷く俺。
「今日は日中も快晴でしたし、いつもより一際空気が澄んでいるんでしょう」
俺に続けてそう宣うのはご存知コーゼスト。俺の左腕に嵌っている腕輪が本体の有知性魔導具であり、今は自動人形の身体を保有していて、現在絶好調の極みの奴である。
「うん、アンお母さんやコーゼストさんの言う通りにキレイなお星さま! ねぇお父さん、お庭に出てもいい? 久しぶりにお外でお星さまを見てみたいの!」
そう言いながら上目遣いでお強請りして来るのは、俺達の愛娘であるマーユ。彼女は魚人族のお姫様であり、彼女の実の母親は魚人族の女王なのだ。
「ははっ、そうだな。食事の前だけど星空を眺めるのも良いだろうな」
そんなマーユの頭に手を置いて優しく撫でながら同意する俺。
「うわぁ、お父さん! ありがとう!」
俺の言葉に小さな体で喜びを表現するマーユ。ついと椅子から立ち上がると、部屋の扉の前に行き「早く早く」と俺達を急かして来る。
こうしてこれから急遽星空鑑賞会と相成ったのである。
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マーユの希望で星空を観る事になった俺達。そういや星空なんて最近じっくりと眺めた事が無かったなぁ…… 。
そんな事を考えつつ屋敷から前庭に出る俺とアン達奥様’Sとルアンジェとマーユ、そしてコーゼストとヤト達従魔’S。頭上には宝石箱の宝石を何千何万個とひっくり返した様な満天の星空が拡がっていた。
「「「「「わぁぁぁぁ……」」」」」
アン達奥様’Sとルアンジェの声が綺麗に重なる。
「ふわぁ……すごぉいいっぱいのお星さまぁ……オーリーフにいるみたい……」
マーユはマーユであまりの煌びやかさに言葉を失っている。どうやらマーユが星を見たがったのは彼女の故郷であるオーリーフ島の星空を思い出したからみたいである──なるほど。
「しかし本当に凄い星空だな。今なら星に手が届きそうだ」
だがその事はおくびにも出さずに話題を星空へと振る俺。そんな事を言ったらマーユに怒られるのは必至である。
「本当に…… 。良く「降るような星空」と言うけど、コレが正にそうね」
俺の言葉にそう返してくるのはアン。聞けば彼女の故郷である森精霊の村でも、ここまでの星空は滅多にお目にかかれないらしい。
「もしかすると今夜辺り「流星」が見れるかも知れませんね」
一緒に星空を見上げていたコーゼストはコーゼストでそんな事を口にする。もしそうならかなりの幸運である。何せ流星が光っている間に願い事を言えたら、その願いが叶うと言われているからだ。
マーユにその話をした所、彼女は俄然星空に目を凝らすのだった。
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そんなマーユの様子を微笑ましく思いつつ、俺も改めて星空に目を凝らす。すると程なくして
「おっ!?」
淡い光の筋が星空を流れるのが見えた。
「お父さん! 流れたよッ!」
同時に歓声を上げるマーユ。アン達も同様に小さな歓声を上げている。
「ちゃんとお願い事は出来たのか、マーユ?」
「うんッ!」
俺の問いに花が咲く様な笑顔で答えるマーユ。如何にも嬉しげである。その一方で
「あーん! 見逃したァーーッ!」
「くっ、同じくですわ!」
ヤトとセレネは見逃したらしく盛んに愚痴っている。どうでも良いがお前達、本当に仲が良いな?!
「もう1回ぐらい流れないかしらねェ〜」
「悔しいですが、ヤトの意見に激しく同意しますわ」
そう言って星空を文字通り凝視するヤトとセレネの魔物娘’S。そんなに都合良く流れるかよ…… 。
そんな2匹を苦笑いを浮かべながら見てから、再び星空に目をやると、星空の端から端へとゆっくり流れる光の筋が──ヲイヲイ!?
「やったァ! ほらセレネ! 急いでお願いするわよッ!」
「言われなくたって!」
願い通りに星が流れた事に喜びの声を上げるヤトとセレネ。そんな事していたらまた願い損ねるぞ? だがそんな事お構い無しに一生懸命願い事をする魔物娘’S。何をお願いしているんだか…… 。
だがそんな間にもゆっくり流れ続ける光の筋。流星ってこんなに長く光っていたっけ?
何となく今流れている流星に違和感を感じる俺であった。
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いつまでも消えない「奇妙な」流星に、皆んなも違和感を感じたらしくざわざわと騒ぎ始めた。
「ウィル、あの流星、何か変よ?」
アンが徐ろに俺の傍に来て、空を見上げたままそう口を開く。
「ああ、アレは確かに変だよな……」
そう言いながら「奇妙な」流星から目を離さずにいる俺。そうこうしている間にも一向に消える気配の無い流星。
これはいよいよもっておかしいと思って見ていると、不意に流星がその軌道を変えて俺達の方へと向かって来るのが見えたのだ!
「ッッ!? ちょ、ちょっと待てーーーッ!」
その有り得ない光景に思わず突っ込んでしまう俺。だが俺のそんなツッコミも意に介さず、グングンと近付いて来る流星!
最初はあまりの出来事に茫然自失としていたアン達も、段々と大きく見えてくる流星に右往左往している!
「ほらセレネ! 流星が向こうから私達の方へやって来たわ! 今なら願い放題ね!」
「ヤト! そんな事言っている暇があったら、ひとつでも多くお願いしなさいな!」
そんな状況でもヤトとセレネの魔物娘’Sは一生懸命と願い事をしている。ある意味ブレていない──じゃなくて! 思わずヤト達と俺自身にツッコミを入れながら
「ッ?! コーゼスト!」
頼りになる相棒コーゼストに向かって声を張り上げる!
「了解。物理結界、最大範囲展開へ」
俺の意を汲んで物理結界を即座に展開するコーゼスト!
その間にも流星は、ひと抱えもありそうな大きさに見えるまで接近していたのだった!
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思わずコーゼストに物理結界を展開してもらったが、コレが果たして流星の直撃に耐えられるのか、はっきり言って未知数なんだが、何もしないよりは少しはマシだろう──と思う。と言うか思いたい!
そうこうしている間にも「奇妙な」流星は此方の方にどんどんと接近して来ていて、辺りが真昼の様に明るくなって来た!
「お父さぁん、怖いよぉ……」
あまりの突然の出来事にマーユが俺の腰にしがみついて来る。
「マーユ! 俺の傍から離れるなよッ! アン達もコーゼストの物理結界の中から出るなよ!!」
しがみつくマーユの小さな身体をしっかりと抱き寄せると、アン達にそう注意喚起をする俺! いつの間にか流星は一抱えから小屋ぐらいの大きさになって、手が文字通り届きそうな距離にあった!
「くっ?! 皆んな、伏せろーーーッ!」
「──物理結界安全限界突破」
マーユを抱き抱えたまま、地面に伏せる俺! 当然ではあるが自分とマーユの頭はしっかりとガードして。後ろではアン達も一斉に頭を抱えると地面に伏せる! そんな中でやけに機械的に耳に届くのはコーゼストの声!
ヤトとセレネの魔物娘’Sも事ここに至って、漸く願うのを止めて慌ててコーゼストの物理結界の中に逃げ込んで来て、それぞれに強力な魔法障壁と巨大な螺旋風繭をコーゼストの物理結界の内側に展開する! これだけの強力な防壁があれば大丈夫──だと思いたい!
俺が頭の片隅でそんな事を思った次の瞬間、遂に地上に到達する流星! 俺は覚悟を決めてこの次に来るであろう衝撃に、身を固くして備えるのであった。
冗談じゃねぇぞ!?──全く!
ぐだぐだ星空鑑賞会から急転直下、ウィル達の目前に落下して来た流星! 果たして落下地点にいるウィル達の運命は如何に?!
続きは明日10時投稿の【Ⅱ】を読んで、その目で確認して下さい!
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